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「さくくん、ちょっといいですか」
俺が先生を呼び止めたのは、木曜日の夜だった。
深い理由があったわけではない。落ち着いて話せるタイミングがなかったってだけ。
先生の仕事が落ち着いて、一緒に夕食を食べることができたのはたまたま今日だったんだ。
「あの、俺、先生と一緒に住まわせてもらいたいです」
「引っ越して、正式に先生の家に住まわせていただけませんか」
言ってしまった。
後悔はしていない。でも、改めて声に出すと少し緊張する。
この決断自体は、先生に提案してもらった時から揺らぐことがなかった。父親だって賛成してくれている。学生アパートの家賃も浮く。それに何より、尊敬している大好きな先生と一緒に住むことができる。
正直、デメリットはほとんどなかった。
「本当?」
あんなに嬉々として提案してきた先生は、打って変わって真面目な様子で聞き返してくる。
「時間をいただいて、じっくり考えました」
「っ、そうか…ありがとう」
いつもの先生と違う様子に、不安になる。
もしかして、俺が邪魔になった?
「ゆうが要らなくなったわけじゃないんだ。ただ、ちょっと嬉しすぎて…」
先生は俺の顔を見てその不安を理解してくれたみたいだった。
頭が追い付かなくなっちゃった、と笑う。
箸を置いて、先生が立ち上がる。
「ゆう、おいで」
食卓の横で、先生は手を広げる。しばらくの間先生と関わってきたおかげで、先生のソレが何を意味するのかは分かるようになった。
吸い寄せられるように、俺は先生の腕の中に飛び込む。
いつもの抱擁癖だ。
「本当にありがとう、ゆう」
「何があっても、僕はゆうのことを大切にするよ。ゆうは、僕の天使だからね」
天使なんて言われたのは、先生が初めてだ。この長いハグも、ハグの間俺の頭を撫でる先生の手も、全部慣れない。でも、居心地が良いと思ってしまう。
俺の父には、先生がいるところで電話をかけた。
父の希望で先生に電話を替わると、二人は長い間話しこみ、最後に先生は「絶対に大切にします」と言って通話を切った。
「電話、ありがとうね」
先生はそう言って俺にスマホを返した後、ふっと立ちあがって微笑んだ。
「今週末、空いてる?お引越ししないとだね」
今使ってもらってる部屋ももっと快適にしないとだね、本棚とか買ってこようか、ゆうの服も買ってきた方がいいかな、と、先生は矢継ぎ早に話したあと、最後にこう言った。
「ゆうが来てくれて、本当に僕は幸せ者だよ」
こんなに愛情表現が直接的な人がいるだろうか。少なくとも俺の回りにはいなかった。
でも、大学に入って先生とここまで近い関係になれたことは、本当に運命的だと思う。
「本当に、ありがとうございます」
先生を見上げて、いつもより大切に言葉を紡いだ。
俺が先生を呼び止めたのは、木曜日の夜だった。
深い理由があったわけではない。落ち着いて話せるタイミングがなかったってだけ。
先生の仕事が落ち着いて、一緒に夕食を食べることができたのはたまたま今日だったんだ。
「あの、俺、先生と一緒に住まわせてもらいたいです」
「引っ越して、正式に先生の家に住まわせていただけませんか」
言ってしまった。
後悔はしていない。でも、改めて声に出すと少し緊張する。
この決断自体は、先生に提案してもらった時から揺らぐことがなかった。父親だって賛成してくれている。学生アパートの家賃も浮く。それに何より、尊敬している大好きな先生と一緒に住むことができる。
正直、デメリットはほとんどなかった。
「本当?」
あんなに嬉々として提案してきた先生は、打って変わって真面目な様子で聞き返してくる。
「時間をいただいて、じっくり考えました」
「っ、そうか…ありがとう」
いつもの先生と違う様子に、不安になる。
もしかして、俺が邪魔になった?
「ゆうが要らなくなったわけじゃないんだ。ただ、ちょっと嬉しすぎて…」
先生は俺の顔を見てその不安を理解してくれたみたいだった。
頭が追い付かなくなっちゃった、と笑う。
箸を置いて、先生が立ち上がる。
「ゆう、おいで」
食卓の横で、先生は手を広げる。しばらくの間先生と関わってきたおかげで、先生のソレが何を意味するのかは分かるようになった。
吸い寄せられるように、俺は先生の腕の中に飛び込む。
いつもの抱擁癖だ。
「本当にありがとう、ゆう」
「何があっても、僕はゆうのことを大切にするよ。ゆうは、僕の天使だからね」
天使なんて言われたのは、先生が初めてだ。この長いハグも、ハグの間俺の頭を撫でる先生の手も、全部慣れない。でも、居心地が良いと思ってしまう。
俺の父には、先生がいるところで電話をかけた。
父の希望で先生に電話を替わると、二人は長い間話しこみ、最後に先生は「絶対に大切にします」と言って通話を切った。
「電話、ありがとうね」
先生はそう言って俺にスマホを返した後、ふっと立ちあがって微笑んだ。
「今週末、空いてる?お引越ししないとだね」
今使ってもらってる部屋ももっと快適にしないとだね、本棚とか買ってこようか、ゆうの服も買ってきた方がいいかな、と、先生は矢継ぎ早に話したあと、最後にこう言った。
「ゆうが来てくれて、本当に僕は幸せ者だよ」
こんなに愛情表現が直接的な人がいるだろうか。少なくとも俺の回りにはいなかった。
でも、大学に入って先生とここまで近い関係になれたことは、本当に運命的だと思う。
「本当に、ありがとうございます」
先生を見上げて、いつもより大切に言葉を紡いだ。
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