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少女の恋②
悪魔なんかじゃなかった
しおりを挟む次第に泣き声はゼイゼイとしたかすれ声に変化していき、みるみる内に疲弊していった。
虚ろな目をして隙間風のような呼吸をし始める澪の様子に、少年は気付く。
その隙間風のような呼吸は、壊れた機械のようで。
ザザザ、ザザザと、聞こえた。
ザザザ、ザザザ。
ヒュー、ヒュー。
時計の音が、カチコチと鳴った。
時の刻みが消えた。
少年は、澪を抱き締めていた。
「!?」
体は心地良い重圧感に包まれている。
シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
澪は自分が今の今まで泣いていたのも忘れ、目を大きく見開き仰天した。
頭が噴火しそうになった。
少年は澪の小さな肩に顔を埋め、目を細めていた。
それは、うたた寝しそうなほど穏やかであると同時に、哀しそうな表情であった。
「……お、おにいちゃん……?
あ、あの……」
10歳の脳内はパンク寸前まで炎上する。
ただただこの状況に赤面するばかりで、少年が何を思いどのような経緯で自分なんかを抱き締めているのかは知る由もなかった。
少し苦しい。
だけど、先ほどの苦しさとは全く別物だった。
骨が軋みそうな抱擁は震えていて、あの日屋上で行われた光景とよく似ていた。
少年の背中が小さくなっていく。
その時、最期に見た皐月の顔が澪の脳裏を横切った。
澪は少年の背中に短い手を回して、この上なく幸せそうな微笑を溢した。
ねえ、おばさん。
この子は悪魔なんかじゃなかったよ。
やっぱり私の言った通りだったでしょ?
ただの、寂しい子供だよ。
ねえ……
お空からちゃんと見てる?
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