167 / 399
恋はさざ波に似て
ミーハー追っかけ会
しおりを挟む「ちょ……。あー、もー!!」
だから来たくなかったんだ。
ゼミの旅行なんか。
なんて、何十回も口の中でモゴモゴと悪態を付いてみても、実際は気の弱い私のこと。
そんなこと口が耳まで裂けても言えなかったのだ。
『多数決』
誰がそんな制度を決めたのだろうか。
6人のきらびやかなネイルアートがピンッ、と突き刺すように天井を指したのが運の尽き。
やっと私の天然色の爪がその後をおそるおそる追って、ハイ決まり。
7人全員一致で、岬めぐりツアーが決定いたしましたぁ~!
ちょー楽しみぃ!
……はぁ、冗談じゃない。
何が岬めぐりツアーだっつーの。
やっとの思いで電車のステップを降りた私は靴底を地に着けるなり、もはや日課となってしまった、げんなりとした溜め息を吐く。
異様に張り切った勝負服に身を包んだ彼女達は、たかがゼミ旅行に何をそんなにはしゃいでいるのだろう。
ああ、そうそう。
この集団は、ただの慰安旅行を目的としているワケじゃない。岬めぐりツアーだなんて名前だけ。
今回の旅行には彼女達を奮い立たせる、あるイベントが待ち構えているのだ。
それは……
「あぁ~っ!早く会いたーい!
愛しのセイちゃんっ」
「私の方がその十倍早く会いた~い!」
「はぁ~、アンタら分かってないな~。私が一番、一刻も早く会いたいよ?」
「……甘いわね、小娘達」
「先生?」
畑野先生が化粧ポーチから愛用のオークルファンデーションを取り出し、ゼミ生を一蹴するかのごとく鼻息を荒くさせた。
「セイヤは、畑野紀香を待っているのよ」
「はいは~い」
「セイちゃんは50過ぎたオバサンなんかに会いたくないよー」
「ま……っ、篠原さん!
学年末考査で追試受けさせますよ!?」
……なんのこっちゃ。
この、知性の片鱗も見当たらない会話にしばしば登場する『セイちゃん』とは、今や新聞のテレビ欄にその名が載らない日は無い、多忙のアイドル『南条セイヤ』その人である。
その、南条セイヤが来てるんだわ。どこにって?
……私が今、立っている場所にね。
つまり何が言いたいかって、この岬めぐりツアーの正体がただのミーハー追っかけ会だってこと。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる