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第九章:事業拡大
手紙
真っ赤な顔をさらに真っ赤にして慌てる藍子を放置し、伊吹は智枝へと向き直る。
「やっぱり直接会って話さないと伝えられないよ。僕は理論で音楽を語れないし、脳内で流れてるメロディを人に伝える才能もない。
ってか、才能があるなら一人で全部やってるしね」
「直接お会いになるのは控えて頂きたいですが……」
智枝が難色を示すが、紫乃は何とか安全に面会出来る場を設けられないか思案する。
「例えば、レコード会社が持っているレコーディングスタジオに行って、録音ブースの中に待機してもらっている演奏者に対してマイク越しに指示を出す、とかはどうですか?」
紫乃が担当する分野の中に宮坂財閥系列のレコード会社も含まれている為、何とか伊吹の思い描く通りの楽曲を完成させたいと思っている。
「指示を出すだけならスタジオまで行く必要ないと思います。
演奏者と音声通話を繋いで出来ないですか?」
琥珀の問い掛けに、伊吹は首を傾げる。
「やってみないと分からないけど、どうかな。僕がこうしろああしろと指示を出すんじゃなくて、僕の記憶にある演奏に似てる、似てないしか判断出来ないんだよ。
似てる、さらに近付いた、良い感じ、っていうバカみたいな表現しか出来ないよ。
そんな事しか言えないのに、音声通話越しに偉そうに指示なんて恥ずかしくて出せないなぁ」
そのまま、あーだこうだと議論にならない議論を続けていると、藍子が段ボールを抱えて戻って来た。
「先ほど伊吹さん宛てに荷物が届いたと、警備の方から受け取ったの。
危険物が入ってないかしっかり検査済みだって」
段ボールの封が開いていないのを見て、伊吹はX線検査をしたのかと内心驚く。
伊吹はこのビルに来てから一度も外へ出ていないので、現在ビルの出入り口やビル周辺がどうなっているのか把握していない。
「念の為、私が開けましょう」
藍子から美子が段ボールを受け取り、オフィスの端っこへ移動して開封する。
段ボール内を目視で確認し、伊吹の前に中身を出していく。
「これは、ディスク? CD、じゃなくてDVDか」
中から取り出されて、テーブルへDVDが積まれていく。正確に言うと市販の書き込み可能なDVD-Rだ。
封筒が添えられており、美子が一読した後、伊吹へと手渡される。
「えーっと……。
世界の向こう側から来た君へ、私から君へのプレゼントだ。
自然に歌えば良い、愛こそ全てだと。
革命を起こせ、これがロックアンドロールミュージックだと。
明日は分からないが、昨日は確かにあった。
週に八日働く事になったとしても、助けを呼ばないように。
思うがままにやれ。男に納税義務はない。
月明かりの紳士より。
追伸、愛している」
伊吹はその手紙を読み終えた後、手紙を凝視したまま動かなくなってしまった。
「伊吹さん、どうしたの? 手紙の送り主に心当たりがあるの?」
固まっている伊吹を心配し、藍子が声を掛ける。よくよく見ると、手紙を持つ伊吹の手がブルブルと震えている。
藍子は美子に目をやるが、美子は小さく首を横へ振る。
しばらく伊吹の様子を皆が無言で見守っていると、ポツリと伊吹が声を発した。
「……僕以外にも並行世界の記憶を持っている人物がいた」
「え? お兄さん以外にも?」
「うん、僕以外にも転生者がいたんだ」
「やっぱり直接会って話さないと伝えられないよ。僕は理論で音楽を語れないし、脳内で流れてるメロディを人に伝える才能もない。
ってか、才能があるなら一人で全部やってるしね」
「直接お会いになるのは控えて頂きたいですが……」
智枝が難色を示すが、紫乃は何とか安全に面会出来る場を設けられないか思案する。
「例えば、レコード会社が持っているレコーディングスタジオに行って、録音ブースの中に待機してもらっている演奏者に対してマイク越しに指示を出す、とかはどうですか?」
紫乃が担当する分野の中に宮坂財閥系列のレコード会社も含まれている為、何とか伊吹の思い描く通りの楽曲を完成させたいと思っている。
「指示を出すだけならスタジオまで行く必要ないと思います。
演奏者と音声通話を繋いで出来ないですか?」
琥珀の問い掛けに、伊吹は首を傾げる。
「やってみないと分からないけど、どうかな。僕がこうしろああしろと指示を出すんじゃなくて、僕の記憶にある演奏に似てる、似てないしか判断出来ないんだよ。
似てる、さらに近付いた、良い感じ、っていうバカみたいな表現しか出来ないよ。
そんな事しか言えないのに、音声通話越しに偉そうに指示なんて恥ずかしくて出せないなぁ」
そのまま、あーだこうだと議論にならない議論を続けていると、藍子が段ボールを抱えて戻って来た。
「先ほど伊吹さん宛てに荷物が届いたと、警備の方から受け取ったの。
危険物が入ってないかしっかり検査済みだって」
段ボールの封が開いていないのを見て、伊吹はX線検査をしたのかと内心驚く。
伊吹はこのビルに来てから一度も外へ出ていないので、現在ビルの出入り口やビル周辺がどうなっているのか把握していない。
「念の為、私が開けましょう」
藍子から美子が段ボールを受け取り、オフィスの端っこへ移動して開封する。
段ボール内を目視で確認し、伊吹の前に中身を出していく。
「これは、ディスク? CD、じゃなくてDVDか」
中から取り出されて、テーブルへDVDが積まれていく。正確に言うと市販の書き込み可能なDVD-Rだ。
封筒が添えられており、美子が一読した後、伊吹へと手渡される。
「えーっと……。
世界の向こう側から来た君へ、私から君へのプレゼントだ。
自然に歌えば良い、愛こそ全てだと。
革命を起こせ、これがロックアンドロールミュージックだと。
明日は分からないが、昨日は確かにあった。
週に八日働く事になったとしても、助けを呼ばないように。
思うがままにやれ。男に納税義務はない。
月明かりの紳士より。
追伸、愛している」
伊吹はその手紙を読み終えた後、手紙を凝視したまま動かなくなってしまった。
「伊吹さん、どうしたの? 手紙の送り主に心当たりがあるの?」
固まっている伊吹を心配し、藍子が声を掛ける。よくよく見ると、手紙を持つ伊吹の手がブルブルと震えている。
藍子は美子に目をやるが、美子は小さく首を横へ振る。
しばらく伊吹の様子を皆が無言で見守っていると、ポツリと伊吹が声を発した。
「……僕以外にも並行世界の記憶を持っている人物がいた」
「え? お兄さん以外にも?」
「うん、僕以外にも転生者がいたんだ」
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