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July
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しおりを挟むドンドン、ドンドン!
「ゆぅぅぅーうぅぅぅぅー!ゆぅぅーうぅぅぅー!!」
…俺の部屋の前がなにやら騒がしい。
スマホを確認するとまだ2時。
「はぁぁ…。」
思わずため息が漏れた。
ドアの前で、開けようか迷う。
というか、別に鍵がついてるわけじゃないから開けようと思えば先生だってすぐ中入ってこれるでしょ。
「さくくん…?どうしました?」
高を括ってドアを開けた。
「えへへぇ!今日も来ちゃったぁぁ…!」
まだ酔ってる、と心の中でため息を吐いた後、違和感に気づく。
「今日も!?」
寝起きだというのに、大声が出た。
「今日はそのパジャェマなんだねぇ、可愛いねぇ!」
呂律が怪しい先生が、ストーカーみたいなことを言いだす。
「先生、『今日も』って何ですか?」
「こらぁ~、だからぁ、せんせーじゃなくれぇ、さくくんれしょ!」
もう何言ってるかもわからないし。
え、これ大丈夫だよね?酔いってこんなに続くもの?なんかヤバい?
「大丈夫ですか?とりあえず俺のベッド使います?」
寝かせた方が絶対に良い。
「あのねぇ、といれぇ!」
「トイレ!?」
え、早く言ってよ。
急いで先生をトイレまで連れていく。
そりゃ、あんなに液体がぶ飲みしたらトイレだって行きたくなるか。
酔った人間の介抱なんてやったことなくて、俺の段取りも悪い。
「ねぇ、ゆうも入ってよぉ…。」
「なんでですか一人でやってくださいよ。」
トイレまで着いてもなお、甘えた声を出す先生。
さすがにそれは無理です!と言って、俺は部屋に逃げ帰った。
ドンドン!
「なんでゆういなくなっちゃうの~!」
あー、またか。
「さくくん、お部屋戻りましょ?ね?」
介護施設みたいな会話をしながら、二人で先生の部屋まで向かった。
「ええええええ!?」
部屋を開けるなり、俺は絶叫した。
「なんでこんなに缶が空いてるんですか!」
「えへへぇ…。」
忘れてた。お酒は、先生の部屋の冷蔵庫に入ってたんだ。
俺が先生を部屋に押し込んだ後、先生は二次会と言わんばかりに飲んでしまったらしい。
空いてる缶だけで五本…。
もう今日は、この部屋で先生を寝かせることはできない。
「もうだめです、先生は俺の部屋で寝てください。」
「ゆうのベッドで寝れるのぉ?やっらー!」
呂律もコンプラも怪しくなっていく一方。
もう一回先生を俺の部屋まで連れて行き、ベッドに寝かせる。
寝るの嫌がるかな、って心配してたけど、意外にも先生は「ゆうのベッドぉ…!」って言って顔面からダイブしていた。
色々言いたいことはあるけど、ひとまず助かった。
「ゆうも!」
抱っこを強請る赤ちゃんみたいに、先生が寝っ転がったまま腕を広げてくる。
酔っていてもイケメンな顔。腹立つ。
ため息を一つ吐いてから、俺も先生の隣で横になる。
先生の顔見てるとなんかよくない感情がわきそうで、あえて背中を向けた。
先生はそんな俺の背中にコアラみたいにくっついてくる。
「ゆう…だいすき。」
さっきまで呂律が怪しかったのに、やけに鮮明に聞こえてしまったその言葉。
これだけで、絆されてしまいそうになる。
聞かなかったふりをして、俺は逆に聞いた。
「さくくん、さっき言ってた『今日も』って、どういう意味ですか。」
返事がない。
…寝た?
明日起きたら絶対に聞こう。
先生の高い体温を感じながら、俺もすぐに眠りについた。
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