転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第六章:続、Vtunerデビューの準備

秘密保持契約書

 智枝ともえ伊吹いぶきの指示通り、美子よしこ京香きょうかへ伊吹についてのあらゆる事を質問し、メモ帳へ書き留めている。
 智枝の年齢は二十五歳と二人よりもだいぶ年下である。執事だから自分の方が立場が上、というような様子ではない事に、伊吹は安心する。

 伊吹の後ろに控えている美哉みや橘香きっかからすれば、智枝は年上となるが、同じ職場を共にする仲間として、仲良くやってくれればと伊吹は思っている。

 伊吹が智枝と侍女達のやり取りを眺めていると、藍子あいこ燈子とうこが事務所に戻って来た。
 伊吹が智枝を自分の執事であると紹介した後、引っ越して来た多恵子たえこ達について話し合う。

「四人分の関係者証を作って、先ほどビルに到着されました。複合機などの大きな荷物に関しては業者に頼んでいるそうなので、その事についても警備の人達に伝えてあります。
 明日にはアバター作成が始められるはずだと仰っていました」

 実際の引っ越しは今日で完了となるが、午前中に藍子が弁護士と税理士に依頼して来た株や登記関係についてはもう少し時間が掛かる。

「あ、忘れてた。秘密保持契約書を作らないと」

「あ、本当ですね! 弁護士さんに作ってもらえば良かった……」

 藍子が気付かなかった事を悔やんでいると、智枝が伊吹に声を掛けて来た。

「すみません。今のお話をお聞きしていたのですが、秘密保持契約書が必要なんですか?」

「そうなんだ。今日このビルに引っ越してきた四人なんだけど、僕が演じる男性Vtunerブイチューナーのアバターを作ってもらうんだ。
 男性Vtunerって世界発だと思うから、実際にデビューするまで口外しないよう書面にしておきたいんだ。
 えっと、智枝はVtunerって分かる?」

「はい、ある程度は分かります。
 秘密保持契約書であれば、私でも作成が可能かと思います。
 藍子様、パソコンをお借りしてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、こちらをお使い下さい」

 藍子から事務所に置いてあるデスクトップパソコンを借りて、智枝が素早く書類を作成する。四人分の原本と控え、計八枚分を印刷し、智枝が藍子へ手渡した。

「ご確認下さい」

 藍子が秘密保持契約書の内容を素早く確認する。
 契約内容としては、何を秘密とするのか。
 その秘密を開示してはならない場合と、裁判者等の公的機関からの要請があった場合については開示を避けられない場合。
 業務上の秘密の共有と、目的以外での共有の禁止。
 秘密が漏洩した際に行う措置。
 それに伴う損害賠償請求。
 そして契約期間と、申し出がない限り自動更新がされる事。

 などの内容が織り込まれている。

「ありがとうございます。あっと言う間にこんなに本格的な内容で作れてしまうんですね。
 さっそく先方にこの書類を見せて、署名してもらいます。
 助かりました!」

「いえ、これが私の仕事ですので」

 藍子に対して軽く頭を下げつつ、智枝がちらりと自分の方へ視線を向けたのが伊吹には分かった。

「助かるよ、智枝」

「いえ、私に何なりとお申し付け下さい」

 またも満面の笑みで頭を下げる智枝を見て、伊吹は褒められて喜ぶ犬を思い出した。
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