転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第十五章:結婚式

顔合わせ

「ごちそうさまでした」

 智枝の手によって朝食を食べさせてもらった後、伊吹はまた別の侍女の案内で衣装部屋へと案内された。

「何じゃこりゃ……」

 当日着ると決めていた黒い紋付羽織袴ではなく、見覚えのない別の大層な装束が用意されている事に驚く伊吹。

「えっと、手違いか何か? 今からでも間に合うかな」

 伊吹が智枝へ問い掛けると、控えていた武三たけぞうが説明を始める。

「此度は正式な婚礼の儀の為、皇宮にて手配をさせて頂きました。
 ご連絡が行き届いておらず、申し訳ございません」

「えっ!? えっと……」

 老齢の男性に深々と頭を下げられて伊吹は恐縮してしまう。
 恐らくこの武三が悪い訳ではないだろうに、この場を収める為に孫ほどの伊吹に対して謝ってみせたので、伊吹としてはそれ以上何も言えなくなる。
 が、藍子と燈子との衣装の兼ね合いもある。

「えっと、僕だけこんな立派なお衣装を着る訳にはいかないと思うんです。
 妻達と衣装を合わせないといけませんし」

 藍子あいこ燈子とうこは白無垢を着る予定であり、事前に三人揃って記念撮影もするほど楽しみにしていたのだ。

「はい。お二人には十二単を着て頂くよう手配致しております」

(どこの平安貴族だよ……)


 伊吹はそれ以上言い返す事が出来ず、用意されていた衣装を皇宮内で働く侍女達に着せられた。
 自分の姿を鏡で見た伊吹の印象は、雛祭りのお内裏様だ。

 武三のものよりも上等に見える純白の斎服さいふく。その上から纏う束帯そくたいは赤くて黄を帯びた色。
 烏帽子を被らされ、扇としゃくを袴に差している。

(お内裏様とお雛様、か……。あれもよく考えれば結婚式だよな)

 圧倒的非日常感を抱えたまま、伊吹は武三に促されて皇宮内を移動する。智枝は二人の後ろを、いつも通りのスーツ姿でついて歩く。

 外は晴れているが、雪がちらついている。雪駄では足元が寒い。
 身体を震わせながら、伊吹は武三の案内で鳥居をくぐり、社殿へと入っていく。
 控室へ通され、智枝が伊吹へと温かいお茶を淹れた。

「花嫁様方のご用意が整いますまで、こちらでお待ち下さいませ」

 そう言って、武三が控室を出て行った。

(そういえば、藍子と燈子のご両親はもう来られているんだろうか。今のうちに挨拶出来るならしたいなぁ)

 伊吹が智枝へ尋ねるべく口を開いたところ、外から女性の声が掛けられる。

「失礼致します。宮坂家当主、賢一けんいちとその妻、あかねと申します。
 伊吹様へご挨拶させて頂きたく参りました」

「どうぞ、お入り下さい」

 智枝が返事をすると、すすすっと襖が開き、黒紋付羽織袴の男性と黒留袖の女性が控室へ入って来た。
 伊吹が慌てて立ち上がろうとすると、茜がそのままで結構です、と声を掛けて、二人は智枝が用意した座布団へ腰を下ろす。

「ご挨拶が遅れて申し訳ないです。
 三ノ宮さんのみや伊吹いぶきと申します」

「ご丁寧にありがとうございます。
 このたびは私どもの娘を娶って頂き、感謝に堪えません。宮坂の人間として、これ以上の誉れはございません」

 ニコニコと笑顔を浮かべて話す茜と、むすっとしたまま何も話さない賢一。
 智枝が用意したお茶をずずずっと飲んでから、ようやく賢一が口を開く。

「可愛い娘達だ、良くしてやって下さい」

「……はい、一緒に幸せになります。
 あの、藍子さんと燈子さんだけでなく、紫乃しのさん、みどりさん、琥珀こはくさんの事も大事に思っております。

 藍吹伊通あぶいどおり一丁目の近くへお越しになられる際は、ぜひ皆の顔を見に来て下さい。
 きっと、幸せそうな表情をしていると思っております」

 賢一は目を見開いた後、大きく頷いてみせる。

「それは、楽しみですな」
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