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第一章:土下座女と男装の麗人(男)
画面越しの会話
言われるまま、藍子は自分のスマートフォンを取り出してカメラアプリを開き、動画モードにする。
「藍子さんは画面越しに僕を見ていて下さい。燈子さんは会話をしようとするのではなく、次々に簡単な質問を投げて下さい。気になった回答があれば、詳しい質問をしてもらって構いません。
燈子さんが聞いて、僕が答える。これがひとくだりです」
いいですか? という伊吹の問い掛けに、分かりましたと頷く燈子。
伊吹は護衛のお姉さん達を藍子の後ろに立って、藍子同様画面越しに見守ってもらうようお願いをした。
そんなやり取りを経て、藍子が動画撮影を開始する。燈子は何を質問すべきか少しの間考えて、一番簡単な質問をした。
「えっと……、今日のお昼は何を食べましたか?」
「ラーメンを食べました」
「どんなラーメンですか?」
「豚骨醤油ラーメンです」
「ラーメンはよく食べられるのですか?」
「家で食べるのは難しいので、滅多に機会はないですね」
「他に好きな食べ物は何ですか?」
「肉も魚も野菜も何でも好きですよ」
「じゃあ嫌いな食べ物は?」
「嫌いというか、苦手なのは納豆ですかね」
「納豆の何が苦手なんですか?」
「唇と箸から離れないネバネバとした糸が鬱陶しいんですよね」
「オクラは大丈夫なんですか?」
「オクラは好きです。天ぷらなんか美味しいですよね」
「天ぷらには天つゆを付けて食べますか? それとも塩ですか?」
「塩の方が好きです。抹茶塩とか」
「なかなか通ですね。
お酒好きな印象を受けましたが、よく飲まれますか?」
「いえ。昨日十八歳になったばかりなのですが、まだ飲んだ事ないです」
「「えぇ!? 年下!!?」」
テンポ良く続いていた質問が途切れる。藍子も燈子も、まさか伊吹が十八歳だとは思ってもみなかったようだ。
「え、僕ってそんなにおじさんに見えますか?」
「いえ、そういう意味ではなく、男性というと自分よりも年上だという印象が強いものですから、何も考えずにそうだと思い込んでいたと言うか……」
藍子と燈子は同じ父親と母親を持つ姉妹であり、実際に会った事のある男性というとその父親のみである。
父方の祖父は二人が生まれる前に亡くなっており、母方に関しては祖父と叔父がいると聞いているが、会った事がない。
もっと突き詰めて述べると、藍子と燈子のように父親の顔を知っており、年に数回会う機会がある女性の方が少ない。
この世に誕生する子供のほとんどが、男性から提供された精液を元に人工授精で生まれて来るのだから。
知識としては頭に入っていても、前世の常識が邪魔をして伊吹はいまいち実感出来ていないのだ。
祖母に大切に育てられ、近隣住民からも愛されている。この世界の不特定多数との触れ合いなどはなかった。
だから先ほどのように、世間の常識からの乖離が目立ってしまう。
「ところで燈子さん。僕としては違和感なく受け答えが出来ていたように感じたのですが、如何でしたか?」
「そうですね、そう言われてみれば……」
燈子が不思議そうに首を傾げている。思っていたよりもすんなりと会話を進める事が出来たからだ。
「藍子さん、スマホの画面越しに僕達のやり取りを見てみて、どう感じられましたか?」
藍子はスマートフォンのカメラに向かって問い掛けて来ている伊吹の質問に、少し考えながら答える。
「確かに、男性に対する先入観とか緊張感などを意識せず、会話の内容そのままを楽しめたような気がします」
伊吹は護衛の二人へ目線を送り、二人とも頷いているのを確認して話を進める。
「今のような動画を改めて撮影しましょう。質問内容は先に台本を用意して『男性への100の質問』のような題名を付けて新しく作ったチャンネルに投稿するんです。
ですが、Vtunerとして成功するのかの試験ですので、顔を映すと邪魔になりそうですね。
受け答えしているのが間違いなく男性であるという証拠に、僕の喉仏をドアップで撮影するというのはどうでしょうか?」
「藍子さんは画面越しに僕を見ていて下さい。燈子さんは会話をしようとするのではなく、次々に簡単な質問を投げて下さい。気になった回答があれば、詳しい質問をしてもらって構いません。
燈子さんが聞いて、僕が答える。これがひとくだりです」
いいですか? という伊吹の問い掛けに、分かりましたと頷く燈子。
伊吹は護衛のお姉さん達を藍子の後ろに立って、藍子同様画面越しに見守ってもらうようお願いをした。
そんなやり取りを経て、藍子が動画撮影を開始する。燈子は何を質問すべきか少しの間考えて、一番簡単な質問をした。
「えっと……、今日のお昼は何を食べましたか?」
「ラーメンを食べました」
「どんなラーメンですか?」
「豚骨醤油ラーメンです」
「ラーメンはよく食べられるのですか?」
「家で食べるのは難しいので、滅多に機会はないですね」
「他に好きな食べ物は何ですか?」
「肉も魚も野菜も何でも好きですよ」
「じゃあ嫌いな食べ物は?」
「嫌いというか、苦手なのは納豆ですかね」
「納豆の何が苦手なんですか?」
「唇と箸から離れないネバネバとした糸が鬱陶しいんですよね」
「オクラは大丈夫なんですか?」
「オクラは好きです。天ぷらなんか美味しいですよね」
「天ぷらには天つゆを付けて食べますか? それとも塩ですか?」
「塩の方が好きです。抹茶塩とか」
「なかなか通ですね。
お酒好きな印象を受けましたが、よく飲まれますか?」
「いえ。昨日十八歳になったばかりなのですが、まだ飲んだ事ないです」
「「えぇ!? 年下!!?」」
テンポ良く続いていた質問が途切れる。藍子も燈子も、まさか伊吹が十八歳だとは思ってもみなかったようだ。
「え、僕ってそんなにおじさんに見えますか?」
「いえ、そういう意味ではなく、男性というと自分よりも年上だという印象が強いものですから、何も考えずにそうだと思い込んでいたと言うか……」
藍子と燈子は同じ父親と母親を持つ姉妹であり、実際に会った事のある男性というとその父親のみである。
父方の祖父は二人が生まれる前に亡くなっており、母方に関しては祖父と叔父がいると聞いているが、会った事がない。
もっと突き詰めて述べると、藍子と燈子のように父親の顔を知っており、年に数回会う機会がある女性の方が少ない。
この世に誕生する子供のほとんどが、男性から提供された精液を元に人工授精で生まれて来るのだから。
知識としては頭に入っていても、前世の常識が邪魔をして伊吹はいまいち実感出来ていないのだ。
祖母に大切に育てられ、近隣住民からも愛されている。この世界の不特定多数との触れ合いなどはなかった。
だから先ほどのように、世間の常識からの乖離が目立ってしまう。
「ところで燈子さん。僕としては違和感なく受け答えが出来ていたように感じたのですが、如何でしたか?」
「そうですね、そう言われてみれば……」
燈子が不思議そうに首を傾げている。思っていたよりもすんなりと会話を進める事が出来たからだ。
「藍子さん、スマホの画面越しに僕達のやり取りを見てみて、どう感じられましたか?」
藍子はスマートフォンのカメラに向かって問い掛けて来ている伊吹の質問に、少し考えながら答える。
「確かに、男性に対する先入観とか緊張感などを意識せず、会話の内容そのままを楽しめたような気がします」
伊吹は護衛の二人へ目線を送り、二人とも頷いているのを確認して話を進める。
「今のような動画を改めて撮影しましょう。質問内容は先に台本を用意して『男性への100の質問』のような題名を付けて新しく作ったチャンネルに投稿するんです。
ですが、Vtunerとして成功するのかの試験ですので、顔を映すと邪魔になりそうですね。
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