転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

文字の大きさ
190 / 243
第十三章:三ノ宮伊吹

恐れ


 大会議室へ残ったのは、伊吹いぶきVividColorsヴィヴィッドカラーズ社長と取締役、そして婚約者でもある藍子あいこ燈子とうこ
 伊吹の侍女であり幼馴染の美哉みや橘香きっか
 伊吹の執事である智枝ともえ
 VividColorsの経営企画室所属の秘書である紫乃しのみどり琥珀こはく
 全員が伊吹の女とも言ってよい関係の近しい者のみが残り、伊吹の異変について確認する。

 美哉によってドット絵のお面を外された伊吹は、顔は真っ青にさせて、全身から汗が噴き出している。

「伊吹様……」
「落ち着いて……」

 二人から声を掛けられ、伊吹は深呼吸を繰り返す。冷静でいようと努めるが、心の奥底から噴き出してくる不安感や無力感などのせいで落ち着いていられない。
 伊吹は貧乏ゆすりを止められず、せわになく椅子に座る態勢を変える。ぶつぶつとどうしよう、どうすれば、と繰り返している。

 美哉も橘香も、こんなに狼狽えている伊吹を見た事がなく、一人称を俺と話すのも聞いた事がなかった。伊吹を抱き締め、背中を撫でながら何とか落ち着かせようとする。

「伊吹、どうして急にそんなに不安になったの?
 まだ九百億円投資するって決めた訳じゃないよね?」

 藍子が意を決して、伊吹へと尋ねる。本来はそっとしておきたい。今話し掛けると、伊吹を追い詰める事になるかも知れない。
 が、伊吹が一人で考え込み、不安になっているのを黙って見てはいられなかった。
 話を聞き、少しでも伊吹が溜め込んでいるものを吐き出させ、この場にいる者達で負担し合えたらと思ったのだ。

「藍子……、いや、あーちゃん。俺はそんな大層な人間じゃないってようやく気付いたんだ。

 前世ではただの会社員で、どこかの頭の良い奴が開発した商品やサービスを売るのが仕事だった。自分で生み出した事なんて一つもない。
 今だって前世の世界で上手く行っていた技術やサービスを、この世界の頭の良い奴に再現してもらってるだけだ。俺は何もしてない。

 それなのに、偉そうに世界中から頭の良い奴に集まれって呼び掛けて、目の前で開発費の九百億円を出せって言われて怖気づいた。

 そんなしょうもない男なんだ。経営者なんて務まらないし、俺が指示して動き出した事業が、万が一失敗したら、関わった人間が路頭に迷うとしたら、そう考えただけで手が震えて震えて……」

 伊吹の話に、皆が黙って耳を傾ける。否定も肯定もせず、ただただ伊吹の心の内を聞き、受け入れていく。

「人工知能開発に手を出さなければ良いって話なんだけど、これから先、科学技術が発展すればいずれ必ず人工知能開発を先行している企業が勝つ。
 どんな分野であれ、人工知能を押さえている企業が世界を牽引する。そこから逆転するのはとても難しいと思う」

 今まで伊吹は、自分がある程度仕組みを理解出来ている物事に対して投資を進めて来た。
 アバターやバイノーラルマイクを使ったASMR、VOCALOIDボーカロイドVOICEROIDボイスロイドなどにはある程度馴染みがあり、絶対に成功するはずだという確信があった。

 何より投資の原資は自分が出演するYourTunesユアチューンズのチャンネルの収益で賄える範囲だった。失敗したとしてもそう痛くない。
 投資に失敗して損失が出たとしても、自分の稼ぎで補填が出来るので、路頭に迷う人間もいない。
 事業が上手く行かず、YourTunesからの収益がなくなったとしても、田舎の実家に引き返せば良い。男性保護費の五千万円があれば苦労する事はないと思っていたのだ。

「だから、今のVividColorsヴィヴィッドカラーズにはイリヤと、人工知能開発事業が必要だ。
 けど、俺は失敗する可能性を考えて、怖くて震えてる」
感想 23

あなたにおすすめの小説

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!