転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第十三章:三ノ宮伊吹

積み重ね

「AIなんて家電にもパソコンにもゲームにも、そこら中に使われている技術だろう?
 そんな大層なもんじゃないと思うけどねぇ」

 ゲームに限らず、人工知能に対して専門家並みの知識を教え込み、問題の解決をさせようとする試みはこの世界でも行われている。
 伊吹いぶきの前世では『エキスパートシステム』と呼ばれていた技術だ。

 福乃ふくのが言うAIと、自分が言う人工知能に齟齬があるように感じて、伊吹は心の中で想定していた人工知能についてを口に出す。

「AIって言ったら、オーダーに沿った絵を描かせたり、文章を考えさせたり……」

 伊吹がイリヤから人工知能と聞いて思い浮かべたのは、生成AIだった。
 人間がプログラムを組んだ上で、その枠組みでしか回答を出せない従来型の人工知能とは段違いの性能であり、そして開発難易度も段違いとなる。

「はぁ……」

「おば様!!」

 例を挙げていく伊吹の目の前でわざとらしくため息を吐き、また福乃が藍子に怒られる。

「それが出来るようにする為に、今から投資するんじゃないのかい?」

 この世界現時点でのAI技術と伊吹が想像する人工知能。その間を埋めるのに必要な研究者としてのイリヤ。その開発の為に掛かる費用が十年間で十億ドル。

 ここでようやく伊吹の中で一つの線に結び付いた。

「そう、ですね……」

 最初から高度な事に挑む訳ではなく、初歩的技術の積み重ねをする事で、少しずつ生成AIのような高度な技術へと近付いていく。
 そしてその途中段階の技術であっても、必要とする企業や業界は出て来るだろう。その時々で開発費を回収する事も可能になるはずだ。
 十年間全くの成果なしの事業に対し、九百億円が必要になる訳ではないのだ。

 伊吹が先ほどまでの情けない表情ではなく、いつも通りの、さぁこれから何をやろうかなという思案顔に変わり、皆が胸を撫で下ろしている。
 そんな宮坂家の女達をじろりと睨みつける福乃。
 こんな事も出来ないのかい? という無言の圧力を掛けられ、居住まいを正す五人。

「そうそう、それとねぇ」

 何かを思い出したかのように、伊吹に向き直る福乃。

「たった九百億が何だってんだ。伊吹様のお陰で宮坂家とうちの協力者達がどれだけ儲けたか忘れたのかい?
 十回や二十回の失敗なんて屁でもないよ、やるなら全力でやりな!」

 伊吹とGoolGoalゴルゴルとの間で起きたゴタゴタで、宮坂家は膨大な利益を得ている。
 例え伊吹が失敗したとしても、十分に補填が出来るだけの余剰資金が確保されているのだ。

「でも、それは僕のお金では……」

「伊吹様がいなけりゃ入ってない金さ。名義が違うだけで伊吹様の為みたいなものだよ。気にしなさんな。
 AI開発をしている会社の株を丸ごとVividColorsヴィヴィッドカラーズへ譲ったって良いよ」

 全く一から会社を立ち上げるよりも、ある程度人工知能開発に携わっている会社を買収した方が成果が出やすいのは目に見えている。
 開発責任者としてイリヤを指名してやれば、あとは彼女が好きに采配するだろう。

 人工知能開発の為の事とはいえ、成り行きで丸ごと会社を貰い受ける事になり伊吹が恐縮する。

「会社に一つや二つ、どうって事ないさ。
 それよりもうちの子達の事をもっと考えてやってくれないか?」

「……はい。分かりました。
 皆も、情けない姿を見せてしまって、ごめん!
 でも、これが本来の僕の……、俺の姿だ。情けなくて弱くて頼りない。
 もし皆が……」

 それ以上喋らせないようにと、藍子が伊吹の口に手を当てる。他の四人も、真剣な表情で伊吹に熱い視線を送っている。

「この子達が今さら伊吹様なしで生きていけるとでも思ってるのかい?
 一度は愛した女だろう、責任持って最後まで愛しておくれよ。
 その代わりにこの子達はもっともっと強く、頼りになるよう、私がこれからも鍛えるよ」

 伊吹が五人に頭を下げると、皆が抱き着いて伊吹を揉みくちゃにする。一時は三ノ宮家さんのみやけと宮坂家決別の危機かと思った五人にとって、もう二度と離したくないと力を込めて伊吹を抱き締める。

「ほら、美哉ちゃんと橘香ちゃんも」

「ともちゃんもおいでよ」

 藍子が美哉と橘香を呼び、燈子が智枝ともえを呼んだ。

「これからも皆で伊吹を支えていこうね」

 皆が頷き、代わる代わる伊吹のキスを求めた。

 ようやく事態を収拾し終えたのを確認した福乃は、自らの胃を摩りながら大会議室を後にするのだった。
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