転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第十五章:結婚式

結婚式前夜

 皇紀二七〇二年(西暦2042年)十二月二十三日、夜。
 伊吹いぶきは明日行われる藍子あいこ燈子とうことの結婚式の為、結婚式の会場がある皇宮へ一人で前乗りをする事になっている。
 結婚式は親や親戚に祝ってもらうというよりも神前儀式としての側面が強い為、男性である伊吹のみ事前準備や事前に必要な儀式があると、智枝ともえから聞かされている。
 藍子と燈子は実家へと帰っており、当日の朝に家族と共に皇宮へ向かう段取りとなっている。

 美哉みや橘香きっかは妊娠の診断を受けて以降、伊吹が侍女としての業務をさせず、大事を取って休むよう言いつけており、今回も結婚式へは不参加となる。
 もっとも、儀式を進行する人員は皇宮内に専門の巫女や宮司がいるので、参加するとしても何もする事がない。

「じゃ、行ってくるから」

 結婚式へ向かうという事で、伊吹は礼服用のスーツを着ている。

「いってらっしゃい」
「私達の事は気にしないで」

 伊吹と美哉と橘香が抱き合い、キスを交わす。
 いつもの侍女服ではなく、ゆったりとした暖かい服装の美哉と橘香が伊吹を見送る。
 伊吹としては二人以外の人との結婚式に送り出される訳だから、居心地が悪い。気にしないでと言われ、苦笑する伊吹。

「この子らが生まれて、多少余裕が出来たら必ず三人で式を挙げよう」

「うん」
「楽しみにしてる」

 美哉と橘香、そして美子よしこ京香きょうか紫乃しのみどり琥珀こはくに見送られ、伊吹はビルの玄関へと向かう。

 事務所のあるビルの玄関にピッタリと横付けされた皇宮の公用車に乗り込む。
 付き添いは智枝ともえのみで、運転手や同乗者は皇宮より派遣された警察官だ。
 公用車が発進すると、前後をパトカーが挟むようにして集団で進んでいく。さらにその周りを警察車両が囲んでいる。くるくると回るパトランプが伊吹の頬を照らす。

「まるで国の要人みたいだな」

(まぁ、男が希少な世界だからこれが普通なんだろうけど)

 外と藍吹伊通あぶいどおり一丁目の境界を警備している宮坂警備保障のゲートを抜けると、大勢の報道関係者が待機しているのが見えた。

「ここで待ってて何か撮れるのか?」

「藍子様が打ち合わせに出られたり、燈子様が大学へ通われたりするお姿を狙っております。
 大抵は宮坂警備保障のお陰で躱せるのですが、万全とも言い難い状態です。
 ご主人様、念の為お顔をお隠し下さい」

 伊吹は智枝の胸元に抱き着いて顔を隠す。小さいな、などと思ってはいない。
 しばらくその状態を楽しんでいたが、外の風景が見たくなり、伊吹は身体を起こした。

「あれ? もしかして信号操作して全部青になってる?」

 伊吹の疑問を受けて、智枝が控えている女性に答えるよう促す。

「はい。道路を事前に封鎖し、皇宮まで止まる事なく向かいます」

 警護を任されている警察官の女性が答える。
 礼儀正しいが、物腰は柔らかく口調も穏やかに聞こえる。軍隊の士官よりも、むしろ秘書のような対応に近い。

「ふーん。男が移動するとなると、これだけの一大事になるんですね。
 警察官の皆さん以外にも、仕事や用事で外出中の人達の足止めもしてしまうし、やっぱりヘリとかで移動した方が皆さんのお手間を取らせなくていいのかなぁ」

「基本的に、男性様が外出される事が稀ですので。
 ご主人様も気軽に外出して頂く訳には参りませんので、ご理解下さい」

「でもヘリなら邪魔にならないでしょ?」

「雨が降ったり風が強かったりしたら移動出来ませんし、そうでなくても常に墜落の危険性はあります。
 どうか、ご理解下さい」

「えー、でもさぁー」

「ご理解下さい」

 伊吹と智枝のやり取りを聞き、警察官は苦笑を浮かべている。
 つい五ヶ月ほど前、一人で新幹線に乗り、東京まで逃げて来た時の感覚からだいぶと変わった伊吹。もう一人でラーメン屋に入る事はないだろう。
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