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少女の恋②
子供扱いしないで
しおりを挟むそれは疾走する野生動物のように速かった。
澪は少年に口を押さえられたまま、キャリーバッグのごとく引きずられていた。
しばらく経つと少年は減速し、バス停前で立ち止まった。
澪の心の中では解放されたい想いと、このままどこかへ連れ去ってほしい想いとで交差する。
数秒後、後者の想いが叶った。
少年は澪を離すことなく、小さな体をバスの中へ押し込んだ。
少年が整理券を取ると、ようやく澪は解放された。
「もう!お兄ちゃんたらひどいよ!口が痛い!」
解放された矢先にピーピーギャーギャーと澪が喚き出したので、少年は他人の振りをして席を探した。
「煩いですよ、静かにして下さい」
苛々した様子もなく、いつかの時と同じように澪を視界に入れず少年は後部座席に着いた。
条件反射的に澪がその隣に座ると、少年は再び面倒そうに口を開く。
「何故君は僕の後を着いてくるんです。君は僕に何がしたいんですか」
さっきは焦ったようにして、さも自分を樹海に隠すかの勢いで走り去ったくせに、相変わらずの抑揚の無い平然とした口調だ、と澪は思った。
実はこのお兄ちゃんはロボットなんじゃ?という疑いが募り始める。
「なぜって、好きだから」
「意味が分かりません。
何が好きであのような馬鹿げた嘘を君は吐くんですか」
「馬鹿げてないもん。嘘じゃないもん。
お兄ちゃんが好きなんだもん」
「いくつ歳が離れていると思ってるんです。僕はランドセルを背負っているような餓鬼には何の感情も抱きませんし、それに歳が離れていまいと君のような人間とは関わりを持ちたくありません」
「ガキって言わないで。子供扱いしないでよ。
それに、歳なんて関係ないと思うな。お兄ちゃんいくつなの?
きっと問題じゃないと思う。
あと、私、お兄ちゃんの名前も知りたい」
「人の名前を聞く前に、自分から名乗るべきだと思いますが」
「土屋澪。10歳。お兄ちゃんは?」
「10歳……とんだ糞餓鬼ですね」
「お兄ちゃんは!」
「そんなの知って何になります」
「だって、好きだから何でも知りたいの」
「所詮は他人ですよ。
知って得する間柄なら知るに越した事はありませんが、仮に君が僕の全てを知り得た所で何の利益もありません。
こんな情報交換は無駄以外の何物でもない」
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