転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第四章:Vtunerデビューの準備

本家と分家

 伊吹いぶき多恵子たえこ達の会社から藍子あいこ燈子とうこが戻って来るまで、引き続き事務所内でYourTunesユアチューンズで情報収集をする事にした。

「元一期生以外のVtunerブイチューナーはあんまり見掛けないな。
 美哉みや橘香きっかは好きな配信者とかいる?」

「いないし興味ない」
YourTunesユアチューンズなんて見てる時間があったらいっちゃんに電話するもの」

「ふふっ、そっか」

 そこへ、別のフロアにいた福乃ふくのが訪ねて来た。ノックの音がした時点で、美哉も橘香も立ち上がり、伊吹の後ろへと移動している。

「失礼するよ。これを渡しておこうと思ってね」

 福乃が伊吹の対面のソファーへと掛けて、懐から何かを取り出して伊吹へと差し出す。

「それは、カードキーですか?」

 伊吹がカードキーに手を伸ばす前に、橘香によって受け取られた。基本的に伊吹自らが鍵を施錠・開錠する機会などないからだ。

「このビルに入る為のカードキーだよ。
 玄関には駅の自動改札みたいな出入り口を設置して、防犯カメラも取り付けた。各フロアのエレベーター前には警備員が立ってるから不審者が入る事は出来ないよ」

「いつの間に……」

 ビルの入り口やフロアの廊下などで防犯カメラの取り付け等が完了したからこそ、小杉が多恵子達がこのビルへと入っても問題ないと判断したのだ。

「こういうのは早い方がいいのさ。代金は身内価格にしとくよ」

 福乃がわざとらしく右手で輪っかを作り、伊吹へと見せてくる。伊吹はそれを、福乃なりの気遣いだろうと受け取って、笑顔を見せる。
 そして、福乃に先ほどの多恵子達の事を伝えておくべきだと思い、報告する。

「あ、ママさん。じゃなくて福乃さん。早ければ明日くらいに、このビルに外部から四人招く事になると思います。
 お手数をお掛けしますが……」

「はいよ、詳しくは藍子から聞いとく。
 それじゃあ私はこれで失礼するよ。まだまだやらなきゃならない事がたくさんあるからねぇ」

 ヒラヒラと手を振って、事務所を出て行く福乃。
 このビルの近所にある喫茶店のママさんであり、宮坂家みやさかけで一定の立場にある女性、宮坂みやさか福乃ふくの
 昨日今日のやり取りの中で、伊吹は福乃が藍子と燈子の実家である宮坂家の家中でも、割と重要な位置にいる人物なのだろうと予測している。

 宮坂家は近代になって財を成した家であり、金融機関や警備会社や不動産会社など数多くの傘下企業を抱える財閥である。
 屋敷で生活していただけの伊吹でも、宮坂財閥系の企業には常々世話になっていた。
 そんな上流階級に位置する家系が、実は自分が生まれた家の分家にあたると聞いたのは今朝の事だ。

 そもそも伊吹は、自分の実家である三ノ宮家さんのみやけの事すら詳しく知らない。
 母親である咲弥さくやと祖母である心乃春このはは何故、あんな田舎の山奥に住んでいたのかも聞かされていない。
 自ら好き好んであそこに住んでいたのか、それとも事情があって隠れ住んでいたのか。
 そして、咲弥を愛し、伊吹が生まれてくるのを望んでいたという伊吹の父親についても。

 美子よしこ京香きょうかはある程度知っているだろうから、近い内に話を聞く必要があるなと伊吹は思った。
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