Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました~

美保馨

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恋はさざ波に似て

ミーハー追っかけ会

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「ちょ……。あー、もー!!」


だから来たくなかったんだ。
ゼミの旅行なんか。

なんて、何十回も口の中でモゴモゴと悪態を付いてみても、実際は気の弱い私のこと。
そんなこと口が耳まで裂けても言えなかったのだ。


『多数決』
誰がそんな制度を決めたのだろうか。

6人のきらびやかなネイルアートがピンッ、と突き刺すように天井を指したのが運の尽き。
やっと私の天然色の爪がその後をおそるおそる追って、ハイ決まり。
7人全員一致で、岬めぐりツアーが決定いたしましたぁ~!
ちょー楽しみぃ!

……はぁ、冗談じゃない。
何が岬めぐりツアーだっつーの。

やっとの思いで電車のステップを降りた私は靴底を地に着けるなり、もはや日課となってしまった、げんなりとした溜め息を吐く。


異様に張り切った勝負服に身を包んだ彼女達は、たかがゼミ旅行に何をそんなにはしゃいでいるのだろう。

ああ、そうそう。
この集団は、ただの慰安旅行を目的としているワケじゃない。岬めぐりツアーだなんて名前だけ。
今回の旅行には彼女達を奮い立たせる、あるイベントが待ち構えているのだ。

それは……



「あぁ~っ!早く会いたーい!
愛しのセイちゃんっ」


「私の方がその十倍早く会いた~い!」


「はぁ~、アンタら分かってないな~。私が一番、一刻も早く会いたいよ?」


「……甘いわね、小娘達」


「先生?」


畑野先生が化粧ポーチから愛用のオークルファンデーションを取り出し、ゼミ生を一蹴するかのごとく鼻息を荒くさせた。


「セイヤは、畑野紀香を待っているのよ」


「はいは~い」


「セイちゃんは50過ぎたオバサンなんかに会いたくないよー」


「ま……っ、篠原さん!
学年末考査で追試受けさせますよ!?」


……なんのこっちゃ。

この、知性の片鱗も見当たらない会話にしばしば登場する『セイちゃん』とは、今や新聞のテレビ欄にその名が載らない日は無い、多忙のアイドル『南条セイヤ』その人である。

その、南条セイヤが来てるんだわ。どこにって?
……私が今、立っている場所にね。

つまり何が言いたいかって、この岬めぐりツアーの正体がただのミーハー追っかけ会だってこと。

 
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