転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第十三章:三ノ宮伊吹

三ノ宮伊吹

 伊吹いぶきは、これから自分の妻となる藍子あいこ燈子とうこ美哉みや橘香きっか
 そして籍を入れる事はないが、内縁の妻であると思っている智枝ともえ紫乃しのと翠《みどり》と琥珀こはくを会議室へと集め、改めて自分の事について話し聞かせる機会を作った。
 侍女、執事、秘書の分け隔てなく、全員が座って伊吹の顔を見つめている。

「こうして全員を前にして、自分の事を語る事がなかったと思って、結婚式の準備を始める前に集まってもらった。
 生配信や社内会議等を通じて伝わっていると思うけど、僕には前世の記憶がある」

 伊吹の発言を聞いても、八人の女性達に驚きの表情は見られない。

「だからこうしてVividColorsヴィヴィッドカラーズの経営に携わり、この世界にはまだ広まっていない事業やサービスの展開を進める事が出来ている。
 そして、Vtunerブイチューナーとして活動する事も出来ている」

 何事にも臆さず挑戦出来る男性というのは、この世界においては非常に珍しい。
 その理由は、この世界の男女比が一対三万だからだ。男は非常に生まれにくく、生まれれば珠の様に大事に育てられる。
 教育を受ける義務はなく、国から一年間に五千万円もの男性保護費を受け取る事が出来る。
 男性に求められるのはただ、子作りのみ。もっと言うと、体内で作られる精液のみを求められる。

「僕の前世の世界では、男女比は一対一だった。厳密に言うとちょうどだった訳ではないと思うけど、男も女もいっぱいいた。
 そして、男は女に興味津々で、常に女の気を引こうとしていた。隙あらば身体に触れて、匂いを嗅ぎ、性交したいと思う生き物だった」

 ここでようやく、小さく声が漏れる。

「男性様が、女の身体にご興味を持たれるとは……」

「いっくんを見たら分かるでしょう?
 毎晩、……その、あたし達の身体を舐め回してるじゃない」

「旦那様だけが特別な存在なのかと……」

「失礼ですよっ」

 琥珀の呟きに燈子が答え、翠がさらに呟く。
 そして伊吹が気を悪くするのではないかと危惧し、紫乃が三人を小声で叱る。
 しかし、伊吹は何も気にしていないと答えて、立ち上がる。

「僕は女性の身体が大好きだ。隙あらば触れようとしている」

 琥珀の後ろ側に立ち、手を伸ばして琥珀の胸元へ滑り込ませる。

「んっ……」

「良い反応だ。
 琥珀には弟がいるらしいね? こんなイタズラはして来なかったのかな?」

「はいっ、年に一度あうっ、程度ですので、親しいぃとも言えない、関係ですっ」

 琥珀のこめかみにキスをして、手を戻して琥珀から離れる。
 琥珀はとても残念そうな表情を浮かべ、伊吹を見送る。

「弟にとって、姉とは性的対象から外れる。
 僕にも姉がいてね。家の中では常に下着姿のだらしない姉が二人いたんだ。
 学校で一番モテる女の子も、可愛いと評判の女の子も、家では皆だらしないんだろうと思うと、げんなりしたもんだよ」

 伊吹は燈子の後ろで立ち止まり、燈子の首筋に鼻を当て、ゆっくりと息を吸う。

「んふっ……」

「燈子の下着姿には興奮するけどね?」

「はぁぅっ……!」

 伊吹は燈子から離れ、また歩き出す。

「僕の前世では、僕の今置かれている状況はまさに天国と言える。
 自分一人に対して、無数の女性が男というだけで好意を寄せてくれる。何の努力もせず、何の責任も感じる必要なく、性交が出来る」

 今度は翠の後ろで立ち止まり、伊吹が唇を奪った。

「んふぅ……!」

「はむっ、れろっ、ちぅっ……、嬉しい?」

「はひっ、ふれひいでふっ!」

 伊吹は翠から離れ、また歩き出す。
 女達は、皆が次は自分の番ではないかとソワソワしている。

「男が突然こんな事をしてくれば、警察を呼ばれる事態になる」

 そう言って伊吹は机の下に潜り込み、紫乃の膝を押し広げてスカートの中を覗く。

「どうぞ、ご堪能下さいませっ」

 紫乃は見られているという羞恥心に耐えながら、伊吹の頭を優しく撫でる。
 伊吹は満足したのか、机の下から出て立ち上がり、紫乃へと口付けをして、また歩み出す。

「女性の前でこれほどの醜態を晒せば、普通は警察に逮捕されるか、そうでなくても社会的に抹殺される。
 でも、この世界では?」

「とてもとても歓迎される」
「男性の性欲は地球を救う」

 美哉と橘香が答えたので、伊吹が二人の元へと向かう。

「多くの国では法律で一夫一婦制が定められていた。
 もし前世の世界でも美哉と橘香と幼馴染だっただとしても、僕はどちらかを選ばなければならなかった。
 そんな事出来る訳がない」

「どんな世界でも三人は一緒」
「私達さえ良ければ問題ない」

 伊吹は美哉と橘香を抱き締める。心から愛している事が伝わる光景だ。

「そして、こんなに愛している女性が他にいるにも関わらず、そんな僕でも良いと言ってくれる藍子と燈子のような女性も、前世の世界には存在しないだろう」

「伊吹はこの世界の男性だから、誰にも気を遣う必要はないよ」

「でも、あたし達の事も愛してくれるんだよね?」

「もちろん、全員で幸せになりたいと思ってるよ」

 藍子と燈子は立ち上がり、美哉と橘香を抱き締めている伊吹を抱き締める。

 そんな素敵な光景の中、一人だけ白目を剥いて耐えている女が一人。
 智枝はまだ伊吹に身体を触れられておらず、キスもされず、匂いも嗅がれていない。

「僕は誰かが我慢する、そんな家庭にはしたくない。僕に対して、してほしいと思う事は直接伝えてほしいと思ってるんだ」

 そう言って、伊吹は智枝へと視線を送る。
 智枝は小さくため息を吐いて、立ち上がる。

「ご主人様。どうか私の身体をご堪能下さいませ」

 伊吹は美哉、橘香、藍子、燈子からそっと離れ、智枝へと歩み寄る。
 智枝は伊吹に向けて手を伸ばしており、さぁ抱き締めてくれと言わんばかりの姿だ。
 そんな智枝を胸に抱いて、伊吹は愛おし気に頭を撫でる。

「マチルダに言われたんだ。この世界は女にとっては地獄だって。
 国で管理され、自分で妊娠する時期を選べず、女手だけで子供を育てなければならない。
 もちろん、皆にとってはそれが当たり前なのは知ってる。でも、前世の記憶を持つマチルダや、キャリー、そしてイリヤにとっては地獄だろう。
 だから、彼女らが僕を望むならば、受け入れたいと思う。まぁ、この世界の全ての女性を救う事は出来ないけど」

「いいえ! ご主人様は配信活動を通じて、すでに多くの女性に夢と希望を与えておられます!!」

 智枝の言葉に、他の女達も頷いている。

「そっか、それは嬉しいな。
 昨日はちょっと我に返ってしまって、恥ずかしい姿を見せてしまったけど、これからはこの世界丸ごと征服する気持ちでいるようにするよ。
 配信者として、経営者として、皆の夫として。そして、三ノ宮さんのみや伊吹いぶきとして」

「私達も、妻としてしっかり支えていくよ」

 代表して、藍子が伊吹に声を掛ける。
 伊吹は皆の顔を見渡して、笑顔を見せる。

「さあ、この素晴らしい世界で、皆で幸せになろう」
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