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当たり前だけど、先生には先生の授業があって、仕事があって。先生のことが好きな学生なんて俺以外にいっぱいいて、俺なんてそういう人たちに比べたら知識も努力も足りない学部一年生で。
はぁ…
自然とため息が出た。よくない。
先週のこの時間は、ちょうど先生に声をかけられて、研究室にお邪魔していたんだった。今週は先生、忙しそうだったな…
もう一度、図書館に向かう。二限が終わった後の大学は徐々に学生も増えてきていて、少し混雑していた。
「最近彼氏が冷たくてさ~」
「まじ?最低じゃん!」
すれ違う女子学生たちの会話が耳に入ってくる。俺には関係ない話のはずなのに、気になってしまうのはどうしてなんだろう。
図書館で、今日の授業の復習をしようとした。でも、あんまり手につかない。今日はダメな日だ。とりあえず気になった本を数冊借りて、食堂に向かうことにした。普段はできるだけお弁当を持っていくようにしていたんだけど、今日は寝坊したから忘れてしまった。
学食のご飯を食べるのは久しぶりだ。相変わらず混んでいる。がっつりしたものを食べたくて、カレーライスを頼んだ。学食のカレーは許容範囲の辛さだから、ギリギリ食べられる。無心で食べているところに、ふと慣れた匂いがした。
…先生だ。
顔をあげなくても、匂いと、履いているカジュアルなパンツでわかってしまう。
でも、先生の影は何も言わずに通り過ぎて行った。
なんだか寂しくなって顔をあげる。先生の背中が小さくなっていく。
…せっかくカレー食べたのに。忘れようとしたのに。
俺の心の中に、先生がずっと住んでるみたいだ。
学食を出て、また図書館に向かう。昼食後ということもあってひと眠りして、気持ちをリセットする。やはり睡眠こそ正義。
次の授業に出て、出た課題をこなして。
先生のこと、先生の授業のことを考えないように。
英語の授業の課題をやったりして時間を潰した。
18時を過ぎると、大学に残っている学生も減ってくる。
みんなバイトとかやってるんだろうな。俺もやった方がいいのかもしれない。
どこでやるのがいいのかな。友達がいないから情報が少ない。こういう時だけは、ちょっとだけ悩む。
その時、スマホの通知が入った。先生からだ。
「お疲れ様!今日の待ち合わせ、僕の研究室でもいい?」
「ちょっと早めに仕事終わりそうだから早めに来てても大丈夫だよ~」
ふと、頬が緩んでいる自分に気が付く。もしかして、先生のことが好きなんだろうか。
いやいや、特別扱いされてるからいい気になってるだけかもしれない。っていうかそうであってほしい。
年の差も性別も、学生と教授という身分の差も、全部に問題がありすぎる。
先生は距離が近い人だし、イケメンだし。だからちょっと少女漫画みたいになってるけど、多分恋じゃない。
恋愛経験が少なすぎてわからないけど。
でも、こんなにずっと誰か一人のことを考えてたことなんて記憶の限り一回もない。
うーん…
いろいろ考えるうちに緊張してきた。
いざ、先生の研究室の前まで来ると、その緊張はますます高まる。
今日の朝、どんな顔で先生と会ってたんだっけ。半日ぶりなのに、なんだかずっと会っていないみたいに不安になる。
「あれ?永瀬君?」
「あ」
「ごめんね~ちょっとお手洗いに行っていたんだ。扉の前でぶつぶつ言ってたけど、何かあった?」
永瀬君、と呼んでくる先生に違和感がある。ゆうって呼んでほしい。
大学内だし、仕方のないことだけど。
「入って入って」
先生に言われて、研究室にお邪魔する。
「今から帰る支度するからね。ちょっと待っててね。」
一日授業があって大変だったと思うのに、先生の動きは朝と同じようにてきぱきしている。ぼんやりとそれを眺めながら、仕事ができる人なんだろうなぁと思う。
「よし、帰ろうか!」
先生と一緒に夜の大学を歩く。
今日は荷物が多かったからか、手をつないでくれることもなかった。
でも相変わらず後部座席のドアを開けてくれるところはやっぱり先生で、なんだか苦しくなる。
「お待たせ。一日大変だったかな?でも、なんだかそれだけじゃない気がする。なにか悩んでるでしょう?」
…先生は、ルームミラー越しに俺の目を見た。
先生の目に強い引力が宿ってるみたいに、そこから視線をそらせない。
俺のことを全部見透かしているような目が、怖くもあり、嬉しくもあった。
はぁ…
自然とため息が出た。よくない。
先週のこの時間は、ちょうど先生に声をかけられて、研究室にお邪魔していたんだった。今週は先生、忙しそうだったな…
もう一度、図書館に向かう。二限が終わった後の大学は徐々に学生も増えてきていて、少し混雑していた。
「最近彼氏が冷たくてさ~」
「まじ?最低じゃん!」
すれ違う女子学生たちの会話が耳に入ってくる。俺には関係ない話のはずなのに、気になってしまうのはどうしてなんだろう。
図書館で、今日の授業の復習をしようとした。でも、あんまり手につかない。今日はダメな日だ。とりあえず気になった本を数冊借りて、食堂に向かうことにした。普段はできるだけお弁当を持っていくようにしていたんだけど、今日は寝坊したから忘れてしまった。
学食のご飯を食べるのは久しぶりだ。相変わらず混んでいる。がっつりしたものを食べたくて、カレーライスを頼んだ。学食のカレーは許容範囲の辛さだから、ギリギリ食べられる。無心で食べているところに、ふと慣れた匂いがした。
…先生だ。
顔をあげなくても、匂いと、履いているカジュアルなパンツでわかってしまう。
でも、先生の影は何も言わずに通り過ぎて行った。
なんだか寂しくなって顔をあげる。先生の背中が小さくなっていく。
…せっかくカレー食べたのに。忘れようとしたのに。
俺の心の中に、先生がずっと住んでるみたいだ。
学食を出て、また図書館に向かう。昼食後ということもあってひと眠りして、気持ちをリセットする。やはり睡眠こそ正義。
次の授業に出て、出た課題をこなして。
先生のこと、先生の授業のことを考えないように。
英語の授業の課題をやったりして時間を潰した。
18時を過ぎると、大学に残っている学生も減ってくる。
みんなバイトとかやってるんだろうな。俺もやった方がいいのかもしれない。
どこでやるのがいいのかな。友達がいないから情報が少ない。こういう時だけは、ちょっとだけ悩む。
その時、スマホの通知が入った。先生からだ。
「お疲れ様!今日の待ち合わせ、僕の研究室でもいい?」
「ちょっと早めに仕事終わりそうだから早めに来てても大丈夫だよ~」
ふと、頬が緩んでいる自分に気が付く。もしかして、先生のことが好きなんだろうか。
いやいや、特別扱いされてるからいい気になってるだけかもしれない。っていうかそうであってほしい。
年の差も性別も、学生と教授という身分の差も、全部に問題がありすぎる。
先生は距離が近い人だし、イケメンだし。だからちょっと少女漫画みたいになってるけど、多分恋じゃない。
恋愛経験が少なすぎてわからないけど。
でも、こんなにずっと誰か一人のことを考えてたことなんて記憶の限り一回もない。
うーん…
いろいろ考えるうちに緊張してきた。
いざ、先生の研究室の前まで来ると、その緊張はますます高まる。
今日の朝、どんな顔で先生と会ってたんだっけ。半日ぶりなのに、なんだかずっと会っていないみたいに不安になる。
「あれ?永瀬君?」
「あ」
「ごめんね~ちょっとお手洗いに行っていたんだ。扉の前でぶつぶつ言ってたけど、何かあった?」
永瀬君、と呼んでくる先生に違和感がある。ゆうって呼んでほしい。
大学内だし、仕方のないことだけど。
「入って入って」
先生に言われて、研究室にお邪魔する。
「今から帰る支度するからね。ちょっと待っててね。」
一日授業があって大変だったと思うのに、先生の動きは朝と同じようにてきぱきしている。ぼんやりとそれを眺めながら、仕事ができる人なんだろうなぁと思う。
「よし、帰ろうか!」
先生と一緒に夜の大学を歩く。
今日は荷物が多かったからか、手をつないでくれることもなかった。
でも相変わらず後部座席のドアを開けてくれるところはやっぱり先生で、なんだか苦しくなる。
「お待たせ。一日大変だったかな?でも、なんだかそれだけじゃない気がする。なにか悩んでるでしょう?」
…先生は、ルームミラー越しに俺の目を見た。
先生の目に強い引力が宿ってるみたいに、そこから視線をそらせない。
俺のことを全部見透かしているような目が、怖くもあり、嬉しくもあった。
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