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恋の焼け痕
バレンタインが終わるまで
しおりを挟む妙に、心臓辺りがフワフワと浮いている感覚がした。
ジェットコースターに乗った時を思い出す。
ガクンと急降下して、叫び出したい感覚だ。
「澪は僕にとびきり素敵な物をくれました。この、暖かい気持ち……何にも代えられやしません。
そして、この、脱ぎ立てホヤホヤの下着……何にも、はえられやひまへん」
また千鶴が四次元ポケットから何かを出したと思いきや、なんとソレは今朝私が洗濯機に放り込んだパンツだった。
そして台詞の途中でその黒いパンツを夢中で顔に当て、吸引するようにしてスーハースーハーと音を立てた。
痛々しい沈黙の中、その吸引音だけが響く。
しばらくして、匂いを堪能したと今にも言い出しそうな満面の笑みで、千鶴はパンツから顔を離した。
「形に残る物ですみませんが、でもこれが精一杯の気持ちです。
どうか受け取って下さいますよね」
「……受け取れるかぁぁぁー!!!!」
その後に『死ねぇー!!』と発狂しながら、私は千鶴の首をがむしゃらに絞めまくった。
いつか見たサスペンスドラマの、とち狂った犯人が恋敵を絞殺するシーンを思い出した。
そのくらい私の顔は憎悪にまみれている。
「うががはぁあくるじいですみお」
「私に何の恨みがあるって言うのよ!!
こんな屈辱耐えられないわよ!!
窒息死するか今すぐ家から出て行くかの選択肢を与える!!
さぁ今すぐ息の根を止めろ!!」
「せ、選択肢っ、くださ……っ」
こうして、私のショッキングなバレンタインズデイは幕を下ろした。
……そう思いたかったんだけど。
日付が15日に変わるまで、まだ11時間もあった。
あれから変態こと千鶴は私の家に居続けて、人質を盾にした強盗犯の立てこもりで私を困らせた。
只今の時刻、13時。
バレンタインが終わるまで、時間はたっぷり11時間あった。
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