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少女の恋
迷子になるかもしれない
しおりを挟む——タタン、タタン……
列車は緩やかに速度を落とし始めた。
その勢いが止む頃、少年は事務的に喋り出した。
「着きました」
「ありがとう」
少女はニッコリと微笑むと、ステップを降りようとする少年の手に自分の小さな手を預けた。
「何です」
——パシッ
先ほどと同じように虫を払う仕草で小さな手を解くと、少年は冷酷な眼差しを少女に送った。
「だって、迷子になるかもしれない」
「図々しいですね。
迷子になったところで死にはしませんよ」
「でも……」
その時、少しイライラした車掌の咳払いが聞こえた。
それを聞くと少年は観念したような溜め息を溢し、面倒そうに少女の手を取った。
「いいですか、駅を出たら離れて下さいね」
「えっ、駅を出るまで手繋いでくれるの?」
「文句があるなら今離します」
少年の眼は淀んでいた。
「んーん、駅を出るまでお願いします」
約束通り駅を出ると少年は少女の手を離し、スタスタと街を歩き始めた。
少女はそれに置いて行かれないよう、懸命に小走りをする。
出発した田舎町とは違い、駅前は人通りが多い。
ヒヨコのように着いてくる少女に、少年は振り返りもせず話す。
「着いて来ないで下さい。恥ずかしい」
「……待って、分かんないよ置いてかないで」
少女は見知らぬ街で1人残されたくない思いから、少年に冷たくされるも何とか後を着いて歩いた。
幼い胸は漠然とした不安に駆られた。
「分かんない、とは何ですか。
もしかして病院の場所が分からないのですか」
「うん」
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