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第九章:事業拡大
母親の遺言
誰かから送られて来た段ボール、その中には大量のDVDと送り主からと思われる手紙だけ。
その手紙も、ビートルズの楽曲タイトルをもじって繋ぎ合わせた文章であり、送って来た経緯や、伊吹の母親との関係など、知りたい事は何も書かれてない。
「美子さん?」
流れた涙を拭わないまま、伊吹は生前の母親の事をよく知る人物、美子へ声を掛ける。
美子は伊吹へ頭を下げて謝る。
「申し訳ございません。咲弥様の遺言で、時が来るまで伊吹様には何もお伝えしないようにとご指示を受けております。
ですでの私も京香も、このDVDの送り主について申し上げる事が出来ません」
「……そっか、美子さんも京香さんも、そしておばあ様もこの人物が誰であるか、知っているという事だ。
多分、僕の父親だよね? そして、恐らく今もどこかで生きている。
僕をYourTunesで見つけて、これを送って来たってところかな」
伊吹の推測に対し、美子は頭を下げたまま何も答えない。肯定も否定もしないので、自分の父親なのか、父親が生きているのかどうか、伊吹には確信が持てないでいる。
DVDの動画が撮影されたのは、少なくとも十三年以上前。いや、伊吹が知る限り咲弥が伊吹を残して家を空けた事がないので、十八年以上前、自分が生まれる前になる。
DVDを誰かに託していた場合、ギターを演奏している男が生きているかどうかさえ不確かになってしまう。
そしてほぼ確かな事は、このギターの男が自ら段ボールを抱えてこのビルに来る訳がないという事。
この世界の男性が無防備な状態で外を出歩く訳がないのだから。
「お兄さん、それは変じゃない? だって、Vtunerとして活躍している男性をYourTunesで見つけたとして、何でそれがお兄さんだって分かるの?」
「あっ……」
燈子の指摘を受けて、伊吹が脳みそを全力で回転させる。
(美子さんは今も俺の父親と繋がりを持っている?
定期的に俺の動向を伝えている?
初回の精液提供の際、京香さんが関係各所を回ったと言っていたな。その時に俺の父親へも報告へ行く事も可能ではあるけど……)
伊吹が思案しているのを見て、美子は自分が疑われているのを察し、弁解する。
「伊吹様、私達は伊吹様へお仕えする侍女です。他家へ何かを報告するような事は決してございません。
伊吹様へ咲弥様とこのお方のご関係をお伝え出来ないのは非常に心苦しいのですが、どうかそれだけは信じて頂ければ……」
そう言って、改めて美子は深く頭を下げる。
「信じます」
(そんな事絶対する訳ないよな)
美子と京香が伊吹に対して不利になるような行動を取った事は一度もない。
「……ありがとうございます!」
美子は顔を上げ、心底ホッとしたような表情を浮かべる。
伊吹は一瞬でも疑った自分を恥じる。抱きかかえていたままだった燈子を開放して、美子へと歩み寄って抱き締めた。
「いつもありがとうございます、これからもよろしく」
「……もちろんでございますっ」
その手紙も、ビートルズの楽曲タイトルをもじって繋ぎ合わせた文章であり、送って来た経緯や、伊吹の母親との関係など、知りたい事は何も書かれてない。
「美子さん?」
流れた涙を拭わないまま、伊吹は生前の母親の事をよく知る人物、美子へ声を掛ける。
美子は伊吹へ頭を下げて謝る。
「申し訳ございません。咲弥様の遺言で、時が来るまで伊吹様には何もお伝えしないようにとご指示を受けております。
ですでの私も京香も、このDVDの送り主について申し上げる事が出来ません」
「……そっか、美子さんも京香さんも、そしておばあ様もこの人物が誰であるか、知っているという事だ。
多分、僕の父親だよね? そして、恐らく今もどこかで生きている。
僕をYourTunesで見つけて、これを送って来たってところかな」
伊吹の推測に対し、美子は頭を下げたまま何も答えない。肯定も否定もしないので、自分の父親なのか、父親が生きているのかどうか、伊吹には確信が持てないでいる。
DVDの動画が撮影されたのは、少なくとも十三年以上前。いや、伊吹が知る限り咲弥が伊吹を残して家を空けた事がないので、十八年以上前、自分が生まれる前になる。
DVDを誰かに託していた場合、ギターを演奏している男が生きているかどうかさえ不確かになってしまう。
そしてほぼ確かな事は、このギターの男が自ら段ボールを抱えてこのビルに来る訳がないという事。
この世界の男性が無防備な状態で外を出歩く訳がないのだから。
「お兄さん、それは変じゃない? だって、Vtunerとして活躍している男性をYourTunesで見つけたとして、何でそれがお兄さんだって分かるの?」
「あっ……」
燈子の指摘を受けて、伊吹が脳みそを全力で回転させる。
(美子さんは今も俺の父親と繋がりを持っている?
定期的に俺の動向を伝えている?
初回の精液提供の際、京香さんが関係各所を回ったと言っていたな。その時に俺の父親へも報告へ行く事も可能ではあるけど……)
伊吹が思案しているのを見て、美子は自分が疑われているのを察し、弁解する。
「伊吹様、私達は伊吹様へお仕えする侍女です。他家へ何かを報告するような事は決してございません。
伊吹様へ咲弥様とこのお方のご関係をお伝え出来ないのは非常に心苦しいのですが、どうかそれだけは信じて頂ければ……」
そう言って、改めて美子は深く頭を下げる。
「信じます」
(そんな事絶対する訳ないよな)
美子と京香が伊吹に対して不利になるような行動を取った事は一度もない。
「……ありがとうございます!」
美子は顔を上げ、心底ホッとしたような表情を浮かべる。
伊吹は一瞬でも疑った自分を恥じる。抱きかかえていたままだった燈子を開放して、美子へと歩み寄って抱き締めた。
「いつもありがとうございます、これからもよろしく」
「……もちろんでございますっ」
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