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また恋に堕ちる
自分の存在意義
しおりを挟む失意のどん底、とは今の彼にふさわしい。
虚ろな目をして打ちのめされたその姿は、火傷はあれど何だか絵になる風景だった。
火傷、それさえ無ければ外見的には千鶴とそっくりで。
だけど心は違うのだ。
心はちゃんと、自分製であるのに。
その痛みだけは、悔しいほどよく分かる。
自分の分身がふわりと上前を跳ねていく。
自分の存在意義を髪の毛が抜けるほど必死に考え続ける。
その時気付くのだ。
もしかしたら自分こそが分身であり、ドッペルゲンガーなのではと。
だけど、自己像幻視に惑わされている場合じゃない。
自分だけを愛してくれる人物を、血眼に探し続ける人生がそこに待ち受ける。
その人物の一人が自分自身であることに、気付かなくてはいけないのだ。
それこそが存在意義であり、そして安定剤であることにも。
何事にも理由を付けて安心したがる、ちっぽけな生き物であることにも。
誰もが突破していくそんな壁を越えられず、アナタはただ子供のようにして泣き叫んでいる。
そんなアナタ。
私とよく似ているよ。
「だけど……」
私は再び口を開く。
このことだけは伝えたくて。
「誰かに自分の全てを奪われて、前を通り過ぎて行っても。
その後からゆっくりとやっていけばイイじゃないですか。
自分らしく。相手なんか関係ない。
私に何が分かるって話ですけど、それしか方法が無いんだもの。
同じ場所から産まれて、同じ殻で育って。だけど……比較が何だって言うの?そんな物、塩かけて食べてしまえっつーの。
私は私、アナタはアナタですよ。紫伸さん」
紫伸さんにそう告げた時、私は自分にも言い聞かせるようにして言った。
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