211 / 243
第十五章:結婚式
結婚式前夜
皇紀二七〇二年(西暦2042年)十二月二十三日、夜。
伊吹は明日行われる藍子と燈子との結婚式の為、結婚式の会場がある皇宮へ一人で前乗りをする事になっている。
結婚式は親や親戚に祝ってもらうというよりも神前儀式としての側面が強い為、男性である伊吹のみ事前準備や事前に必要な儀式があると、智枝から聞かされている。
藍子と燈子は実家へと帰っており、当日の朝に家族と共に皇宮へ向かう段取りとなっている。
美哉と橘香は妊娠の診断を受けて以降、伊吹が侍女としての業務をさせず、大事を取って休むよう言いつけており、今回も結婚式へは不参加となる。
もっとも、儀式を進行する人員は皇宮内に専門の巫女や宮司がいるので、参加するとしても何もする事がない。
「じゃ、行ってくるから」
結婚式へ向かうという事で、伊吹は礼服用のスーツを着ている。
「いってらっしゃい」
「私達の事は気にしないで」
伊吹と美哉と橘香が抱き合い、キスを交わす。
いつもの侍女服ではなく、ゆったりとした暖かい服装の美哉と橘香が伊吹を見送る。
伊吹としては二人以外の人との結婚式に送り出される訳だから、居心地が悪い。気にしないでと言われ、苦笑する伊吹。
「この子らが生まれて、多少余裕が出来たら必ず三人で式を挙げよう」
「うん」
「楽しみにしてる」
美哉と橘香、そして美子と京香、紫乃と翠と琥珀に見送られ、伊吹はビルの玄関へと向かう。
事務所のあるビルの玄関にピッタリと横付けされた皇宮の公用車に乗り込む。
付き添いは智枝のみで、運転手や同乗者は皇宮より派遣された警察官だ。
公用車が発進すると、前後をパトカーが挟むようにして集団で進んでいく。さらにその周りを警察車両が囲んでいる。くるくると回るパトランプが伊吹の頬を照らす。
「まるで国の要人みたいだな」
(まぁ、男が希少な世界だからこれが普通なんだろうけど)
外と藍吹伊通り一丁目の境界を警備している宮坂警備保障のゲートを抜けると、大勢の報道関係者が待機しているのが見えた。
「ここで待ってて何か撮れるのか?」
「藍子様が打ち合わせに出られたり、燈子様が大学へ通われたりするお姿を狙っております。
大抵は宮坂警備保障のお陰で躱せるのですが、万全とも言い難い状態です。
ご主人様、念の為お顔をお隠し下さい」
伊吹は智枝の胸元に抱き着いて顔を隠す。小さいな、などと思ってはいない。
しばらくその状態を楽しんでいたが、外の風景が見たくなり、伊吹は身体を起こした。
「あれ? もしかして信号操作して全部青になってる?」
伊吹の疑問を受けて、智枝が控えている女性に答えるよう促す。
「はい。道路を事前に封鎖し、皇宮まで止まる事なく向かいます」
警護を任されている警察官の女性が答える。
礼儀正しいが、物腰は柔らかく口調も穏やかに聞こえる。軍隊の士官よりも、むしろ秘書のような対応に近い。
「ふーん。男が移動するとなると、これだけの一大事になるんですね。
警察官の皆さん以外にも、仕事や用事で外出中の人達の足止めもしてしまうし、やっぱりヘリとかで移動した方が皆さんのお手間を取らせなくていいのかなぁ」
「基本的に、男性様が外出される事が稀ですので。
ご主人様も気軽に外出して頂く訳には参りませんので、ご理解下さい」
「でもヘリなら邪魔にならないでしょ?」
「雨が降ったり風が強かったりしたら移動出来ませんし、そうでなくても常に墜落の危険性はあります。
どうか、ご理解下さい」
「えー、でもさぁー」
「ご理解下さい」
伊吹と智枝のやり取りを聞き、警察官は苦笑を浮かべている。
つい五ヶ月ほど前、一人で新幹線に乗り、東京まで逃げて来た時の感覚からだいぶと変わった伊吹。もう一人でラーメン屋に入る事はないだろう。
伊吹は明日行われる藍子と燈子との結婚式の為、結婚式の会場がある皇宮へ一人で前乗りをする事になっている。
結婚式は親や親戚に祝ってもらうというよりも神前儀式としての側面が強い為、男性である伊吹のみ事前準備や事前に必要な儀式があると、智枝から聞かされている。
藍子と燈子は実家へと帰っており、当日の朝に家族と共に皇宮へ向かう段取りとなっている。
美哉と橘香は妊娠の診断を受けて以降、伊吹が侍女としての業務をさせず、大事を取って休むよう言いつけており、今回も結婚式へは不参加となる。
もっとも、儀式を進行する人員は皇宮内に専門の巫女や宮司がいるので、参加するとしても何もする事がない。
「じゃ、行ってくるから」
結婚式へ向かうという事で、伊吹は礼服用のスーツを着ている。
「いってらっしゃい」
「私達の事は気にしないで」
伊吹と美哉と橘香が抱き合い、キスを交わす。
いつもの侍女服ではなく、ゆったりとした暖かい服装の美哉と橘香が伊吹を見送る。
伊吹としては二人以外の人との結婚式に送り出される訳だから、居心地が悪い。気にしないでと言われ、苦笑する伊吹。
「この子らが生まれて、多少余裕が出来たら必ず三人で式を挙げよう」
「うん」
「楽しみにしてる」
美哉と橘香、そして美子と京香、紫乃と翠と琥珀に見送られ、伊吹はビルの玄関へと向かう。
事務所のあるビルの玄関にピッタリと横付けされた皇宮の公用車に乗り込む。
付き添いは智枝のみで、運転手や同乗者は皇宮より派遣された警察官だ。
公用車が発進すると、前後をパトカーが挟むようにして集団で進んでいく。さらにその周りを警察車両が囲んでいる。くるくると回るパトランプが伊吹の頬を照らす。
「まるで国の要人みたいだな」
(まぁ、男が希少な世界だからこれが普通なんだろうけど)
外と藍吹伊通り一丁目の境界を警備している宮坂警備保障のゲートを抜けると、大勢の報道関係者が待機しているのが見えた。
「ここで待ってて何か撮れるのか?」
「藍子様が打ち合わせに出られたり、燈子様が大学へ通われたりするお姿を狙っております。
大抵は宮坂警備保障のお陰で躱せるのですが、万全とも言い難い状態です。
ご主人様、念の為お顔をお隠し下さい」
伊吹は智枝の胸元に抱き着いて顔を隠す。小さいな、などと思ってはいない。
しばらくその状態を楽しんでいたが、外の風景が見たくなり、伊吹は身体を起こした。
「あれ? もしかして信号操作して全部青になってる?」
伊吹の疑問を受けて、智枝が控えている女性に答えるよう促す。
「はい。道路を事前に封鎖し、皇宮まで止まる事なく向かいます」
警護を任されている警察官の女性が答える。
礼儀正しいが、物腰は柔らかく口調も穏やかに聞こえる。軍隊の士官よりも、むしろ秘書のような対応に近い。
「ふーん。男が移動するとなると、これだけの一大事になるんですね。
警察官の皆さん以外にも、仕事や用事で外出中の人達の足止めもしてしまうし、やっぱりヘリとかで移動した方が皆さんのお手間を取らせなくていいのかなぁ」
「基本的に、男性様が外出される事が稀ですので。
ご主人様も気軽に外出して頂く訳には参りませんので、ご理解下さい」
「でもヘリなら邪魔にならないでしょ?」
「雨が降ったり風が強かったりしたら移動出来ませんし、そうでなくても常に墜落の危険性はあります。
どうか、ご理解下さい」
「えー、でもさぁー」
「ご理解下さい」
伊吹と智枝のやり取りを聞き、警察官は苦笑を浮かべている。
つい五ヶ月ほど前、一人で新幹線に乗り、東京まで逃げて来た時の感覚からだいぶと変わった伊吹。もう一人でラーメン屋に入る事はないだろう。
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!