17 / 243
第二章:転生先は並行世界
【悲報】俺氏、神様に会わず転生してしまう
伊吹の前世はしがない会社員だった。
この男は普通の大学を出た後、超有名企業グループの販売を担当する子会社へと就職した。
私生活では外見が普通よりもやや良い事が逆に作用してしまい、女性との仲を進める事が難しかった。
姉が二人いた事も、女性と付き合う事が出来なかった要因の一つとなる。
彼女がいそうに見えるから、きっと付き合えないだろう。
女性の扱いに慣れているから、きっと遊んでるのだろう。
そんな先入観を持たれてしまい、女性からアプローチを掛けられる事なく、そして自分からも積極的に行動しなかった事もあり、男は二十九歳になっても女性経験がなかった。
三十歳になる前の日。
このままでは魔法使いになってしまうと、男は勇気を出して風俗街へと向かった。
しかし周りの目が気になり、風俗街の入り口を遠くから眺めるだけで心臓がバクバクと跳ね、足がすくんでしまう。
とりあえず落ち着こうと思い、男は近くの居酒屋に入って酒を注文した。
(これを飲んだら行くぞ!)
とりあえず生、から始まり。
(空きっ腹のまま風俗店に入って、途中でぐぅぐぅと腹が鳴るのはカッコ悪いな。
精の付くツマミを食べてもう一杯いくか)
山芋の短冊、牡蠣のニンニク炒め、レバニラ炒めをハイボールで流し込む。
(食べたら余計に腹が減って来た。丼ものも頼むか)
男がうにイクラ丼を頼むと、隣に座っている客が男の御猪口に日本酒をつぐ。
「ささっ、親父殿。海鮮ものには日本酒が合うと聞くぞ?」
「んん? あぁ、そうですね」
いつからこんな客が隣に座っていただろうか。整った顔立ちの若い男で、紫の着物を羽織っている。
(俺はまだ親父と呼ばれるような年齢じゃないんだが)
男は訝しげに思うものの、勧められるままに御猪口に口を付け、ぐいっと飲み干す。
男は知らず知らずに相当な量の酒を飲んでしまっていた。紫の着物の男にさぁさぁと勧められたのだ。
ふら付く身体で風俗街へと向かう。ゴールデン街のアーチを睨み付け、交差点で信号待ちをしていると、後ろから勢い良く押し出され、車道へと飛び出してしまう。
「あれだけ飲めば痛みもなかろう」
そんな声を聞きつつ、男が最後に目にしたものは、大きなトラックが放つ眩いライト。
思わず目をギュッと瞑り、強い衝撃を感じて……。
享年二十九歳、童貞。
そこで終わるはずだった、しがない会社員の人生。
しかし、彼の意識は暗闇の中、不思議な温もりに包まれて確かに存在していた。
手も足も動かせず、声も出せない。ただ存在しているというだけの状態。
植物状態で病院のベッドに寝かされているのかとも考えたが、どうやら違うらしい。
(トラックに轢かれてからどれくらいの時間が経ったんだろう)
少しずつ手足が動くようになった。グルグルと何かが蠢くような音も感じるになった。そして時々、身体全体に響くかのように女性の声が聞こえる。
(これってもしかして、俺を呼ぶ女神様の声なのでは!?
って事は、トラックに轢かれて死んだのか……?)
バタバタと手足を動かし、ここにいるぞとアピールする。
響く女性の声と、とても遠くにいるように聞こえる、くぐもった男性らしき声。
しかしすぐに何かが起こる事はなく、それからかなりの時間が経った。
寝て起きて寝て起きて声が響いて寝て。食事も排泄もする事なく、ただ温かい何かに包まれて、生きてる。
楽しくはないが辛い事もない。働く必要もなく、結婚は子供はと急かされる事もない。
(まぁいいか、もうしばらくこのままでも)
さらにどれだけの時間が経っただろうか。
(何か狭くなってね?)
身体を包む空間が固く、狭くなっているように感じる。上からぐっと押されるような圧と、呻くような女性の声。
なすすべなく身を任せ、何かに引っ掛かると頭の角度を変えてみたり、肩をすぼめてみたり。
そして突如感じる重力。
こうして、彼は長らく過ごした居心地の良い空間から押し出された。
ぼんやりと照らす光。
幼子の鳴き声。
複数の人間の話し声。浮遊感。
そして、肌と肌の温かい触れ合い。
「おめでとうございます、元気な男の子です!」
「やっと会えたわね、伊吹。私があなたのお母さんよ」
(……何ですと!?)
こうして再び生まれる事となった、今世では伊吹と名付けられた男。前世ではサブカルチャーに好んで触れていたので、自分の身に起こった事はある程度把握出来た。
(【悲報】俺氏、神様に会わず転生してしまう)
出産というものは母親の身体だけでなく、赤ん坊の身体にもそれなりに負担が掛かるようで、産まれた直後からの伊吹の意識はぼんやりとしていた。
気付けば病院ではないどこかで寝かされていた。まだよく見えない目、座っていない首。周りを見回す事は出来ないが、自分を覗き込む人物が複数いる事は分かる。
自分の母親が綺麗である事と、母方の祖母が同居しているらしき事。
自分が住んでいるのはそれなりに大きな屋敷である事。
メイドさんのような女性が二人いる事。
そして、小さな女の子も二人いる事。
メイドさん二人と女の子二人はそれぞれ親子であるらしき事。
どうやら二家族ともこの屋敷に住んでいるらしき事。
(どう考えても日本語だよなぁ)
聞こえて来る会話を理解出来る事から、異世界ではなさそうだと判断した。
仰向けに寝かされた目線の先、天井には明るさを調節出来るシーリングライトがあるので、電気を使用する文明がある事からも分かる。
かなり早い段階で丹田に溜まっているであろう魔力的なパワーを探るのは止めた。残念ながらこの世界にも魔法はない。
(【悲報】俺氏、同じ地球で生まれ変わる)
この男は普通の大学を出た後、超有名企業グループの販売を担当する子会社へと就職した。
私生活では外見が普通よりもやや良い事が逆に作用してしまい、女性との仲を進める事が難しかった。
姉が二人いた事も、女性と付き合う事が出来なかった要因の一つとなる。
彼女がいそうに見えるから、きっと付き合えないだろう。
女性の扱いに慣れているから、きっと遊んでるのだろう。
そんな先入観を持たれてしまい、女性からアプローチを掛けられる事なく、そして自分からも積極的に行動しなかった事もあり、男は二十九歳になっても女性経験がなかった。
三十歳になる前の日。
このままでは魔法使いになってしまうと、男は勇気を出して風俗街へと向かった。
しかし周りの目が気になり、風俗街の入り口を遠くから眺めるだけで心臓がバクバクと跳ね、足がすくんでしまう。
とりあえず落ち着こうと思い、男は近くの居酒屋に入って酒を注文した。
(これを飲んだら行くぞ!)
とりあえず生、から始まり。
(空きっ腹のまま風俗店に入って、途中でぐぅぐぅと腹が鳴るのはカッコ悪いな。
精の付くツマミを食べてもう一杯いくか)
山芋の短冊、牡蠣のニンニク炒め、レバニラ炒めをハイボールで流し込む。
(食べたら余計に腹が減って来た。丼ものも頼むか)
男がうにイクラ丼を頼むと、隣に座っている客が男の御猪口に日本酒をつぐ。
「ささっ、親父殿。海鮮ものには日本酒が合うと聞くぞ?」
「んん? あぁ、そうですね」
いつからこんな客が隣に座っていただろうか。整った顔立ちの若い男で、紫の着物を羽織っている。
(俺はまだ親父と呼ばれるような年齢じゃないんだが)
男は訝しげに思うものの、勧められるままに御猪口に口を付け、ぐいっと飲み干す。
男は知らず知らずに相当な量の酒を飲んでしまっていた。紫の着物の男にさぁさぁと勧められたのだ。
ふら付く身体で風俗街へと向かう。ゴールデン街のアーチを睨み付け、交差点で信号待ちをしていると、後ろから勢い良く押し出され、車道へと飛び出してしまう。
「あれだけ飲めば痛みもなかろう」
そんな声を聞きつつ、男が最後に目にしたものは、大きなトラックが放つ眩いライト。
思わず目をギュッと瞑り、強い衝撃を感じて……。
享年二十九歳、童貞。
そこで終わるはずだった、しがない会社員の人生。
しかし、彼の意識は暗闇の中、不思議な温もりに包まれて確かに存在していた。
手も足も動かせず、声も出せない。ただ存在しているというだけの状態。
植物状態で病院のベッドに寝かされているのかとも考えたが、どうやら違うらしい。
(トラックに轢かれてからどれくらいの時間が経ったんだろう)
少しずつ手足が動くようになった。グルグルと何かが蠢くような音も感じるになった。そして時々、身体全体に響くかのように女性の声が聞こえる。
(これってもしかして、俺を呼ぶ女神様の声なのでは!?
って事は、トラックに轢かれて死んだのか……?)
バタバタと手足を動かし、ここにいるぞとアピールする。
響く女性の声と、とても遠くにいるように聞こえる、くぐもった男性らしき声。
しかしすぐに何かが起こる事はなく、それからかなりの時間が経った。
寝て起きて寝て起きて声が響いて寝て。食事も排泄もする事なく、ただ温かい何かに包まれて、生きてる。
楽しくはないが辛い事もない。働く必要もなく、結婚は子供はと急かされる事もない。
(まぁいいか、もうしばらくこのままでも)
さらにどれだけの時間が経っただろうか。
(何か狭くなってね?)
身体を包む空間が固く、狭くなっているように感じる。上からぐっと押されるような圧と、呻くような女性の声。
なすすべなく身を任せ、何かに引っ掛かると頭の角度を変えてみたり、肩をすぼめてみたり。
そして突如感じる重力。
こうして、彼は長らく過ごした居心地の良い空間から押し出された。
ぼんやりと照らす光。
幼子の鳴き声。
複数の人間の話し声。浮遊感。
そして、肌と肌の温かい触れ合い。
「おめでとうございます、元気な男の子です!」
「やっと会えたわね、伊吹。私があなたのお母さんよ」
(……何ですと!?)
こうして再び生まれる事となった、今世では伊吹と名付けられた男。前世ではサブカルチャーに好んで触れていたので、自分の身に起こった事はある程度把握出来た。
(【悲報】俺氏、神様に会わず転生してしまう)
出産というものは母親の身体だけでなく、赤ん坊の身体にもそれなりに負担が掛かるようで、産まれた直後からの伊吹の意識はぼんやりとしていた。
気付けば病院ではないどこかで寝かされていた。まだよく見えない目、座っていない首。周りを見回す事は出来ないが、自分を覗き込む人物が複数いる事は分かる。
自分の母親が綺麗である事と、母方の祖母が同居しているらしき事。
自分が住んでいるのはそれなりに大きな屋敷である事。
メイドさんのような女性が二人いる事。
そして、小さな女の子も二人いる事。
メイドさん二人と女の子二人はそれぞれ親子であるらしき事。
どうやら二家族ともこの屋敷に住んでいるらしき事。
(どう考えても日本語だよなぁ)
聞こえて来る会話を理解出来る事から、異世界ではなさそうだと判断した。
仰向けに寝かされた目線の先、天井には明るさを調節出来るシーリングライトがあるので、電気を使用する文明がある事からも分かる。
かなり早い段階で丹田に溜まっているであろう魔力的なパワーを探るのは止めた。残念ながらこの世界にも魔法はない。
(【悲報】俺氏、同じ地球で生まれ変わる)
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!