転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第十三章:三ノ宮伊吹

笑う福乃と驚く伊吹

「おば様!?」

「もっと言い方あるんじゃない!?」

 藍子あいこ燈子とうこの批難を無視し、福乃ふくの伊吹いぶきの隣の椅子へと腰掛けた。

「ひっひっひっ! ようやく歳相応になったね。
 高天原たかまがはらから降りて来たんじゃないかって思ってたけど、伊吹様も人間って事だね。
 安心したよホント」

 騒ぎを聞いて駆け付けた美子よしこ京香きょうかが、伊吹を指差して笑う福乃に抗議するが、福乃は笑っていなす。

「私は安心したって言ってるんだよ。張り詰めた糸はいつか切れるんだ。今で良かったじゃないか。
 伊吹様はまだ何も失敗していない。失敗するかも知れないと思って怖気づいただけだ。
 それってのはね、人を動かす立場の者には大切な事さ。自分の行動次第で他人の人生を左右してしまうって自覚したんだろ?
 失敗する前に気付いたんだ、喜ぶべきじゃないか!
 ほれ、あんた達も座りなよ」

 福乃が藍子あいこ燈子とうこ紫乃しのみどり琥珀こはくに声を掛ける。
 言われるがまま、皆が伊吹の方を向き、椅子へと座る。

「地に足が着いた考えが出来る方が経営者としては良いのさ。どうせ失敗しても田舎の屋敷に帰れば良いって無茶な事されるよりか、失敗する前に身を引こうとする方がまだマシさ。
 自分の成功より他人に掛けるかも知れない迷惑に目が行ったんだ。私は伊吹様を笑わないよ」

 魔女のように笑ってみせた事を棚に上げ、福乃が真面目な顔で伊吹へ語り掛ける。

「何で一人で抱え込むんだい?
 事業投資に関しては、美哉ちゃんや橘香ちゃんよりうちの子らの方が詳しいと思うんだけどねぇ」

 伊吹の顔を覗き込むように見つめる福乃。伊吹は福乃の話を聞き、少し落ち着きを取り戻したのか、震えが止まっている。

「……すみません、会社経営を舐めてました」

「本当に舐めてる人がそんな顔で謝るもんか。伊吹様は立派に考えているからこそ、そんな情けない顔をしているのさ」

「おば様っ!」

 藍子あいこが言い過ぎだと指摘するが、福乃はその藍子に対して説教を始める。

「情けないのはあんただよ、いや、あんた達四人だ。男が不安で震えてる時に何もしてやれないで、何が妻だってんだ。
 伊吹様は誰を頼った? 誰に縋った? 第一夫人の藍子じゃなく、事業を支える秘書達でもない」

 あんた呼ばわりされた藍子、柴乃、翠、琥珀がキッと福乃を睨む。

「今、相手は幼馴染だから仕方ないと思ったね?
 そんなんで旦那様の一番になんか慣れる訳ないね。私が第一夫人でも第二夫人でもないのを知っているだろうに。
 一体私の何を見てきたんだい、全く情けないよホント」

 わざとらしく大きなため息を吐く福乃。何も言い返せず俯く四人。伊吹は居心地が悪くなり、口を開く。

「僕が悪いんです。何でも出来る気になって、気が大きくなってたんです。
 今まではこんな機械があった、こんなお店があった、こんなサービスがあったって言うだけで、あとは皆が形にするべく動いてくれた。
 けど、今回は違う。僕が言うだけで作れるもんじゃない。お金もいっぱい必要になる。もし失敗したらと思うと……」

「人工知能開発だって?
 うちでも二十年以上前からAIの開発はやってるさ」

 この世の不幸が全て降りかかってきたと言わんばかりに暗い顔をしてぼそぼそと喋っていた伊吹が、福乃の発言を受けて止まる。
 目も口もこれでもかというくらいに大きく開けて驚いている。

「そんな大層な事じゃないだろ? チェスの対戦でAIが人間に勝ったのはもうだいぶ前の話だよ。
 ゲーム機で将棋をするのもAIが対戦したりするだろ」

「ゲーム……」

 伊吹は、自分が何か勘違いしていた事にようやく気付いた。
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