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第一章:土下座女と男装の麗人(男)
「私と契約して男性系Vtunerになって下さい!!」
男は小さく深呼吸をする。
自然に、自然にしていれば何も問題ない。別に悪い事をしている訳ではない。お冷に口をつけて唇を湿らす。
ちょうどその間で店員がアイスコーヒーを運んで来た。
白いシャツの上から緑のエプロンをつけ、黒いズボンを履いている。
改めて店員を見た男は、六十代くらいかなと想像する。他に店員はいないので、この女性が店主であると当たりを付ける。
「こんな良い男連れて来て、あたしの子宮が若返ったらナプキン代もあんたの会社のツケに入れとくからね?」
「止めてよママさん。今から大事な話するんだから」
この世界では喫茶店の店主をママさんと呼ぶのだった、と男は認識を改ためる。
テレビやその他メディアを通じてこの世界の常識を把握しているつもりではあるが、男の今世の出身地はかなりの田舎であり、人と触れ合う機会もかなり限られていた。
「あらそう、まぁごゆっくり」
ママさんは男に微笑んで、カウンターへと戻って行く。
ママさんはもし他の客が来た場合、二人の会話が他のテーブルに聞こえないようにか、音楽の音量を少し上げた。
カウンターへ戻ったママさんへ向けて小さく頭を下げる女。
男は二人のやり取りから、この女は近くに住んでいる、もしくは近くに勤め先があるのだろうと推測した。
「まず、自己紹介させて下さい。私、こういう者です」
椅子から立ち上がり、名刺入れから出した名刺を男へ差し出す女。男は中腰程度に立ち上がり、両手で名刺を受け取る。
「ヴィヴィッドカラーズ、代表取締役、社長……?」
「はい、Vtunerのマネジメント会社を経営しております、VividColors代表の宮坂藍子と申します」
「これはこれはご丁寧に。三ノ宮伊吹と申します。
今は何もしてないので無職です」
「何もしてないんですね!?」
ダンっ、とテーブルに両手を突き、前のめりに伊吹を見つめる藍子。
その勢いに押され、伊吹はソファーへと仰け反るように腰を落とす。
「おっと、失礼しました。取り乱しました」
「はぁ……」
藍子は椅子に座り直し、アイスコーヒーへミルクとシロップを垂らしてストローでかき混ぜる。
伊吹はブラックのままのアイスコーヒーが入っているグラスを傾け、ぐびりと嚥下した。
「どうかされました……?」
伊吹は、ストローを持ったまま呆然と自分を見つめる藍子に対し訝かしげに問い掛ける。
「えっ!? いえ、すみません。
その、ただアイスコーヒーを飲まれただけなのに、すごく色っぽく感じまして……」
「はぁ……」
伊吹はただアイスコーヒーを飲んだだけで色っぽいと言われた経験などない。
が、相対してじっくりと観察されると、仕草一つでボロが出てしまうのだと気付き、再び曖昧に相槌を打って誤魔化した。
「えっと、Vtunerにご興味はありませんか?」
「えっと、ぶいちゅーなーって何なのでしょうか?」
知らない事は知らないと答える。変に知った振りをしても、いずれは分かってしまう。
そう祖母に躾けられた経験から、素直に尋ねる伊吹。ちなみに伊吹がぶいちゅーなーと聞いて頭に浮かんだのはラジオのツマミである。
藍子は伊吹の完璧な男装の姿格好から、自分の興味がある事は突き詰めるが、そうでないものは全く気にならないタイプなのだろうと受け取った。
「YourTunesはご存じですか?」
「動画配信サイトですね。あぁなるほど。バーチャルユアチューナーと言う意味ですか」
一を聞いて十を知るとはこの事か。藍子はVtunerを知らない伊吹が、少しの説明で答えに辿り着いた事に感心する。
頭の回転が速ければ、視聴者との会話も上手いに違いない。
早くもVtunerとして活躍する伊吹のアバターを想像する藍子。
これはとんでもない逸材を発掘してしまったのではないだろうか。
テンションが上がった藍子は立ち上がり、両手を差し出して頭を下げる。
「私と契約して男性系Vtunerになって下さい!!」
自然に、自然にしていれば何も問題ない。別に悪い事をしている訳ではない。お冷に口をつけて唇を湿らす。
ちょうどその間で店員がアイスコーヒーを運んで来た。
白いシャツの上から緑のエプロンをつけ、黒いズボンを履いている。
改めて店員を見た男は、六十代くらいかなと想像する。他に店員はいないので、この女性が店主であると当たりを付ける。
「こんな良い男連れて来て、あたしの子宮が若返ったらナプキン代もあんたの会社のツケに入れとくからね?」
「止めてよママさん。今から大事な話するんだから」
この世界では喫茶店の店主をママさんと呼ぶのだった、と男は認識を改ためる。
テレビやその他メディアを通じてこの世界の常識を把握しているつもりではあるが、男の今世の出身地はかなりの田舎であり、人と触れ合う機会もかなり限られていた。
「あらそう、まぁごゆっくり」
ママさんは男に微笑んで、カウンターへと戻って行く。
ママさんはもし他の客が来た場合、二人の会話が他のテーブルに聞こえないようにか、音楽の音量を少し上げた。
カウンターへ戻ったママさんへ向けて小さく頭を下げる女。
男は二人のやり取りから、この女は近くに住んでいる、もしくは近くに勤め先があるのだろうと推測した。
「まず、自己紹介させて下さい。私、こういう者です」
椅子から立ち上がり、名刺入れから出した名刺を男へ差し出す女。男は中腰程度に立ち上がり、両手で名刺を受け取る。
「ヴィヴィッドカラーズ、代表取締役、社長……?」
「はい、Vtunerのマネジメント会社を経営しております、VividColors代表の宮坂藍子と申します」
「これはこれはご丁寧に。三ノ宮伊吹と申します。
今は何もしてないので無職です」
「何もしてないんですね!?」
ダンっ、とテーブルに両手を突き、前のめりに伊吹を見つめる藍子。
その勢いに押され、伊吹はソファーへと仰け反るように腰を落とす。
「おっと、失礼しました。取り乱しました」
「はぁ……」
藍子は椅子に座り直し、アイスコーヒーへミルクとシロップを垂らしてストローでかき混ぜる。
伊吹はブラックのままのアイスコーヒーが入っているグラスを傾け、ぐびりと嚥下した。
「どうかされました……?」
伊吹は、ストローを持ったまま呆然と自分を見つめる藍子に対し訝かしげに問い掛ける。
「えっ!? いえ、すみません。
その、ただアイスコーヒーを飲まれただけなのに、すごく色っぽく感じまして……」
「はぁ……」
伊吹はただアイスコーヒーを飲んだだけで色っぽいと言われた経験などない。
が、相対してじっくりと観察されると、仕草一つでボロが出てしまうのだと気付き、再び曖昧に相槌を打って誤魔化した。
「えっと、Vtunerにご興味はありませんか?」
「えっと、ぶいちゅーなーって何なのでしょうか?」
知らない事は知らないと答える。変に知った振りをしても、いずれは分かってしまう。
そう祖母に躾けられた経験から、素直に尋ねる伊吹。ちなみに伊吹がぶいちゅーなーと聞いて頭に浮かんだのはラジオのツマミである。
藍子は伊吹の完璧な男装の姿格好から、自分の興味がある事は突き詰めるが、そうでないものは全く気にならないタイプなのだろうと受け取った。
「YourTunesはご存じですか?」
「動画配信サイトですね。あぁなるほど。バーチャルユアチューナーと言う意味ですか」
一を聞いて十を知るとはこの事か。藍子はVtunerを知らない伊吹が、少しの説明で答えに辿り着いた事に感心する。
頭の回転が速ければ、視聴者との会話も上手いに違いない。
早くもVtunerとして活躍する伊吹のアバターを想像する藍子。
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