転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第七章:安藤さん家の四兄弟チャンネル始動

十二人の慌てる女達

「つまり、着物の艶やかさをより強調するようにして、時々キラリと光る特殊効果を付けたいという事ですね?」

『ええ、それと指の動きをもう少し複雑に出来ますか? 五本の指をそれぞれ独立して動かせるように』

 燈子とうこがVCスタジオを訪れ、多恵子たえこが用意したパソコンで伊吹いぶきへとチャットを繋いで打ち合わせを行う。
 多恵子のパソコンの画面共有をし、伊吹はそれを見た上で今後の方針を音声のみで伝える。この形式がアバター開発の打ち合わせの風景として定着している。

「指をそれぞれ独立して動かせるというと、例えばジャンケンのチョキのような形でしょうか?」

 多恵子も音声チャットで伊吹と会話する事に、やや慣れて来た。最初の頃は声を聞くだけで全身が茹で上がるような興奮を覚えていたが、今は伊吹の一言一句を聞き逃すまいとしている。

『そうです、目にチョキを添える形が出来るようにしたいんですよ』

「目にチョキを添える……?」

 聞き逃すまいとしてはいるが、多恵子は目にチョキを添える、という伊吹の言葉を想像する事が出来なかった。

『うーん、モニター越しの会話では限界があるな。ちょっとそっちに行きますね』

「……はぁ!?」

『チャット切りますね』

 神、襲来。

 伊吹の指示に耳を傾けていた十二人全員に鳥肌が立った。今から神が、降臨なされる。
 多恵子はフロア内を見回し、あまりの惨状に頭を抱える。泊まり込み用の寝袋や段ボールが散乱し、デスクの上には食べ終わったカップ麺の空容器や栄養ドリンクの空き瓶が転がっている。

 二階の別フロアにはシャワールームはあるが、神の使徒たる彼女らはシャワーを浴びる時間があれば作業をする。決して開発スケジュールが押している訳ではなく、神の要望に応えるべく自主的にそうしているのだ。

「どどどどうしよう、絶対臭いでしょ私の髪の毛!」
「知らん、鼻はとうに麻痺している……」
「いつから着替えてなかったっけ!?」
「今日の下着灰色なんだが!?」
「バカな事言ってないで片付けるの手伝うでございますことよ!!」

 バタバタと右往左往している彼女達だったが、そんな彼女達に救いの手が差し伸べられる。伊吹の侍女を名乗る女性十名が駆け付けたのだ。

 伊吹がエレベーターに乗ろうとしたところ、別の階へ行く事を想定していなかった宮坂警備保障に止められてしまい、危機管理想定の見直しをする為に一時間の余裕が生まれた。

「……掃除や片付けはこちらで行いますので、貴女方は私達に触られて困るものを優先して整理整頓をして下さい。
 あと、着替えるのであれば今のうちに」

「すみませんすみませんすみません!!」

 侍女服を着ていなければどこぞのご婦人でも通るような美人、美子よしこに無表情で話し掛けられ、恐縮してしまう多恵子。参考書や伊吹からの要望を纏めた資料をデスクにしまい、すぐに更衣室へ走る。

 元の会社では突発的な打ち合わせや催し参加の為に、ロッカーにスーツを入れっぱなしにしていた。
 今もクリーニング後の袋に入ったままロッカーに吊しており、とりあえずそれに着替えれば何とかなるだろうと判断した。

「私臭い? ねぇ私臭う!?」

「うるさいさっさとシャワー浴びてこい!!」

 着替える者、シャワールームへ掛けていく者、化粧をする者。
 多恵子を含む十二人は、神と対面する緊張感と高揚感でギャーギャーとうるさく身支度を整える。

「お急ぎ下さい、そろそろ予定の時間になります」

 更衣室からVCスタジオの入っているフロアへ戻ると、散らかっていた室内がすっかりと綺麗にされており、窓も開け放たれて換気されていた。
 窓の近くには警備員のような女性達が立ち、外を警戒しているように見える。

「エレベーター到着しました、間もなくお見えになります」
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