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第十四章:結婚式に向けて
本物を知っているからこそ
かねてより極秘で進められていた、例のDVDを原曲とした楽曲作りが終了した。
デモ音源が完成しており、あとは正式なレコーディング作業を残すのみとなっている。
DVDを視聴して分かる事は、英語の歌詞とメロディとギターの演奏部分のみ。
これを元にして日本語訳の歌詞を別で作り、ギター以外の楽器の音を決めていく作業が行われた。
伊吹が出来上がっていく途中途中で確認し、自らの記憶を頼りに細かい修正を指示していたが、転生者であるマチルダとイリヤの登場により急速に作業を進める事が可能となった。
日本語訳の歌詞は伊吹とマチルダの原案を元に、曲との親和性を見て作詞担当が手直しをした。
恋愛や男と女の関係を表現した歌詞などが、この世界では意味が伝わりにくい部分などもあり、調整には時間が掛かった。
想定外の事もあった。伊吹がボーカルを務めるにあたり、求めていたボイストレーニングの講師が見つからなかった。
エレキギターなどの楽器はジャズを好む若者世代を中心として少しずつ浸透していたが、この世界においてJ-POPはまだ登場していない。その前段階である歌謡曲、フォークソング、グループサウンズなども出現していないのだ。
そもそも現代音楽の祖とも言えるビートルズを歌う為に、現代音楽のボイトレ講師を探すというのがおかしかったのだ。
ボイトレの講師候補として名乗りを上げたのは、浪曲師や演歌師の指導者達だった。
伊吹としてはジャンルが違うものの、得るものはあるだろうと面接に呼んだのだが、智枝の判断で不採用になった。
曰く、今すぐ副社長に会わせないと指導はしないと横柄な態度を取った、との事。
信頼に値せず、全員が四十代を越える女性だった事もあり、伊吹が性的興味を抱く事もないだろうという判断で、すぐに追い返したと伊吹に報告が上がって来たのだ。
その後オペラの指導者を頼ってみたが、マイクを使わず劇場の端まで届く声の出し方を教えられ、伊吹が違うと判断して受講を打ち切った。
そういう歌い方が良く聞こえる楽曲もあるだろうが、今回求めているものではなかったのだ。
「とりあえず歌ってみるしかないか」
伊吹は藍吹伊通りに作られた、VividColors専用のレコーディングスタジオに来ている。本番の収録の前に、全ての曲を歌って、仮収録をする為だ。
伊吹は幼い頃から体幹を鍛えていたので、声の伸びが良く声量も多い。音域も広く、感情表現も出来るので、レコーディング担当者らはすぐに録音ブースにいる伊吹へ両手で○を作って見せるのだが、当の伊吹とマチルダは納得しなかった。
本物を知っている以上、こんな低レベルな歌は出版出来ない。本物に対する尊敬をあるからこそ、妥協が出来ない。
そしてこの作業に関わっている三百人以上のスタッフの為にも、中途半端な曲を出す訳にはいかないと伊吹は思っていた。
そんな伊吹の姿を見て、スタジオに招待されていた大路アリス、花田真子、星野凛子が衝撃を受ける。
三人は伊吹がここまで真剣に音楽に向き合うとは思っていなかったのだ。
「何か納得いかないんだよなぁ」
美哉と橘香に休憩するよう促され、録音ブースから伊吹が出て来た。
レコーディングに支障が出るのでドット絵のお面は付けていない。
「あのっ、すごいです!」
ギターを抱き締めて、アリスが伊吹へ話し掛ける。真子も同じようにベースを抱えており、凛子はドラムスティックを両手に持ってリズムを刻んでいた。
「あぁ、ありがとう。三人もデモ音源作るの手伝ってくれてたんですよね?
そうだ、ちょっと四人でやってみませんか?」
戸惑う三人と見守る女性達。
しかし、伊吹は一人で歌うのではなく生演奏で歌ってみたいと主張し、別室の演奏用ブースへ移動した。
それほどのスペースはなく、伊吹とアリスと真子と凛子、そして美哉と橘香とマチルダ、あとは宮坂紡音の責任者と音楽プロデューサーと録音監督など、全員で十数名がブースへと入室する。
「どれからやろうか。特に好きな曲ってある?」
「えっと、えっと、この『涙の理由』がいいですっ!」
アリスが持っていた譜面をバサバサと勢い良くめくり、伊吹に曲名を指差して伝える。
「あぁ、いいね。コーラス部分は分かる?」
「全員覚えてます。三人で練習しました」
真子が答え、凛子がドラムセットの前に座る。
「よし、じゃあやりますか。
プロの三人には申し訳ないけど、僕はただの素人です。
でも精一杯歌いますので、よろしくね」
三人が頷き、そして演奏が始まる。
デモ音源が完成しており、あとは正式なレコーディング作業を残すのみとなっている。
DVDを視聴して分かる事は、英語の歌詞とメロディとギターの演奏部分のみ。
これを元にして日本語訳の歌詞を別で作り、ギター以外の楽器の音を決めていく作業が行われた。
伊吹が出来上がっていく途中途中で確認し、自らの記憶を頼りに細かい修正を指示していたが、転生者であるマチルダとイリヤの登場により急速に作業を進める事が可能となった。
日本語訳の歌詞は伊吹とマチルダの原案を元に、曲との親和性を見て作詞担当が手直しをした。
恋愛や男と女の関係を表現した歌詞などが、この世界では意味が伝わりにくい部分などもあり、調整には時間が掛かった。
想定外の事もあった。伊吹がボーカルを務めるにあたり、求めていたボイストレーニングの講師が見つからなかった。
エレキギターなどの楽器はジャズを好む若者世代を中心として少しずつ浸透していたが、この世界においてJ-POPはまだ登場していない。その前段階である歌謡曲、フォークソング、グループサウンズなども出現していないのだ。
そもそも現代音楽の祖とも言えるビートルズを歌う為に、現代音楽のボイトレ講師を探すというのがおかしかったのだ。
ボイトレの講師候補として名乗りを上げたのは、浪曲師や演歌師の指導者達だった。
伊吹としてはジャンルが違うものの、得るものはあるだろうと面接に呼んだのだが、智枝の判断で不採用になった。
曰く、今すぐ副社長に会わせないと指導はしないと横柄な態度を取った、との事。
信頼に値せず、全員が四十代を越える女性だった事もあり、伊吹が性的興味を抱く事もないだろうという判断で、すぐに追い返したと伊吹に報告が上がって来たのだ。
その後オペラの指導者を頼ってみたが、マイクを使わず劇場の端まで届く声の出し方を教えられ、伊吹が違うと判断して受講を打ち切った。
そういう歌い方が良く聞こえる楽曲もあるだろうが、今回求めているものではなかったのだ。
「とりあえず歌ってみるしかないか」
伊吹は藍吹伊通りに作られた、VividColors専用のレコーディングスタジオに来ている。本番の収録の前に、全ての曲を歌って、仮収録をする為だ。
伊吹は幼い頃から体幹を鍛えていたので、声の伸びが良く声量も多い。音域も広く、感情表現も出来るので、レコーディング担当者らはすぐに録音ブースにいる伊吹へ両手で○を作って見せるのだが、当の伊吹とマチルダは納得しなかった。
本物を知っている以上、こんな低レベルな歌は出版出来ない。本物に対する尊敬をあるからこそ、妥協が出来ない。
そしてこの作業に関わっている三百人以上のスタッフの為にも、中途半端な曲を出す訳にはいかないと伊吹は思っていた。
そんな伊吹の姿を見て、スタジオに招待されていた大路アリス、花田真子、星野凛子が衝撃を受ける。
三人は伊吹がここまで真剣に音楽に向き合うとは思っていなかったのだ。
「何か納得いかないんだよなぁ」
美哉と橘香に休憩するよう促され、録音ブースから伊吹が出て来た。
レコーディングに支障が出るのでドット絵のお面は付けていない。
「あのっ、すごいです!」
ギターを抱き締めて、アリスが伊吹へ話し掛ける。真子も同じようにベースを抱えており、凛子はドラムスティックを両手に持ってリズムを刻んでいた。
「あぁ、ありがとう。三人もデモ音源作るの手伝ってくれてたんですよね?
そうだ、ちょっと四人でやってみませんか?」
戸惑う三人と見守る女性達。
しかし、伊吹は一人で歌うのではなく生演奏で歌ってみたいと主張し、別室の演奏用ブースへ移動した。
それほどのスペースはなく、伊吹とアリスと真子と凛子、そして美哉と橘香とマチルダ、あとは宮坂紡音の責任者と音楽プロデューサーと録音監督など、全員で十数名がブースへと入室する。
「どれからやろうか。特に好きな曲ってある?」
「えっと、えっと、この『涙の理由』がいいですっ!」
アリスが持っていた譜面をバサバサと勢い良くめくり、伊吹に曲名を指差して伝える。
「あぁ、いいね。コーラス部分は分かる?」
「全員覚えてます。三人で練習しました」
真子が答え、凛子がドラムセットの前に座る。
「よし、じゃあやりますか。
プロの三人には申し訳ないけど、僕はただの素人です。
でも精一杯歌いますので、よろしくね」
三人が頷き、そして演奏が始まる。
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