転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第九章:事業拡大

八人の娘

 藍子あいこは、伊吹いぶき玲実れみの事を何とかしようと考えてくれている事を察した。

「あーちゃんにとっては辛い出来事だったのは間違いないけど、僕達の出会いのきっかけではあるし、僕達が出会ってなかったら昨日のDVDが送られてくる事もなかったかも知れないんだよなぁ」

 伊吹は玲実に対するわだかまりを持っていない。
 生配信で全裸土下座を披露するという方法は正しくなかったが、玲実はしっかりと藍子に向けて謝罪していたし、それを藍子も受け入れている。
 藍子が謝罪を受け入れた以上、伊吹がとやかく言う問題ではない。

(さて、玲実をどうやって立ち直らせるか、か。
 裏方や雑用をさせて仕事を与えるのと、立ち直らせるのとは違う問題だしなぁ)

 藍子が落ちぶれてしまった玲実に対して、何か出来る事はないかと手を差し伸べようとしている。
 しかし、とうの玲実がその手を取ろうとしない。手を取る資格なんてないと言っているのだ。
 以前から藍子は、伊吹に玲実が立ち直る機会を与えるにはどうすればいいかと相談していたのだ。

『宮坂社長、私と勝負しろ!
 新たなVtunerブイチューナーを私と貴女でそれぞれデビューさせ、
 一ヶ月後により多い登録者を獲得した方の勝ちだ。
 ただし安藤家との絡みは禁止とする。あれは劇薬だからな!』

 つけっぱなしにしていたテレビから、ハム子が藍子に名指しで勝負を吹っ掛けている。

「八岐大蛇に祟り神に劇薬か。そのうち死に神だサタンだと言いだしそうだな」

「自分に都合の良いルールで戦おうなんて卑怯な人ね。
 勝負する事ないよ、放っておきましょう」

 燈子はため息を吐いたが、ハム子の持ち掛けている勝負について、伊吹にとっては何の不利益もない。利益もないが、新たなVtunerなら心当たりがある。

『私が勝ったら安藤家の中の人と会わせろ!
 そちらが勝ったら私はYourTunesを引退する!』

 そして、安藤家と絡んではならないという縛りは、伊吹にとって都合の悪いルールではない。

「結局お兄さんと会うのが目的なんじゃない!
 何なのこの女、図々しいにもほどがあるわ!!
 ハム子が引退したからってこっちに何の得があるのよ。
 お兄さん、訴えましょう!!」

 燈子だけでなく、この場にいる女性全員がハム子に対して怒りを露わにしている。
 が、当の伊吹は顎に手を当てて何かを考えている様子だ。

「またVCスタジオに頑張ってもらわないとだなぁ」

 藍子は伊吹の呟きを受けて、毒気を抜かれてしまった。
 本人がやる気になっているのであれば、自分達はそのあと押しをするべきであると藍子は思い直した。

「まぁた何か思い付いたな八岐大蛇」

 燈子が伊吹のほっぺたをつっつく。藍子は期待した目で伊吹を見つめる。
 そんな二人に向き直り、伊吹が尋ねる。

「何で八岐大蛇?」

「だって、八岐大蛇は八つの頭と八つの尻尾を持ってて、八人の娘を食べちゃうんだよ?」

 美哉みや橘香きっか智枝ともえはすでに食べられた後。
 そして食べられる順番を待っているのが、藍子と燈子と紫乃しのみどり琥珀こはくだ。

「すごい偶然だなぁー」

「……娘が八人なのは今だけだと思うけど」

 藍子の呟きに、伊吹も燈子も苦笑いを浮かべるのだった。
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