Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました~

美保馨

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少女の恋②

生まれた感情は

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「生まれてから一度だって、感情が動いた事が無いんです。
それなら死んでいるのと差して変わりはありません。
それなら身体を機能させているのも何だか無駄です。
血液を循環させるのも、筋一本を動かすのも無駄です。
僕自体がもう既に無駄な代物でした。
死ねば何かが変わるとか、そんな夢は抱きません。
ただ人間1人が居なくなった所で、地球の資源がその分減らずに済むでしょう」


澪は小さく喘ぎながら首を振る。

それはまるで、地球の引力に逆らえず落ちて行く林檎のようだった。
少年の言葉は、どこかに落ちて行くまで止められなかった。

地面に落ちて砕け散るまで。



「だけどあの日は、僕が生まれて初めて感情を持った日だったんです。
生まれて初めて死にたいと思えた日だったんです。
初めて人を疎ましいと思えました。人を馬鹿だと思えました。
人を嫌いだと思えました。
君を嫌いだと思った時、僕は無性に死にたくなりました。
死にたくなる程の感情が動きました。ただ、それだけです」


『ご清聴ありがとうございました』最後にそう付け足すのが相応しいほど、それは完璧な演説を思わせた。
初めから終りまで、異常なまでに少年は淡々としていたのだ。


「死ぬとか言ったらダメだよ……。
お兄ちゃんが死んだら私、悲しいよとっても」


澪は再びゼエゼエと呼吸を乱した。
それは換気扇の音と重なって聞こえた。

隙間風のような肺の音が再び鳴り始めたその時。

少年は突然、激昂した。

おそらくは使い慣れていない声帯の動きに戸惑っているのだろう、少年の怒りはどこか不器用だった。

 
 

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