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第九章:事業拡大
デズモンドとモリー
しばらくDVDの映像を眺める時間が続いた。そのどれも、伊吹は画面に映る男性と共に歌ってみせた。
ずっと興奮状態だった伊吹は、智枝に少し休憩するからと動画の再生を中断させた。
「楽器演奏者や作曲家や編曲家をいっぱい集めて契約書でがちがちに縛って、DVDに入ってる曲全部を完成させて発表しよう。
このDVDにある楽曲専門のレコード会社を立ち上げてもいい。
でも英語だと皇国では受け入れられないかな? 歌詞は日本語に変えて、ってビートルズがやって来るヤァ! ヤァ! ヤァ! はダサ過ぎるだろ!」
伊吹の情緒がずっとおかしい。
皆は美子に目線を送るが、何故か美子は俯いて何かを考え込んでいる様子。
こういう場面で伊吹を諫める役割である美哉と橘香も寝込んでいるので、誰も止められない。
わずかな休憩を取った後、伊吹は智枝に動画の再生を再開させる。
「あー、この曲カラオケでよく歌ったなぁ。英語の授業で習ったもんなぁ。歌詞の意味も知らずに歌ってからかわれたの思い出すなぁ。
お、次はこれか。二人は結婚して幸せに暮らしました、って曲なんだよね。ここの部分に意味はないらしいんだけ、ど、さ……」
突然、伊吹の解説が止まる。そして、曲が終わりDVDを入れ替えようとする智枝に待ったを掛け、この曲を繰り返し再生するように伝え、そして黙って曲を聞き込む。
「……女性の声が入ってますね」
「あ、ホントだ。紫乃ねぇ、よく分かったね」
「この呪文みたいなとこだけですね」
呪文のような部分を歌う女性の声に気付いて以降、皆が口々に曲の感想を言い合うようになった。
「英語の歌詞、独特ですね。あまり意味が分からない曲が結構あります」
「イギリス英語とアメリカ英語でも全く違うものね」
この世界の英語と、伊吹が元いた世界の英語では、単語の持つ意味や発音などが違って意味が伝わらないという現象が発生している。
「この曲はどの国で作られたんでしょうか。男性は日本人のようですし、発音はお上手ですが特定は難しそうですね」
「いや、そもそもこの世界で作られた歌じゃないなら、特定するのは無理なんじゃないかな?
ねぇお兄さん。お兄さん?
……ん、水? じゃなくて、涙?
お兄さん、泣いてるの?」
伊吹に抱き締められたままの燈子の手に、伊吹の流した涙が落ちた。
皆に見つめられ、伊吹はようやく自分が泣いている事を自覚する。
「あれー、何で泣いてんだろ。おかしいなぁ。さっきから胸がちくちく痛むんだよねぇ。何か懐かしいような、温かいような、切ないような、さぁ……」
泣いている事は自覚したが、何故自分が泣いているのか分からない伊吹。周りを心配させない為に、あえて笑ってみせる。
「何だろうなぁ、この女の人の声さぁ、どっかで……」
首を捻って考えている伊吹の視界に、俯いている美子の顔が入り込む。そして、ようやく伊吹は思い当たった。
「そうか、お母様の声だ」
ずっと興奮状態だった伊吹は、智枝に少し休憩するからと動画の再生を中断させた。
「楽器演奏者や作曲家や編曲家をいっぱい集めて契約書でがちがちに縛って、DVDに入ってる曲全部を完成させて発表しよう。
このDVDにある楽曲専門のレコード会社を立ち上げてもいい。
でも英語だと皇国では受け入れられないかな? 歌詞は日本語に変えて、ってビートルズがやって来るヤァ! ヤァ! ヤァ! はダサ過ぎるだろ!」
伊吹の情緒がずっとおかしい。
皆は美子に目線を送るが、何故か美子は俯いて何かを考え込んでいる様子。
こういう場面で伊吹を諫める役割である美哉と橘香も寝込んでいるので、誰も止められない。
わずかな休憩を取った後、伊吹は智枝に動画の再生を再開させる。
「あー、この曲カラオケでよく歌ったなぁ。英語の授業で習ったもんなぁ。歌詞の意味も知らずに歌ってからかわれたの思い出すなぁ。
お、次はこれか。二人は結婚して幸せに暮らしました、って曲なんだよね。ここの部分に意味はないらしいんだけ、ど、さ……」
突然、伊吹の解説が止まる。そして、曲が終わりDVDを入れ替えようとする智枝に待ったを掛け、この曲を繰り返し再生するように伝え、そして黙って曲を聞き込む。
「……女性の声が入ってますね」
「あ、ホントだ。紫乃ねぇ、よく分かったね」
「この呪文みたいなとこだけですね」
呪文のような部分を歌う女性の声に気付いて以降、皆が口々に曲の感想を言い合うようになった。
「英語の歌詞、独特ですね。あまり意味が分からない曲が結構あります」
「イギリス英語とアメリカ英語でも全く違うものね」
この世界の英語と、伊吹が元いた世界の英語では、単語の持つ意味や発音などが違って意味が伝わらないという現象が発生している。
「この曲はどの国で作られたんでしょうか。男性は日本人のようですし、発音はお上手ですが特定は難しそうですね」
「いや、そもそもこの世界で作られた歌じゃないなら、特定するのは無理なんじゃないかな?
ねぇお兄さん。お兄さん?
……ん、水? じゃなくて、涙?
お兄さん、泣いてるの?」
伊吹に抱き締められたままの燈子の手に、伊吹の流した涙が落ちた。
皆に見つめられ、伊吹はようやく自分が泣いている事を自覚する。
「あれー、何で泣いてんだろ。おかしいなぁ。さっきから胸がちくちく痛むんだよねぇ。何か懐かしいような、温かいような、切ないような、さぁ……」
泣いている事は自覚したが、何故自分が泣いているのか分からない伊吹。周りを心配させない為に、あえて笑ってみせる。
「何だろうなぁ、この女の人の声さぁ、どっかで……」
首を捻って考えている伊吹の視界に、俯いている美子の顔が入り込む。そして、ようやく伊吹は思い当たった。
「そうか、お母様の声だ」
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