11 / 243
第一章:土下座女と男装の麗人(男)
黒塗りのバン、護衛を二人添えて
さぁさぁと促し、ママさんは二人を喫茶店の裏口へと案内する。
従業員が使うであろう勝手戸を守るかのように、両側に黒服サングラス姿のお姉さんが二人、待機していた。
片耳にインカムまで仕込まれているのを見て、伊吹はSPみたいなものかなと思った。
「悪いようにはしないよ。
だから、突っ走りがちなうちの姪の事もよろしく頼むよ」
「分かりました、コーヒーご馳走様でした」
何やら話が通じ合っている様子のママさんと伊吹を見て、何ナニどういう事何が起こっているのと騒々しい藍子。
そんな藍子の腕を取って歩き出す黒服のお姉さんその一。
「何するんですか!?
って、小杉さん。あれ? そちらは栗田さん。何でこんなところに?」
「ささっ、お嬢様。車までご案内致します。
ご希望であれば昔のようにお姫様抱っこでお連れしますが?」
「ちょちょちょちょっと!
歩く、歩きますから!!」
周囲の状況を確認しながら歩き出す栗田に付き添われ、伊吹も喫茶店を後にする。
ちらりと振り返ると、ママさんはまだ裏口に立っており、こちらを見送っているのが見えた。
路地を出てすぐ、ハザードランプを点滅させている黒塗りのバンのスライドドアが自動で開かれる。
立ち止まらずに乗り込む四人。
「追跡者見られず、車を出して」
物々しい雰囲気を醸し出す車内ではあるが、藍子はバンの運転手も昔馴染みである若村だった事で緊張感のカケラもなくお姉さん達に話し掛けている。
対して伊吹の表情は固く、何やら思い込んでいるように見て取れる。小杉は自分達が与えているであろう威圧感を少しでも和らげるべく話し掛ける。
「ご安心下さい、必ず無事にお嬢様の事務所へお連れ致しますので」
「ん? あぁ、別に不安に思っている訳じゃないですよ。
ただ、藍子さんと同じくらい、僕も楽観的に考え過ぎていたかなと反省していたんです」
男が一人、街をうろつく。
この世界の現代では考えられない事。何が起こってもおかしくない。
危機感がなさ過ぎる。ママさんから言外に注意を受けた事を理解した伊吹は、世話を焼いてくれたママさんや駆けつけてくれた黒服のお姉さん達に対して申し訳ない気持ちを抱えていた。
そんな伊吹に対して、小杉は肯定する事も否定する事も出来ずにいると、ちょうど目的地である藍子の事務所が入っているビルの前へと到着した。
すでにビルの周りは私服姿で巡回警備しているお姉さん達で固められていると教えられる。
これは大ごとになってしまったな、とさらに肝を冷やす伊吹。
バンのスライドドアが開けられ、車から降りると立ち止まらないよう指示されそのままビルへと入る。
それほど大きなビルではなく、エレベーターの階数表示は一階から六階まで。
一階はエントランスと管理人室のみ。エレベーター前で待機していた警備員の恰好をしたお姉さん(藍子曰く佐井さん)がボタンを押して、エレベーターの扉が開く。
藍子が六階のボタンを押して、ゆっくりと扉が閉まりエレベーターが上へと動き出した。
「何か宮坂警備保障の最大防衛力って感じね。自分が宮坂家当主になった気分だよ。
でも何でこんなに仰々しい感じになってるの?」
現在の宮坂家当主は藍子の実の父親であり、ママさんの旦那さんでもある。
つまり、藍子は無意識に現在の状況を正確に把握していた事となる。
護衛として控えている二人は無表情で無反応を貫いている。
伊吹はここで打ち明けておくか、と藍子へ向き直る。
「藍子さん、お手をお借りしても?」
藍子はどうぞ、と右手を差し出す。
伊吹は左手でタートルネックをずり下げ、藍子の右手を自らの喉仏を触れさせる。
「喫茶店のママさんには見抜かれてしまいましたが、藍子さんもこれでお分かり頂けるでしょうか?」
伊吹が喋る度に突き出した喉仏が振動しながら上下に動く。喉元に手のひら全体で触れていた藍子の手がビクリと跳ね、胸元へと引っ込められる。
間が悪くエレベーターは六階へ到着し、扉がゆっくりと開いた。
「お、お、おっ、おふごっ!!!?」
藍子の上げようとした絶叫は、そうなると予測していた小杉の手によって押し潰されたのだった。
従業員が使うであろう勝手戸を守るかのように、両側に黒服サングラス姿のお姉さんが二人、待機していた。
片耳にインカムまで仕込まれているのを見て、伊吹はSPみたいなものかなと思った。
「悪いようにはしないよ。
だから、突っ走りがちなうちの姪の事もよろしく頼むよ」
「分かりました、コーヒーご馳走様でした」
何やら話が通じ合っている様子のママさんと伊吹を見て、何ナニどういう事何が起こっているのと騒々しい藍子。
そんな藍子の腕を取って歩き出す黒服のお姉さんその一。
「何するんですか!?
って、小杉さん。あれ? そちらは栗田さん。何でこんなところに?」
「ささっ、お嬢様。車までご案内致します。
ご希望であれば昔のようにお姫様抱っこでお連れしますが?」
「ちょちょちょちょっと!
歩く、歩きますから!!」
周囲の状況を確認しながら歩き出す栗田に付き添われ、伊吹も喫茶店を後にする。
ちらりと振り返ると、ママさんはまだ裏口に立っており、こちらを見送っているのが見えた。
路地を出てすぐ、ハザードランプを点滅させている黒塗りのバンのスライドドアが自動で開かれる。
立ち止まらずに乗り込む四人。
「追跡者見られず、車を出して」
物々しい雰囲気を醸し出す車内ではあるが、藍子はバンの運転手も昔馴染みである若村だった事で緊張感のカケラもなくお姉さん達に話し掛けている。
対して伊吹の表情は固く、何やら思い込んでいるように見て取れる。小杉は自分達が与えているであろう威圧感を少しでも和らげるべく話し掛ける。
「ご安心下さい、必ず無事にお嬢様の事務所へお連れ致しますので」
「ん? あぁ、別に不安に思っている訳じゃないですよ。
ただ、藍子さんと同じくらい、僕も楽観的に考え過ぎていたかなと反省していたんです」
男が一人、街をうろつく。
この世界の現代では考えられない事。何が起こってもおかしくない。
危機感がなさ過ぎる。ママさんから言外に注意を受けた事を理解した伊吹は、世話を焼いてくれたママさんや駆けつけてくれた黒服のお姉さん達に対して申し訳ない気持ちを抱えていた。
そんな伊吹に対して、小杉は肯定する事も否定する事も出来ずにいると、ちょうど目的地である藍子の事務所が入っているビルの前へと到着した。
すでにビルの周りは私服姿で巡回警備しているお姉さん達で固められていると教えられる。
これは大ごとになってしまったな、とさらに肝を冷やす伊吹。
バンのスライドドアが開けられ、車から降りると立ち止まらないよう指示されそのままビルへと入る。
それほど大きなビルではなく、エレベーターの階数表示は一階から六階まで。
一階はエントランスと管理人室のみ。エレベーター前で待機していた警備員の恰好をしたお姉さん(藍子曰く佐井さん)がボタンを押して、エレベーターの扉が開く。
藍子が六階のボタンを押して、ゆっくりと扉が閉まりエレベーターが上へと動き出した。
「何か宮坂警備保障の最大防衛力って感じね。自分が宮坂家当主になった気分だよ。
でも何でこんなに仰々しい感じになってるの?」
現在の宮坂家当主は藍子の実の父親であり、ママさんの旦那さんでもある。
つまり、藍子は無意識に現在の状況を正確に把握していた事となる。
護衛として控えている二人は無表情で無反応を貫いている。
伊吹はここで打ち明けておくか、と藍子へ向き直る。
「藍子さん、お手をお借りしても?」
藍子はどうぞ、と右手を差し出す。
伊吹は左手でタートルネックをずり下げ、藍子の右手を自らの喉仏を触れさせる。
「喫茶店のママさんには見抜かれてしまいましたが、藍子さんもこれでお分かり頂けるでしょうか?」
伊吹が喋る度に突き出した喉仏が振動しながら上下に動く。喉元に手のひら全体で触れていた藍子の手がビクリと跳ね、胸元へと引っ込められる。
間が悪くエレベーターは六階へ到着し、扉がゆっくりと開いた。
「お、お、おっ、おふごっ!!!?」
藍子の上げようとした絶叫は、そうなると予測していた小杉の手によって押し潰されたのだった。
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!