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第一章:土下座女と男装の麗人(男)
先見の明
楽しそうに自分の仕事内容を語っていた藍子の表情が曇ったのを見て、伊吹はカウンターでグラスを拭いているママさんに向けて手を上がる。
「すみません、アイスコーヒーのお代わりをお願いします」
「あっ、私もお願いします!
すみません、飲み物がなくなったのに気付かなくて」
長々と自分語りしていたのに気付き、藍子は顔を赤らめながらストローに口を付けて残りを飲み干す。
伊吹は興味深いお話です、と答えて気にしていない事を伝える。
ママさんがお代わりのアイスコーヒーをテーブルに置き、藍子はミルクとシロップを入れてかき混ぜると、改めて自分の会社の置かれた状況について説明しだす。
「最初の一人が契約してくれてから、その子の横の繋がりで所属契約について詳しく聞きたいと言って下さるYourTunerが連絡を下さるようになりました。
ありがたい事に、少しずつ所属YourTunerが増えていったんです」
一人で活動するYourTunerでも、YourTuner同士の繋がりを持っている。
お互いのチャンネルに出演し合う事により多くの新規視聴者の目に触れる機会を得て、双方のチャンネル登録者を増やす事が出来るのだ。
その繋がり内での紹介で、VividColorsの所属YourTunerは最大十五名まで伸ばす事となった。一企業の売上として見るとまだまだ零細と呼ばれる規模感である。
しかし、藍子は順調な滑り出しであると判断した。現状、事業は上手く行っている。であれば、勢いを付ける為にも、自分の目標であるVtuner事業の為にも先行投資が必要だ。
「所属YourTunerが増えても、すぐにみんなをVtuner化する事は出来ません。イラストの発注やモーションキャプチャー用の機材の購入、撮影するスタジオの用意や自宅での動画撮影やライブ配信が出来るようにする為の環境整備など、とても十五人分用意する事は出来ません」
伊吹が元いた世界では、すでにヴァーチャルライバーは一般層にまで浸透していた。誰もが特別な機材を用意する事なく、スマートフォン一つで配信する事が出た。
が、この世界ではまだその技術段階には達していない。広く普及していない技術に関する機材はとてつもなく高価だ。
伊吹が元いた世界ではスマートフォン一つで出来る事でも、この世界においては複数の高額な機材が必要となる。
「ですので、所属YourTunerの中からチャンネル登録者の多い三名を初期メンバーとして選出し、一期生としてVtunerデビューさせたです」
ヴァーチャルライバー達を世に知らしめ、一般層にまで普及させる。この世界の映像配信技術を新たな段階へと押し上げる重要人物、それが藍子がなのだと伊吹は理解した。
「一期生Vtuner達はデビューしてすぐ、収益が爆発的に増加しました。やはり私の判断は間違っていなかった。そう確信したのです。
残りの十二名を二期生としてVtunerデビューさせるべく、すぐに詳細な事業計画書を作成し、色んな銀行へ融資のお願いをして回りました。
が、YourTunerという職業自体がまだ市民権を得ていない事に加え、さらにヴァーチャル配信に特化した事業にお金を貸してくれる銀行はありませんでした」
ただの事業家であればそこで一度立ち止まり、現在得ている収益を増やしてから改めて会社の自己資本で事業拡大を行うだろう。
が、藍子はただの事業家ではなく、秘めている情熱もまた半端なものではなかったのだ。
「個人名義の銀行口座から必要最小限のみを残して全額引き出し、それでも足りない分は親から譲られて私が所有していた投資目的の株や不動産を売却して現金化しました」
ん? と伊吹は首を傾げる。
今聞かされた内容を鑑みるに、藍子はいわゆるお嬢様だ。それも相当なレベルで。
親に泣きつけば直接会社へ資金を出してくれるのではと、伊吹は感じた。
伊吹の浮かべた表情から察し、藍子は小さく首を振る。
「VividColorsを立ち上げたのは大学在学中なんです。それも親の経営する系列の会社へ勤務する話を蹴ってまで会社を作ったんです。
反対はされませんでしたが、自分で決めたのだから自分の力で頑張ると約束したんです。
事業拡大の為にお金を出してとは言えませんでした」
「すみません、アイスコーヒーのお代わりをお願いします」
「あっ、私もお願いします!
すみません、飲み物がなくなったのに気付かなくて」
長々と自分語りしていたのに気付き、藍子は顔を赤らめながらストローに口を付けて残りを飲み干す。
伊吹は興味深いお話です、と答えて気にしていない事を伝える。
ママさんがお代わりのアイスコーヒーをテーブルに置き、藍子はミルクとシロップを入れてかき混ぜると、改めて自分の会社の置かれた状況について説明しだす。
「最初の一人が契約してくれてから、その子の横の繋がりで所属契約について詳しく聞きたいと言って下さるYourTunerが連絡を下さるようになりました。
ありがたい事に、少しずつ所属YourTunerが増えていったんです」
一人で活動するYourTunerでも、YourTuner同士の繋がりを持っている。
お互いのチャンネルに出演し合う事により多くの新規視聴者の目に触れる機会を得て、双方のチャンネル登録者を増やす事が出来るのだ。
その繋がり内での紹介で、VividColorsの所属YourTunerは最大十五名まで伸ばす事となった。一企業の売上として見るとまだまだ零細と呼ばれる規模感である。
しかし、藍子は順調な滑り出しであると判断した。現状、事業は上手く行っている。であれば、勢いを付ける為にも、自分の目標であるVtuner事業の為にも先行投資が必要だ。
「所属YourTunerが増えても、すぐにみんなをVtuner化する事は出来ません。イラストの発注やモーションキャプチャー用の機材の購入、撮影するスタジオの用意や自宅での動画撮影やライブ配信が出来るようにする為の環境整備など、とても十五人分用意する事は出来ません」
伊吹が元いた世界では、すでにヴァーチャルライバーは一般層にまで浸透していた。誰もが特別な機材を用意する事なく、スマートフォン一つで配信する事が出た。
が、この世界ではまだその技術段階には達していない。広く普及していない技術に関する機材はとてつもなく高価だ。
伊吹が元いた世界ではスマートフォン一つで出来る事でも、この世界においては複数の高額な機材が必要となる。
「ですので、所属YourTunerの中からチャンネル登録者の多い三名を初期メンバーとして選出し、一期生としてVtunerデビューさせたです」
ヴァーチャルライバー達を世に知らしめ、一般層にまで普及させる。この世界の映像配信技術を新たな段階へと押し上げる重要人物、それが藍子がなのだと伊吹は理解した。
「一期生Vtuner達はデビューしてすぐ、収益が爆発的に増加しました。やはり私の判断は間違っていなかった。そう確信したのです。
残りの十二名を二期生としてVtunerデビューさせるべく、すぐに詳細な事業計画書を作成し、色んな銀行へ融資のお願いをして回りました。
が、YourTunerという職業自体がまだ市民権を得ていない事に加え、さらにヴァーチャル配信に特化した事業にお金を貸してくれる銀行はありませんでした」
ただの事業家であればそこで一度立ち止まり、現在得ている収益を増やしてから改めて会社の自己資本で事業拡大を行うだろう。
が、藍子はただの事業家ではなく、秘めている情熱もまた半端なものではなかったのだ。
「個人名義の銀行口座から必要最小限のみを残して全額引き出し、それでも足りない分は親から譲られて私が所有していた投資目的の株や不動産を売却して現金化しました」
ん? と伊吹は首を傾げる。
今聞かされた内容を鑑みるに、藍子はいわゆるお嬢様だ。それも相当なレベルで。
親に泣きつけば直接会社へ資金を出してくれるのではと、伊吹は感じた。
伊吹の浮かべた表情から察し、藍子は小さく首を振る。
「VividColorsを立ち上げたのは大学在学中なんです。それも親の経営する系列の会社へ勤務する話を蹴ってまで会社を作ったんです。
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