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恋の片道切符
藤堂くん
しおりを挟む——ブーッ!
その時、何か液体状の物が噴き出す音がした。
しかしその音に謎を抱く間も無く、掛け布団と千鶴の顔面が真紅の点描で汚されたではないか。
「な、何事なの……?」
何が起こったのか分からないまま視線を散らばせていると、看護師の満月さんの鼻の穴から鮮血の滴が垂れているのに目が留まった。
というか目が点になった。
辺り一面をおびただしい鮮血で染めるそれは、見事な鼻血だった。
聡明で真面目そうな、眼鏡をかけた三つ編みの可愛らしい看護師さんが、唐突に盛大な鼻血を噴き出したのだ。
驚く以外のどんなリアクションをとればいいのだろうか。
顔面を血で滴らせる千鶴も、あんぐりと口を開ける私も、鼻血ぶっ放した彼女も、しばし沈黙に動けずにいた。
数秒の間が空いた後、私は何かコメントをせねばとキリキリと痛む肺を絞ってなんとか言語を発した。
「う、あ、あの、大丈夫ですか?
病院行った方が、ああ~ここは病院だから丁度イイ……」
いや、皮肉じゃなくてね。
突然にそんなおびただしい量の鼻血を出されたら、何かの病気かと思うじゃない?
「と……藤堂くんが、」
「へ?」
凝固し始めた血で鼻の下がベットベトの満月さんは、ワナワナと身震いしながらポツポツと呟いた。
……てか今『藤堂』って言った?
「と、うどうくんがっ!
キラキラした笑顔で私に話しかけたぁぁ!うわぁー!!」
「ひっ」
『うわぁー!!』なんて台詞はこちらが言いたい。
とツッコミままならない私の口は、軽く恐怖に震えていた。
何なの、この病院……。
突然鼻血噴き出したかと思いきや、今度は魂の叫びを露にする看護師を雇う病院がどこの世界にあるんだ!ここだ!
私が入院している病院だ!
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