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第七章:安藤さん家の四兄弟チャンネル始動
落ちぶれ配信
『何が並行世界よ、意味分かんないのよ!
だいたい中身が男ってだけじゃない、他に注目される理由なんかないんでしょ!
あーーー腹が立つ!!』
事務所で一人、藍子が悲しそうな表情でスマートフォンの画面を眺めている。
『電話には出ないし、事務所へは近付けない!
私にどうしろって言うのよ、機材の故障でアバターが動かないじゃない!
こんな配信誰が見るってのよ!!』
バンバンと机を叩くような音が響くが、女性の姿をしたアバターは微動だにしない。
『修理する業者の連絡先も分からない、何て言う会社かも知らない。
何でちゃんと教えておかないの、使えないわねホント!!』
怒鳴り散らしている配信者の名前は、伊地藤玲夢。
VividColorsから独立と称し、配信に関わる機材全てを奪い取っただけでなく、他の所属配信者を拐かして離反させて藍子を嘲笑った女である。
『社長だけじゃない、みんなと連絡が取れない。
私が言い出した訳じゃないのに、いつの間にか全てを私のせいにされてる。
いつの間にかゆめきかくの所属配信者は私だけになっちゃった。何でこうなったんだろう……。
社長から連絡もらった時は、ただ単純に自分が認められた気になって、嬉しかったのになぁ……』
「玲夢ちゃん……」
(私が声を掛けなければ、彼女はここまで追い詰められる事はなかったのかなぁ……)
藍子が玲夢に声を掛けなければ、そもそも玲夢に裏切られる事もなかった、という考え方も出来なくはない。
『同接二百人。落ちぶれた私を見に来る人と、監視する人だけ』
配信コメント欄には≪監視中≫や≪自業自得≫、≪落ちぶれた配信者を見ながら飲む酒はおいしいです≫など、見るに堪えない内容になっている。
「あーちゃん、いるー?」
慌ててスマートフォンの画面を消そうとした藍子だったが、間違って音量を上げるボタンを押してしまい、伊吹に玲夢の配信を見ていた事がバレてしまう。
『VividColorsに所属した当時は楽しかったなぁ。どこで間違えたんだろ……』
「ん? 伊地藤玲夢の配信見てたの?」
藍子は観念し、伊吹に時々玲夢の配信を見ていた事を打ち明ける。
「どうしても気になってしまって。
よくよく考えると、彼女が単独であんな事をするなんて考えにくいなって。
きっと、誰かに誑かされて、矢面に立たされてしまったんじゃないかって思えて来て。
今の配信を見てみたら、やっぱりそのような事を言ってて。
ゆめきかくに残ってるの、今は玲夢ちゃん一人だけみたいなの。
他の子達は今は別の事務所に所属しているみたいで……」
VividColorsの社長としては毅然な態度を取っていた藍子だが、一人の人間としてはやはり、玲夢を見捨てる事が出来ないでいる。
「でも、カメラとかの機材を送った住所とかで家は分かるんじゃない?」
「うん、それはそうなんだけど……」
裏切られた者の中には、裏切られたこちらにも原因があるのではないか、という後ろめたさを抱え、相手に対して百パーセントの怒りをぶつけられない者もいる。
藍子は会社を立ち上げた忙しさで周りが見れておらず、皆としっかり意思疎通が出来ていなかった事に罪悪感を抱いてしまった。
自分がもっとしっかりしていれば、彼女達が裏切るような行動を起こさせる事はなかったのではないか、と。
「それは違うと思うよ。感情的な問題よりもまず、機材を持って出ていかれた事を考えないと。
所有権は会社にあるし、資産台帳にも記載されてる。納品先が個人の住所だっただけで、送り先の物になる訳じゃないんだから。
しっかり裁判したらこちらが負ける事はないよ。それは知り合いの弁護士にも相談済みでしょ?」
「ええ、そうなんだけど、どうしても自分が悪いじゃないかって考えてしまって、行動に移せなくて。
弁護士の先生にも、毅然とした態度を取るべきだと言われてはいるんだけど、ね……」
「ちゃんとこちらの物を返してもらって、その後謝罪があれば許す。
なければどうするか、そういう方向に考えないと。
いつまでも背負う必要のない罪悪感に囚われたままじゃ、僕が困るんですよ?
藍子社長、ビジネスはビジネスです。切り替えて下さい」
株主であり副社長であり、そして稼ぎ頭である伊吹に言われてしまうと、何も言い返せなくなってしまう藍子。
切り替えろ、と言われて切り替えられるくらいなら、最初からぐじぐじ考えたりはしないものだ。
「はぁ……、じゃあさ、最後にチャンスを作ってあげる?
こっちから呼びかけてみたら反応があるかも。その反応が良いものか、悪いものかで今後の対応を考えてみよう。
それでどう?」
「伊吹さん……。
分かった、せっかく安藤家の配信が順調なのに、つまらない事で躓きたくないよ」
「よし、じゃあこういうのはどう?」
それからしばらくの間、伊吹と藍子は伊地藤玲夢への対応方法について話し合った。
だいたい中身が男ってだけじゃない、他に注目される理由なんかないんでしょ!
あーーー腹が立つ!!』
事務所で一人、藍子が悲しそうな表情でスマートフォンの画面を眺めている。
『電話には出ないし、事務所へは近付けない!
私にどうしろって言うのよ、機材の故障でアバターが動かないじゃない!
こんな配信誰が見るってのよ!!』
バンバンと机を叩くような音が響くが、女性の姿をしたアバターは微動だにしない。
『修理する業者の連絡先も分からない、何て言う会社かも知らない。
何でちゃんと教えておかないの、使えないわねホント!!』
怒鳴り散らしている配信者の名前は、伊地藤玲夢。
VividColorsから独立と称し、配信に関わる機材全てを奪い取っただけでなく、他の所属配信者を拐かして離反させて藍子を嘲笑った女である。
『社長だけじゃない、みんなと連絡が取れない。
私が言い出した訳じゃないのに、いつの間にか全てを私のせいにされてる。
いつの間にかゆめきかくの所属配信者は私だけになっちゃった。何でこうなったんだろう……。
社長から連絡もらった時は、ただ単純に自分が認められた気になって、嬉しかったのになぁ……』
「玲夢ちゃん……」
(私が声を掛けなければ、彼女はここまで追い詰められる事はなかったのかなぁ……)
藍子が玲夢に声を掛けなければ、そもそも玲夢に裏切られる事もなかった、という考え方も出来なくはない。
『同接二百人。落ちぶれた私を見に来る人と、監視する人だけ』
配信コメント欄には≪監視中≫や≪自業自得≫、≪落ちぶれた配信者を見ながら飲む酒はおいしいです≫など、見るに堪えない内容になっている。
「あーちゃん、いるー?」
慌ててスマートフォンの画面を消そうとした藍子だったが、間違って音量を上げるボタンを押してしまい、伊吹に玲夢の配信を見ていた事がバレてしまう。
『VividColorsに所属した当時は楽しかったなぁ。どこで間違えたんだろ……』
「ん? 伊地藤玲夢の配信見てたの?」
藍子は観念し、伊吹に時々玲夢の配信を見ていた事を打ち明ける。
「どうしても気になってしまって。
よくよく考えると、彼女が単独であんな事をするなんて考えにくいなって。
きっと、誰かに誑かされて、矢面に立たされてしまったんじゃないかって思えて来て。
今の配信を見てみたら、やっぱりそのような事を言ってて。
ゆめきかくに残ってるの、今は玲夢ちゃん一人だけみたいなの。
他の子達は今は別の事務所に所属しているみたいで……」
VividColorsの社長としては毅然な態度を取っていた藍子だが、一人の人間としてはやはり、玲夢を見捨てる事が出来ないでいる。
「でも、カメラとかの機材を送った住所とかで家は分かるんじゃない?」
「うん、それはそうなんだけど……」
裏切られた者の中には、裏切られたこちらにも原因があるのではないか、という後ろめたさを抱え、相手に対して百パーセントの怒りをぶつけられない者もいる。
藍子は会社を立ち上げた忙しさで周りが見れておらず、皆としっかり意思疎通が出来ていなかった事に罪悪感を抱いてしまった。
自分がもっとしっかりしていれば、彼女達が裏切るような行動を起こさせる事はなかったのではないか、と。
「それは違うと思うよ。感情的な問題よりもまず、機材を持って出ていかれた事を考えないと。
所有権は会社にあるし、資産台帳にも記載されてる。納品先が個人の住所だっただけで、送り先の物になる訳じゃないんだから。
しっかり裁判したらこちらが負ける事はないよ。それは知り合いの弁護士にも相談済みでしょ?」
「ええ、そうなんだけど、どうしても自分が悪いじゃないかって考えてしまって、行動に移せなくて。
弁護士の先生にも、毅然とした態度を取るべきだと言われてはいるんだけど、ね……」
「ちゃんとこちらの物を返してもらって、その後謝罪があれば許す。
なければどうするか、そういう方向に考えないと。
いつまでも背負う必要のない罪悪感に囚われたままじゃ、僕が困るんですよ?
藍子社長、ビジネスはビジネスです。切り替えて下さい」
株主であり副社長であり、そして稼ぎ頭である伊吹に言われてしまうと、何も言い返せなくなってしまう藍子。
切り替えろ、と言われて切り替えられるくらいなら、最初からぐじぐじ考えたりはしないものだ。
「はぁ……、じゃあさ、最後にチャンスを作ってあげる?
こっちから呼びかけてみたら反応があるかも。その反応が良いものか、悪いものかで今後の対応を考えてみよう。
それでどう?」
「伊吹さん……。
分かった、せっかく安藤家の配信が順調なのに、つまらない事で躓きたくないよ」
「よし、じゃあこういうのはどう?」
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