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第一章:土下座女と男装の麗人(男)
藍子の躓き
先ほど藍子が口にした投資目的の株や不動産というのは、節税目的で親が藍子へ譲渡したものであり、資産運用を経験させる目的も含んでいる為、売却時期は藍子に任されていたものだ。
「詳しい会計処理方法は省きますが、会社として新規発行した株式を私個人が購入するという形で会社の資金へ回しました。
好条件の一棟貸しのビルが見つかったので、事務所兼スタジオとして賃貸契約をしました。
所属YourTunerが望めばビルに住み込めるよう内装工事にもこだわって発注依頼を掛け、私自身も引っ越し手続きを進めました。
そうして所属YourTunerも、裏方として支える技術者も全力で活動出来る環境を整えていたんです」
思い切った事をするなぁと、伊吹は藍子の行動力に感心した。
ゆっくりと夢へ向かって一歩ずつ歩んで行く性格ではなく、今が攻勢を掛けるべきだと判断すれば脇目も振らず突き進んで行く一意専心な人間。
一意専心を悪い言い方へ変えるとすれば猪突猛進。周りが自分の行動をどう評価しているか、あまり気に留めなかったのではないかと伊吹は想像した。
「ビル一棟の内装工事をするとなると、費用はもちろんですが時間が掛かります。各種機材の手配は一期生の時のツテがありますし、アバターのイラスト作成も問題ありませんでした。
……ビルの工事以外の手配を素早く終わらせる事が出来た。その事が私自身の足を引っ張る事になるとは思いもしませんでした」
ふぅ、と小さく息を吐く藍子。そこに悲壮感はない。
伊吹はその表情から、藍子が冷静に過去の出来事を思い返している印象を受けた。負の感情が見えない、前を向いている人の表情だ。
「ビルの完成を待たず、先に撮影機材を各所属YourTunerへ貸し出しました。一期生はそれぞれ自宅で撮影した動画や生配信で多くのチャンネル登録者や馴染みの視聴者を獲得していましたから、二期生にも早くそうなって欲しかった。より多くの視聴者に、Vtunerの可能性に気付いて欲しかった。
もうすぐ二期生のデビュー日だと言う大事な時期に、大手事務所から所属YourTunerの大量離脱が報じられました」
業界最大手、百人を越える所属YourTunerを抱えていたTUUUNが元所属YourTunerの内部告発が大きな波紋を呼んだ。
TUUUNは所属YourTunerとの契約で、動画収益の七割がYourTuner、三割が会社の配分で分配していた。
が、内部告発をした元所属YourTunerは会社へ収益の三割も渡すに見合う恩恵を受けていないと主張したのだ。
「先ほども説明した通り、VividColorsはTUUNを上回る四割のマネジメント料を受け取っています。一連の報道を見た弊社所属のYourTunerは、やっぱり騙されていたのだと騒ぎ出しました。
私としては、Vtunerというまだそれほど競合のいない部門で勝負出来る道筋を提示しているという自負があります。技術面での補佐もそうですし、最新技術を取り入れたスタジオの準備も進めています。
他事務所と比べると取り分が多いかも知れません。でも、それは私が私腹を肥やす為の利己的なものではない。二次元の壁を越える為の、さらに設備投資に回す為の重要な資金源だった」
藍子の情熱は、想いは、やはり所属YourTunerには伝わっていなかったのだろうと伊吹は思った。
全く伝わっていなかったとまでは思わないが、自分の夢を叶える為に動いている藍子と、ある程度のまとまった現金を優先するYourTunerとでは見ているものが違ったのだ。
「説明しても聞いてもらえませんでした。VividColorsの取り分を四割から三割に減らせと言われるのなら、まだ何とでもなったでしょう。
ですが、彼女らは思ってもみなかった手段を取ったんです。
VividColorsからの独立です」
「詳しい会計処理方法は省きますが、会社として新規発行した株式を私個人が購入するという形で会社の資金へ回しました。
好条件の一棟貸しのビルが見つかったので、事務所兼スタジオとして賃貸契約をしました。
所属YourTunerが望めばビルに住み込めるよう内装工事にもこだわって発注依頼を掛け、私自身も引っ越し手続きを進めました。
そうして所属YourTunerも、裏方として支える技術者も全力で活動出来る環境を整えていたんです」
思い切った事をするなぁと、伊吹は藍子の行動力に感心した。
ゆっくりと夢へ向かって一歩ずつ歩んで行く性格ではなく、今が攻勢を掛けるべきだと判断すれば脇目も振らず突き進んで行く一意専心な人間。
一意専心を悪い言い方へ変えるとすれば猪突猛進。周りが自分の行動をどう評価しているか、あまり気に留めなかったのではないかと伊吹は想像した。
「ビル一棟の内装工事をするとなると、費用はもちろんですが時間が掛かります。各種機材の手配は一期生の時のツテがありますし、アバターのイラスト作成も問題ありませんでした。
……ビルの工事以外の手配を素早く終わらせる事が出来た。その事が私自身の足を引っ張る事になるとは思いもしませんでした」
ふぅ、と小さく息を吐く藍子。そこに悲壮感はない。
伊吹はその表情から、藍子が冷静に過去の出来事を思い返している印象を受けた。負の感情が見えない、前を向いている人の表情だ。
「ビルの完成を待たず、先に撮影機材を各所属YourTunerへ貸し出しました。一期生はそれぞれ自宅で撮影した動画や生配信で多くのチャンネル登録者や馴染みの視聴者を獲得していましたから、二期生にも早くそうなって欲しかった。より多くの視聴者に、Vtunerの可能性に気付いて欲しかった。
もうすぐ二期生のデビュー日だと言う大事な時期に、大手事務所から所属YourTunerの大量離脱が報じられました」
業界最大手、百人を越える所属YourTunerを抱えていたTUUUNが元所属YourTunerの内部告発が大きな波紋を呼んだ。
TUUUNは所属YourTunerとの契約で、動画収益の七割がYourTuner、三割が会社の配分で分配していた。
が、内部告発をした元所属YourTunerは会社へ収益の三割も渡すに見合う恩恵を受けていないと主張したのだ。
「先ほども説明した通り、VividColorsはTUUNを上回る四割のマネジメント料を受け取っています。一連の報道を見た弊社所属のYourTunerは、やっぱり騙されていたのだと騒ぎ出しました。
私としては、Vtunerというまだそれほど競合のいない部門で勝負出来る道筋を提示しているという自負があります。技術面での補佐もそうですし、最新技術を取り入れたスタジオの準備も進めています。
他事務所と比べると取り分が多いかも知れません。でも、それは私が私腹を肥やす為の利己的なものではない。二次元の壁を越える為の、さらに設備投資に回す為の重要な資金源だった」
藍子の情熱は、想いは、やはり所属YourTunerには伝わっていなかったのだろうと伊吹は思った。
全く伝わっていなかったとまでは思わないが、自分の夢を叶える為に動いている藍子と、ある程度のまとまった現金を優先するYourTunerとでは見ているものが違ったのだ。
「説明しても聞いてもらえませんでした。VividColorsの取り分を四割から三割に減らせと言われるのなら、まだ何とでもなったでしょう。
ですが、彼女らは思ってもみなかった手段を取ったんです。
VividColorsからの独立です」
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