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恋の焼け跡③
千鶴の家族
しおりを挟むどうやら私は藤堂さんに『サツキ』という人だと思われているらしい。それならその話に合わせるまでだ。
認知症のお年寄りとの会話では、傾聴や共感が基本なのだから。
……だけどもう『澪ちゃん』と呼ばれないのだと思うと、少し悲しくなってきた。
「はい。今は、綾子さんの側にいたくて戻って来ました」
藤堂さんの下の名前を呼び、それらしい台詞を選んで、私は皐月さんのフリをすることにした。
きっと、ご家族か誰かのことだろう。
「あらぁ、嬉しいわぁ。ありがとね、貴女がお嫁に来てくれて私はとても幸せだわ。
お父さん……貴史さんね、先月逝ってしまわれたのよ。
それから私はぼーっとすることが多くなってね。時々、彼が迎えに来るんじゃないかって思うのよ。
だけど、貴女と息子がいるから大丈夫よね?貴女と息子が結婚してからは、随分と賑やかになって。
孫の顔も見れて。私はとても幸せだわ」
話を聞くところによると、皐月さんは藤堂さんの息子さんのお嫁に来た人らしい。
義理の娘にしては、かなり気に入っている様子だ。
それと、孫……というのは、やっぱり千鶴のことよね。
ってことは、皐月さんは千鶴のお母さん?
それを考えると、ふいに心臓が揺らいだ。
どうしよう、泣きそう。
「あらあら!そうだわぁ、そう言えば紫伸と千鶴と弥生は今、どこにいるのかしらね?」
「え……」
「弥生はこの前も学校が終わった後、会いに来てくれたのよ~!
相変わらずあの子は優しい子ね。貴女にそっくりよ。
でもね、やっぱり顔は誠一そっくりね。でもまぁ、ふふふっ。そうは言っても、紫伸も千鶴も兄妹みんな誠一似よね。
誠一も貴史さんに似ているから……やっぱり藤堂の血は争えないのね。顔は私にも皐月さんにも、全然似てないわ」
藤堂さんはそこまで話すと、ふふふと陽気に笑い始める。
私は話の内容を大体理解した。
とりあえず、藤堂家は父方の血が濃いということ、そして千鶴には兄弟がいるということだ。
いや。『シノブ』に『ヤヨイ』、みんな女名だから姉妹なのだろうか。
と言っても、千鶴も女みたいな名前だからそれは分からないけど。
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