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少女の恋②
早く大人になって下さいね
しおりを挟む「このまま2人で逃げましょうか」
少年が何気なくそう言ったものだから、しばし呆然とした後、澪は言葉の意味を理解するべく必死に頭をひねらせる。
しかし、澪の脳が理解をする前に、電気信号は全身を駆け巡った。
澪は少年に抱き締められた。
二度目の抱擁は、包み込むような優しさを帯びていた。
「何処かへ、逃げてしまいませんか」
少年の胸辺りに顔を埋めながら、澪は窒息する想いでその言葉を聞いていた。
「君を連れ去って何処かへ消えてしまえば、何もかもから逃げられる気がする」
ドク、ドク。
少年の体は暖かく、いい匂いがした。
澪は耳を済ませる。
ドク、ドク。
血液が流れる音を確かに聞いた。
『お兄ちゃんはロボットなんじゃ?』その疑惑は塵ひとつ残さずに払拭される。
だって、こんなにも暖かい。
「逃げるんじゃないよ、カケオチって言うんだよ」
タコのように茹で上がった顔で澪がませた発言をするものだから、少年は生まれて初めて可笑しい気持ちになってしまった。
「……自分がロリコンとはね」
嘲るようにして少年は呟くと、自分の腕の中で小さく収まる澪の体をゆっくりと離す。
視線が合った。
少年は林檎のように真っ赤な頬を、自分の元へと寄せた。
天井から糸で引っ張られたように、澪の体がピクッと動く。
少年の唇が、澪の頬に触れた。
「……ろ、ロリコンってなぁに?」
まるで酔っ払ったように朱色の顔をした澪は、呂律の回らない口調で少年に尋ねた。
「とち狂った変態の事ですよ」
「……お兄ちゃん、ヘンタイなの?」
「誰が変態ですか」
それから時計が半周もしない内に、澪と少年は同じベッドで眠った。
少年曰く『自身はとち狂った変態ではない』というのは真実のようで、澪を抱いたまま眠る姿はテディベアを抱いて眠る子供と何ら変りはなかった。
ベッドに潜り込んだ時、2人はこんなことを喋っていた。
「……君が子供だから犯罪になる可能性がありますね」
「もうガキって言わないんだね」
「餓鬼も子供も変わりませんが」
「もう、またそうやって言うんだから!
いつまでも子供じゃないよ」
「そうですか……。
では早く大人になって下さいね」
月明かりがやけに眩しい宵のこと。
2人を隠して月は太陽から逃げていた。
必死に、逃げていた。
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