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第四章:Vtunerデビューの準備
敵情視察
美子が食器を下げ、台所へ向かった。
美哉と橘香が国立侍女育成専門学校を卒業し、初任者研修も終えた今、二人を常に伊吹のそばに控えさえ、美子と京香は主に家事や裏方作業などに回ろうという方針を決めている。
それが伊吹の為であり、娘達の為でもあると二人は判断している。伊吹に仕える侍女としての気持ちと、三人の子供を持つ母親としての気持ち。どちらを取っても結局はそう変わらない。
事務所にあるテレビを付けて、YourTunesアプリを選択する。伊吹は午前中に発覚した、自分がこの世界のYourTunes事情に詳しくない事を反省し、少しでも情報収集しようと考えた。
「あ、この人って元一期生の人じゃない?」
先ほど燈子のスマートフォンで見た伊地藤玲夢が生配信中であるらしい。
敵情視察だ、と彼女のチャンネルを選択して生配信を覗く。
『マジほんとあり得ないと思わん!? 不良品掴まされたとか最悪だわマジでほんと』
何やら怒っている様子。アバターの動きが先ほど燈子に見せられたものよりもぎこちなく、時々コマ送りのような動きをしている。
『収益は搾取するは機材は不良品だわ、マジほんと使えない女だわ』
どうやら藍子の悪口を言っているようだ。
視聴者の同時接続者数は三千人。昼間の生配信である事を考えると、決して少ないとは言えないが、多いとも言えない。
伊吹はリモコンを操作してコメント欄を表示するよう設定し、視聴者の反応を確認する。
≪怒ってるのは分かるけど配信中に言うべき事じゃないな≫
≪業者に連絡して調整してもらうべき≫
≪あの日かな???≫
意外にも玲夢に同調するようなコメントは見受けられない。配信主が怒っている分、逆に客観的な見方をしているのかも知れない。
『業者に連絡? 連絡先知らないしあの女に言って呼ばせるわ。
ってか配信見たら私の機材が壊れてる事くらい察するべきじゃね? そっちから大丈夫ですかって連絡寄越すべきよ。
ったくマジ無能』
伊吹はさすがに黙って見ていられなくなった。
「こいつ何なの? 藍子さんから機材とアバター強奪するだけじゃなく、配信者としてもクズじゃない?
これクズキャラとしてやってるんじゃなくてただのクズでしょ」
伊吹の言葉に美哉が同調する。
「詳しくないけど、あまり応援しようとは思わない」
「よしよし、怒らない怒らない」
「あっ! 橘香だけずるい!」
怒りを露わにする伊吹を宥めるべく、橘香が頭を優しく撫でる。そして橘香に対抗して美哉が伊吹を抱き寄せて胸元へ押し付ける。
(幸せはここにあったのか……)
伊吹が美哉と橘香とイチャイチャしていると、視聴者から伊地藤玲夢へと投げ銭が送られた。
投げ銭とは、視聴者が配信者へと金銭を送るシステムだ。
≪500円:機材修理代≫
『あらぁ~、投げ銭ありがとう♡
でも支払いはあの女にさせるね。こっちは被害者だし。
不良品寄越すような無能には金出すしか出来んのよマジほんと。あいつ良いとこのお嬢様だから金だけはあるしね。
そもそも五百円で足りないし!最新機器なんだからさぁwww』
「あー、こいつ早めに潰そう。見ててイライラする。
こんな奴が独立? 経営? やって行ける訳なくね?」
伊吹の怒りに同調するかのように、視聴同時接続数が二千三百人まで減少する。
美哉と橘香が伊吹の頬っぺたをぷにぷにしたり、手を取って太ももへ導いたり、何とか気を紛らわせようとしていると、伊吹用にと用意されたインカムが反応する。
美哉がハンズフリーに設定して通話状態へ移行させ、橘香がテレビ画面を消した。
「はい、こちら伊吹」
『あーっと、こちら燈子。敵本拠地へ到着、どうぞ』
伊吹は燈子が割と冗談を好む性格であると判断し、伊吹も冗談で返す事にした。
「了解。速やかに侵入せよ。極力殺すな」
『くくくっ、了解。
以後こちらからの呼びかけはないものとする。何かあればそちらから指示をくれ。以上』
『とこちゃん、何言ってんの?』
向こうのインカムは燈子がイヤホンに繋いでやり取りしているので、藍子にこちらの声は聞こえていない。
燈子とのやり取りで少し怒りが落ち着いた伊吹は、美哉の胸元で深呼吸をする。再び落ち着きがなくなる伊吹。
「はいはい、後でね」
「お母さんにもう一回提出に行ってもらわなきゃ」
「え、精液採取器に出す前提なの?」
『え、ナニなに何の話?』
『こちらからの呼びかけはないんじゃなかったの?』
美哉と橘香が国立侍女育成専門学校を卒業し、初任者研修も終えた今、二人を常に伊吹のそばに控えさえ、美子と京香は主に家事や裏方作業などに回ろうという方針を決めている。
それが伊吹の為であり、娘達の為でもあると二人は判断している。伊吹に仕える侍女としての気持ちと、三人の子供を持つ母親としての気持ち。どちらを取っても結局はそう変わらない。
事務所にあるテレビを付けて、YourTunesアプリを選択する。伊吹は午前中に発覚した、自分がこの世界のYourTunes事情に詳しくない事を反省し、少しでも情報収集しようと考えた。
「あ、この人って元一期生の人じゃない?」
先ほど燈子のスマートフォンで見た伊地藤玲夢が生配信中であるらしい。
敵情視察だ、と彼女のチャンネルを選択して生配信を覗く。
『マジほんとあり得ないと思わん!? 不良品掴まされたとか最悪だわマジでほんと』
何やら怒っている様子。アバターの動きが先ほど燈子に見せられたものよりもぎこちなく、時々コマ送りのような動きをしている。
『収益は搾取するは機材は不良品だわ、マジほんと使えない女だわ』
どうやら藍子の悪口を言っているようだ。
視聴者の同時接続者数は三千人。昼間の生配信である事を考えると、決して少ないとは言えないが、多いとも言えない。
伊吹はリモコンを操作してコメント欄を表示するよう設定し、視聴者の反応を確認する。
≪怒ってるのは分かるけど配信中に言うべき事じゃないな≫
≪業者に連絡して調整してもらうべき≫
≪あの日かな???≫
意外にも玲夢に同調するようなコメントは見受けられない。配信主が怒っている分、逆に客観的な見方をしているのかも知れない。
『業者に連絡? 連絡先知らないしあの女に言って呼ばせるわ。
ってか配信見たら私の機材が壊れてる事くらい察するべきじゃね? そっちから大丈夫ですかって連絡寄越すべきよ。
ったくマジ無能』
伊吹はさすがに黙って見ていられなくなった。
「こいつ何なの? 藍子さんから機材とアバター強奪するだけじゃなく、配信者としてもクズじゃない?
これクズキャラとしてやってるんじゃなくてただのクズでしょ」
伊吹の言葉に美哉が同調する。
「詳しくないけど、あまり応援しようとは思わない」
「よしよし、怒らない怒らない」
「あっ! 橘香だけずるい!」
怒りを露わにする伊吹を宥めるべく、橘香が頭を優しく撫でる。そして橘香に対抗して美哉が伊吹を抱き寄せて胸元へ押し付ける。
(幸せはここにあったのか……)
伊吹が美哉と橘香とイチャイチャしていると、視聴者から伊地藤玲夢へと投げ銭が送られた。
投げ銭とは、視聴者が配信者へと金銭を送るシステムだ。
≪500円:機材修理代≫
『あらぁ~、投げ銭ありがとう♡
でも支払いはあの女にさせるね。こっちは被害者だし。
不良品寄越すような無能には金出すしか出来んのよマジほんと。あいつ良いとこのお嬢様だから金だけはあるしね。
そもそも五百円で足りないし!最新機器なんだからさぁwww』
「あー、こいつ早めに潰そう。見ててイライラする。
こんな奴が独立? 経営? やって行ける訳なくね?」
伊吹の怒りに同調するかのように、視聴同時接続数が二千三百人まで減少する。
美哉と橘香が伊吹の頬っぺたをぷにぷにしたり、手を取って太ももへ導いたり、何とか気を紛らわせようとしていると、伊吹用にと用意されたインカムが反応する。
美哉がハンズフリーに設定して通話状態へ移行させ、橘香がテレビ画面を消した。
「はい、こちら伊吹」
『あーっと、こちら燈子。敵本拠地へ到着、どうぞ』
伊吹は燈子が割と冗談を好む性格であると判断し、伊吹も冗談で返す事にした。
「了解。速やかに侵入せよ。極力殺すな」
『くくくっ、了解。
以後こちらからの呼びかけはないものとする。何かあればそちらから指示をくれ。以上』
『とこちゃん、何言ってんの?』
向こうのインカムは燈子がイヤホンに繋いでやり取りしているので、藍子にこちらの声は聞こえていない。
燈子とのやり取りで少し怒りが落ち着いた伊吹は、美哉の胸元で深呼吸をする。再び落ち着きがなくなる伊吹。
「はいはい、後でね」
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