転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第十三章:三ノ宮伊吹

勇気

「例え失敗したとしても、それはいっくんだけの責任にはならないよ。
 開発に賛同したあたしやあーちゃんにも責任はあるし、監査役として止めなかったおば様の責任でもある。
 おば様が認めたって事は、宮坂家が認めたって事だし、いっくんだけが責任を負う必要なんてないんだよ?」

 燈子とうこ伊吹いぶきへと、諭すように語り掛ける。
 全責任を負う気持ちで経営に挑むのは良い心構えだが、全責任を負わなければならないと思うのは考え違いしている。

「それでも、開発を決めるきっかけを作ったのは俺って事になる。
 その結果、事業が失敗したら多分俺は自分の責任だと思うだろうし、押し潰されるんじゃないかな……」

 人工知能開発に関しては桁が違い過ぎた。十年間で九百億円と聞いて、どれだけの危険を背負い、どれだけの人生を抱える事になるのか。
 開発に躓けば、自分だけでなく多くの人間が不幸になるかも知れないと、恐れてしまった。

 そして人工知能開発だけでなく、今まで自分が三ノ宮さんのみや伊吹いぶきという主人公を演じ、シミュレーションゲームを楽しんでいるような感覚で金を使い、人を雇い、危ういバランスの上に立っていたという事に気付いてしまった。
 たまたま結果が良いだけで、一歩間違っていればどん底に突き落とされていたかも知れないと、自覚してしまったのだ。

「人工知能開発に失敗すれば、VividColorsヴィヴィッドカラーズは倒産するかも知れない。
 俺だけなら良いよ、男性保護費を年間五千万円も貰えるからね。実家の屋敷に帰って余生を送るジジイみたいに大人しく暮らせば良い。
 けど、宮坂家はそうは行かない。莫大な投資額を回収出来ず、多くの従業員が路頭に迷うかも。

 そう考えると、危険を承知の上で人工知能開発に手を出す勇気が、俺にはない」


 未だ震えが止まらない伊吹を、美哉と橘香が抱き締める。
 そんな三人を見て、藍子達宮坂家の人間に緊張が走る。伊吹がVividColorsの経営者を辞めて帰ると言えば、恐らく美哉と橘香、そして三ノ宮家の人間は何の躊躇いもなく伊吹を実家の屋敷へ連れて帰るだろう。

 伊吹がVividColorsの経営から手を引くのはまだ良い。Vtunerブイチューナーを辞めるのも許容範囲だ。
 しかし、藍子と燈子との婚約破棄だけは絶対に阻止しなければならない。

 すでに政財界には三ノ宮家さんのみやけと宮坂家との婚約が発表されている。万が一伊吹が結婚を取り止めたいと言い出した場合、藍子と燈子ではなく宮坂家全体の信用問題に発展する。

 ここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる勢力もあるだろう。宮坂家の代わりにと三ノ宮家へ近付く勢力も出て来るかも知れない。
 その場合、伊吹の身の安全が保障されるかは分からない。しかし、宮坂家の人間がそのような説明をしても、伊吹が素直に受け取ってくれるかどうか。
 今の伊吹がどのような反応を示すか予想が出来ない。


「おやおや、そんなにぶるぶると震えちゃって。
 やっと可愛らしい姿を見せてくれたねぇ」

 そんな中、藍子からの連絡を受けた福乃ふくのが大会議室へ到着した。
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