【完結】奇跡の子とその愛の行方

紙志木

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求婚 ※


サガンの執務室にコルドールは居た。ジャンが血相を変えてコルドールを呼びに来たのだ。

「で、レイルとの決闘とやらは終わったのか?」

長椅子に寝転んで脱力した様子のサガンに、コルドールは聞いた。長い赤毛が長椅子からこぼれて床まで垂れている。

「キリトが止めに入ってくれたからね。決闘はしていないよ。」

「...何があった?」

サガンは億劫そうに長椅子に起き上がると、コルドールにこれまでの経緯を話し始めた。


サガンの話が終わると、コルドールは深いため息をついた。

「何やってるんだ、おまえ達。」

「キリトが可愛くて、つい。」
サガンは笑いながら言った。

「...本気なのか?」
キリトに気があるのかとのコルドールの問いに、サガンは無言で返した。

「...レイルは王位継承を直近に控えて多忙だ。その上キリトの問題を抱えていては、王宮内は混乱し、王政も乱れる。」

「分かっている。」

短いサガンの言葉に、コルドールはまた一つため息を吐いてから言った。

「今晩、飲みにでも行くか。」

サガンは、いいね、と笑って答えた。

********

レイルの部屋にコルドールは居た。サガンの執務室を出てから直接ここへ来たのだ。

レイルはこの世の終わりのような顔をして、書き物机の椅子に座っていた。折角の男前が台無しだった。

まさか、遺書でも書いてないだろうな、と手元を覗き込むコルドールにレイルは言った。

「...キリトが、俺を愛していないと...」

「キリトがそう言ったのか?」

レイルは青白い顔をわずかに横に振る。コルドールは安堵のため息を吐いた。

「...どうしてそう思う?」

「どうせ、サガンから話を聞いているのだろう。」

「まあな。おまえ、メイドの服を無理やり脱がせて襲ってたってな。キリトが相手をしてくれないからか。」

「違う、セイエルだ。」

「何?」

「セイエルがメイドの服を着て女装していたんだ。俺の婚約者がどんな人物か確かめたかった、と言っていたな。」

「おいおい。じゃあ、キリトは勘違いしているのか。」

目を伏せて頷くレイルに、コルドールはため息を吐いて言った。

「いいかよく聞け。まずは事実を話して、勘違いさせたことをキリトに素直に謝るんだ。それから、誠意を見せて改めて求婚しろ。腕輪はもう渡したのか?」

王族達の間では求婚に際して相手に腕輪を贈ることが通例になっていた。

「...まだだった。」
レイルが呆然として言う。

「おいおい。頼むぜ、しっかりしてくれよ。」

俺は恋のキューピットじゃないぜ、とコルドールは神に愚痴りたい気分だった。

********

レイルはキリトの部屋を訪れた。驚いたような顔をして出迎えるキリトにレイルは言った。

「キリト、その、すまなかった。...俺はあなたに謝ってばかりいるな。」

「良いんだ。セイエルから話は聞いたよ。」

でも、とキリトは続けて言った。

「もしかしてレイルは、そういうのが趣味なのかと、思って。」

「...そういうの、とは?」

「その、自分の血縁者の少年に、女装させて、無理やり脱がせて...」

あまりの言われように、レイルは目を閉じると額に手を当てた。

「違う。」

レイルはキリトの黒い瞳をひたと見つめて言った。

「愛している。キリト、あなただけを。寝台でも伝えたが、聞こえなかったか?」

キリトの長いまつ毛が何度も瞬き、瞳が美しく潤んだ。

「キリト、触れても良いか?」

寝台であれだけのことをしておいて、改めて聞くなんて、と思いながらキリトは顔を赤らめて頷いた。

レイルはキリトの顎を上向かせ身を屈めると、口付けた。何度か角度を変えて口付けると、キリトの唇が唾液に濡れて赤く艶めいた。

それを見た途端にレイルの胸に嫉妬の感情が頭をもたげた。嫉妬深い男は嫌われると忠告されたのに、どうすることもできない。
レイルはキリトの下唇を親指でなぞって言った。

「他の男に何度許した?」

「な、に…?」

レイルがもう一方の手でキリトの太股を撫で上げながら言う。

「他の男に、何度口付けたかと聞いている。」

レイルは服の上からキリトの股間を撫でた。口付けで感じたのか、既に緩く勃ち上がっている。

「な、なんども、してない…」

キリトは目に涙を滲ませて言った。

「...ほんとうに。僕も、愛している。レイルだけを。」

レイルは目を見開いた。キリトから愛の言葉を返して貰えるとは思っていなかった。
ああ、と感激の声を上げてキリトを強く抱きしめた。

レイルは懐から何かを取り出すとキリトに言った。

「左手を出して。」

キリトが手を出すと、レイルは細い鎖でできた腕輪をキリトの手首に巻きつけた。

「これは?」

レイルはキリトの手をとり腕輪に口付けて、キリトの目を見つめると言った。

「もう一度言おう。この身が果てるまであなたを守ると誓う。俺の伴侶に、なってくれるだろう?」

「...っ、はい」

キリトが上擦った声で答えると、レイルは白い歯を見せて満面の笑みを浮かべた。

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