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第十章:イチャイチャほのぼの
宮坂藍子
「いぶ、き……」
「固いなぁ」
藍子は伊吹との初体験の際、気付かないうちに伊吹を呼び捨てにしていたと後に聞かされ、それをきっかけに伊吹から呼び捨てにしてほしいとお願いされている。
「伊吹」
「何? 藍子」
「ひぃぅっ!?」
わざとらしく小首を傾げて聞き返す伊吹の仕草にやられ、胸を押さえて顔を真っ赤にする藍子。
「もう肌触れあう関係なのに、今さらじゃない?」
「それとこれはちょっと、違うと言うか……」
男性には敬称を付け、仰ぎ奉るものだと思っていた藍子にとって、伊吹を呼び捨てにするのは抵抗がある。
そんな藍子に対して、伊吹は宮坂と三ノ宮が対等で良い関係を築けているという主張が出来ると言われ、頑張って呼び捨てにする練習をしているのだ。
伊吹の主張はもちろん、こじつけである。
「それで、GoolGoalからの用事は何だったの?」
GoolGoalとはインターネット検索サービス大手であり、YourTunesの親会社である。
「VividColorsを売らないかって」
藍子はGoolGoalの日本支社へ呼び出され、アメリカ本社からの代理人を名乗る弁護士からVividColorsの買収を持ち掛けられた。
「ふーん、いくらだって?」
VividColorsはすでに宮坂財閥の中核関連企業に位置付けられており、例えVividColors社長である藍子といえども一人で返事が出来る内容ではない。
「三百億円だって」
「ちょっと過小評価してるんじゃないかな?」
VividColorsは安藤さん家の四兄弟チャンネルだけでもひと月で三十億円の収益を上げており、その他のチャンネルや宮坂家との共同事業、そして将来性を見ても三百億以上の価値があると伊吹は自負している。
もちろんその三十億円はYourTunesの取り分を差し引いた、純粋なるVividColorsとしての収益である。
「欲しいのはアバター関連技術と合成音声技術の二つが主だろうね。
その他の事業に関してはまだ公になってないし」
その二つの技術に関する権利を丸ごと買い取りたいとしても、三百億円は少な過ぎる。
「向こうは同じ技術を開発中で、今後競合がどんどん出てくるだろうから毎月三十億円の収益を継続的に上げられる訳がないって言ってた」
「ならそっちに三百億円の投資をすればいいのにね。
大丈夫? あーちゃん、嫌な事言われてない?
適当に断ってくれればいいからね」
伊吹が藍子の頭を撫でて、よしよしと慰める。
「ちょっと嫌な気にはなったけど、……伊吹の為ならどうって事ないよ」
「そっか、頼りになる奥さんを持てて、僕は幸せ者だなぁ」
撫でられて嬉しいそうに目を閉じている藍子。
伊吹は頭を撫でたままそっと顔を寄せて、唇を重ねる。
「んっ……」
自ら伊吹を抱き締めて、藍子は伊吹へ囁く。
「伊吹の為だったら何でもするから、やりたい事や叶えてたい事があったら遠慮せずに言ってね?」
藍子はもはや、男性だから、助けてもらったから、という理由ではなく、愛する伊吹だからという理由で伊吹を支える覚悟を決めている。
相手は世界有数のIT企業であろうが、次に出てくるのが巨大コングロマリットであろうが、自分が矢面に立って交渉に臨むつもりだ。
「そうだ、そう言えば明後日じゃない?」
「ええ、明後日の朝には振り込まれてるはずだよ」
藍子は伊吹から身体をそっと離し、スマートフォンでアプリを立ち上げる。
YourTunesへの収益申請手続きは全て処理済みで、後は収益が振り込まれるのを待つのみ。
「三百億円を少ないって言ったけど、実際に三十億円が振り込まれると言われても実感が沸かないな」
「もちろん私もだよ。そんな大金扱った事ないもの」
二人は振り込まれる収益を何に使うか話し合う。
三十億円のうち、伊吹個人の取り分が七割の二十一億円になる計算だが、VividColorsとして設備投資や子会社の設立、買収資金など色々あるだろうという事で、ほとんどを会社の資金にあてるつもりだ。
前回行ったように新規株式を発行し、それを伊吹が引き取る形をとる。
藍子との持ち株比率のバランスが崩れるが、もう夫婦となるのだから気にしないと藍子は話しており、宮坂家も伊吹が資金を追加するのと同じタイミングで追加する形で、伊吹と宮坂家とのバランスを図る事になっている。
もう社内の帳簿や納税関係の手続きなどが、伊吹や藍子の手には負えない規模になっており、複雑化もしているので、新しいビルへ移動する際に社内に法務部や財務部などが新規設置予定となっている。
「ともちゃんがビル一棟だけじゃ全然足りないから、隣り合った四つのビルを地下で繋げて行き来が出来るようにしようって言ってたよ」
「え、そんな事出来るもんなのかな」
「元々地下フロアがあるビルなら、横に掘って繋げるだけだから行けるだろうって」
「ホントかなぁ」
伊吹は新しいビルだけでなく、宮坂家から譲られた土地の把握を全て智枝に任せているので、後でちゃんと確認しようと思った。
「何にしても、楽しみだね」
「うん、私ずっとドキドキしてるよ」
「じゃあ、もっとドキドキさせてあげないとね」
そう言って、伊吹は再び藍子の唇を奪った。
「固いなぁ」
藍子は伊吹との初体験の際、気付かないうちに伊吹を呼び捨てにしていたと後に聞かされ、それをきっかけに伊吹から呼び捨てにしてほしいとお願いされている。
「伊吹」
「何? 藍子」
「ひぃぅっ!?」
わざとらしく小首を傾げて聞き返す伊吹の仕草にやられ、胸を押さえて顔を真っ赤にする藍子。
「もう肌触れあう関係なのに、今さらじゃない?」
「それとこれはちょっと、違うと言うか……」
男性には敬称を付け、仰ぎ奉るものだと思っていた藍子にとって、伊吹を呼び捨てにするのは抵抗がある。
そんな藍子に対して、伊吹は宮坂と三ノ宮が対等で良い関係を築けているという主張が出来ると言われ、頑張って呼び捨てにする練習をしているのだ。
伊吹の主張はもちろん、こじつけである。
「それで、GoolGoalからの用事は何だったの?」
GoolGoalとはインターネット検索サービス大手であり、YourTunesの親会社である。
「VividColorsを売らないかって」
藍子はGoolGoalの日本支社へ呼び出され、アメリカ本社からの代理人を名乗る弁護士からVividColorsの買収を持ち掛けられた。
「ふーん、いくらだって?」
VividColorsはすでに宮坂財閥の中核関連企業に位置付けられており、例えVividColors社長である藍子といえども一人で返事が出来る内容ではない。
「三百億円だって」
「ちょっと過小評価してるんじゃないかな?」
VividColorsは安藤さん家の四兄弟チャンネルだけでもひと月で三十億円の収益を上げており、その他のチャンネルや宮坂家との共同事業、そして将来性を見ても三百億以上の価値があると伊吹は自負している。
もちろんその三十億円はYourTunesの取り分を差し引いた、純粋なるVividColorsとしての収益である。
「欲しいのはアバター関連技術と合成音声技術の二つが主だろうね。
その他の事業に関してはまだ公になってないし」
その二つの技術に関する権利を丸ごと買い取りたいとしても、三百億円は少な過ぎる。
「向こうは同じ技術を開発中で、今後競合がどんどん出てくるだろうから毎月三十億円の収益を継続的に上げられる訳がないって言ってた」
「ならそっちに三百億円の投資をすればいいのにね。
大丈夫? あーちゃん、嫌な事言われてない?
適当に断ってくれればいいからね」
伊吹が藍子の頭を撫でて、よしよしと慰める。
「ちょっと嫌な気にはなったけど、……伊吹の為ならどうって事ないよ」
「そっか、頼りになる奥さんを持てて、僕は幸せ者だなぁ」
撫でられて嬉しいそうに目を閉じている藍子。
伊吹は頭を撫でたままそっと顔を寄せて、唇を重ねる。
「んっ……」
自ら伊吹を抱き締めて、藍子は伊吹へ囁く。
「伊吹の為だったら何でもするから、やりたい事や叶えてたい事があったら遠慮せずに言ってね?」
藍子はもはや、男性だから、助けてもらったから、という理由ではなく、愛する伊吹だからという理由で伊吹を支える覚悟を決めている。
相手は世界有数のIT企業であろうが、次に出てくるのが巨大コングロマリットであろうが、自分が矢面に立って交渉に臨むつもりだ。
「そうだ、そう言えば明後日じゃない?」
「ええ、明後日の朝には振り込まれてるはずだよ」
藍子は伊吹から身体をそっと離し、スマートフォンでアプリを立ち上げる。
YourTunesへの収益申請手続きは全て処理済みで、後は収益が振り込まれるのを待つのみ。
「三百億円を少ないって言ったけど、実際に三十億円が振り込まれると言われても実感が沸かないな」
「もちろん私もだよ。そんな大金扱った事ないもの」
二人は振り込まれる収益を何に使うか話し合う。
三十億円のうち、伊吹個人の取り分が七割の二十一億円になる計算だが、VividColorsとして設備投資や子会社の設立、買収資金など色々あるだろうという事で、ほとんどを会社の資金にあてるつもりだ。
前回行ったように新規株式を発行し、それを伊吹が引き取る形をとる。
藍子との持ち株比率のバランスが崩れるが、もう夫婦となるのだから気にしないと藍子は話しており、宮坂家も伊吹が資金を追加するのと同じタイミングで追加する形で、伊吹と宮坂家とのバランスを図る事になっている。
もう社内の帳簿や納税関係の手続きなどが、伊吹や藍子の手には負えない規模になっており、複雑化もしているので、新しいビルへ移動する際に社内に法務部や財務部などが新規設置予定となっている。
「ともちゃんがビル一棟だけじゃ全然足りないから、隣り合った四つのビルを地下で繋げて行き来が出来るようにしようって言ってたよ」
「え、そんな事出来るもんなのかな」
「元々地下フロアがあるビルなら、横に掘って繋げるだけだから行けるだろうって」
「ホントかなぁ」
伊吹は新しいビルだけでなく、宮坂家から譲られた土地の把握を全て智枝に任せているので、後でちゃんと確認しようと思った。
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