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第三章:三ノ宮家と宮坂家
伊吹と美哉と橘香
提供された精液は、一回の射精分から数百に分割される。分割された精液の原液を溶液で薄めて容器に入れ、人工授精の際に女性の体内へと注入される。
詳細は国家機密とされており、どの国であっても公表されていない。
男性は週に一度の精液提供を努力義務として課されている。体調が優れない際は免除される事もあるが、提供を拒否したり私的に流用したりすると男性保護費の削減などの罰則を受ける事がある。
また、今回の伊吹にように必要数以上の提供がなされた場合、保護省より精液採取器一つにつき五十万円の謝礼が支払われる。
(まるで種馬だな)、
伊吹としてはそう思わざるを得ないが、そのお陰でこの国の人口は維持されているし、地球全体として見ても必要な事である。
娘がその手でその口で、自分から採取した精液をさも素晴らしい宝物のように語る京香を見ても、伊吹はそういうものだと受け入れるしかないのだ。
京香が保護省へ向かい、美子が部屋の事で藍子と相談があると出て行った。
伊吹が一人ソファーに座り、美哉と橘香は伊吹の後ろに立って控えている。
「みぃねぇ、きぃねぇ。こっち来て座りなよ」
「私達は侍女だから」
「伊吹様はご主人様だから」
朝の話し合いについては決着が付いていなかった。伊吹が冗談っぽく命令した内容については、精液採取で話が流されてしまったのだ。
「じゃあさ、せめて三人だけの時は今まで通りにしてくれない?
今さら僕がご主人様で、みぃねぇときぃねぇに偉そうに振る舞うなんて出来ないよ」
侍女としての教育課程を修了した美哉と橘香からすれば、今までがおかしかったのだと思っている。
伊吹の母親である咲弥の希望で、男女を意識せず幼馴染として育った三人。咲弥は美哉と橘香に、伊吹と男女や主従を越えた関係を築いてほしいと思っていたのだ。
しかし伊吹の祖母である心乃春は、最初から二人を優秀な侍女になるよう育てていた。
咲弥と心乃春の方針の相違が歪みを生み、今の二人を苦しめる。
(最初から侍女としてのみ育ててくれれば、こんなに苦しい想いをする必要はなかったのに……。
でも、もしそうだったとしたら、今自分に向けられているいっちゃんからの愛情は、同じように自分の心を満たしてくれただろうか)
美哉は伊吹の真剣な眼差しを受けて、小さく息を吐く。
「……分かった」
「美哉!?」
「三人の時だけ。
それと呼び方、もう私達をみぃねぇきぃねぇと呼ぶのはダメ。
美哉と橘香。これだけは外せない」
美哉が橘香に目線をやると、戸惑っていた橘香も小さく頷いて見せた。
そんな二人の目線でのやり取りを確認した後、伊吹が答える。
「うん、分かった。じゃあそうしよう。
橘香も、それで良い?」
「……分かった」
呼び捨てにされた橘香の口角が、ほんの少しだけ上がる。
「じゃあ座って。おばあ様の話がしたいんだ。
ちゃんとお別れ出来てないから、三人でお別れ会をしたい」
美哉が少し拗ねたような表情を見せて、伊吹の隣に座る。
「ちゃんと私の名前も呼んで」
「ははっ、そうだね。
ごめん、美哉。
……、まだちょっと照れ臭いな」
三人は手を取り合って、心乃春の思い出を語り合った。
詳細は国家機密とされており、どの国であっても公表されていない。
男性は週に一度の精液提供を努力義務として課されている。体調が優れない際は免除される事もあるが、提供を拒否したり私的に流用したりすると男性保護費の削減などの罰則を受ける事がある。
また、今回の伊吹にように必要数以上の提供がなされた場合、保護省より精液採取器一つにつき五十万円の謝礼が支払われる。
(まるで種馬だな)、
伊吹としてはそう思わざるを得ないが、そのお陰でこの国の人口は維持されているし、地球全体として見ても必要な事である。
娘がその手でその口で、自分から採取した精液をさも素晴らしい宝物のように語る京香を見ても、伊吹はそういうものだと受け入れるしかないのだ。
京香が保護省へ向かい、美子が部屋の事で藍子と相談があると出て行った。
伊吹が一人ソファーに座り、美哉と橘香は伊吹の後ろに立って控えている。
「みぃねぇ、きぃねぇ。こっち来て座りなよ」
「私達は侍女だから」
「伊吹様はご主人様だから」
朝の話し合いについては決着が付いていなかった。伊吹が冗談っぽく命令した内容については、精液採取で話が流されてしまったのだ。
「じゃあさ、せめて三人だけの時は今まで通りにしてくれない?
今さら僕がご主人様で、みぃねぇときぃねぇに偉そうに振る舞うなんて出来ないよ」
侍女としての教育課程を修了した美哉と橘香からすれば、今までがおかしかったのだと思っている。
伊吹の母親である咲弥の希望で、男女を意識せず幼馴染として育った三人。咲弥は美哉と橘香に、伊吹と男女や主従を越えた関係を築いてほしいと思っていたのだ。
しかし伊吹の祖母である心乃春は、最初から二人を優秀な侍女になるよう育てていた。
咲弥と心乃春の方針の相違が歪みを生み、今の二人を苦しめる。
(最初から侍女としてのみ育ててくれれば、こんなに苦しい想いをする必要はなかったのに……。
でも、もしそうだったとしたら、今自分に向けられているいっちゃんからの愛情は、同じように自分の心を満たしてくれただろうか)
美哉は伊吹の真剣な眼差しを受けて、小さく息を吐く。
「……分かった」
「美哉!?」
「三人の時だけ。
それと呼び方、もう私達をみぃねぇきぃねぇと呼ぶのはダメ。
美哉と橘香。これだけは外せない」
美哉が橘香に目線をやると、戸惑っていた橘香も小さく頷いて見せた。
そんな二人の目線でのやり取りを確認した後、伊吹が答える。
「うん、分かった。じゃあそうしよう。
橘香も、それで良い?」
「……分かった」
呼び捨てにされた橘香の口角が、ほんの少しだけ上がる。
「じゃあ座って。おばあ様の話がしたいんだ。
ちゃんとお別れ出来てないから、三人でお別れ会をしたい」
美哉が少し拗ねたような表情を見せて、伊吹の隣に座る。
「ちゃんと私の名前も呼んで」
「ははっ、そうだね。
ごめん、美哉。
……、まだちょっと照れ臭いな」
三人は手を取り合って、心乃春の思い出を語り合った。
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