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第十五章:結婚式
結婚の儀
「花嫁様方のご用意が整いましてございます」
皇宮内に勤める侍女が、襖の外から声を掛ける。智枝が襖を開けると、そこには煌びやかな十二単で着飾った藍子と燈子が今にも倒れそうな表情で立っていた。
「すごく綺麗だけど、大丈夫?」
伊吹は二人の表情に気付いて声を掛ける。二人とも長い黒髪のカツラを被っており、とても重そうに見える。
「わわわ私のお衣装がこここ皇后陛下のごごごご結婚のぎぎぎ儀」
「わわわ私のお衣装はこここ皇太后陛下のののののの」
「お、落ち着いて二人とも、とりあえず座ったら?」
「いえ、一度お座りになると再び立ち上がられるのが大変です。
すでに式場のご準備が整っているようなので、このままお向かい下さい」
智枝が伊吹へそう伝えると、二人を案内して来た侍女が頷いた。
伊吹が立ち上がり、侍女の案内に続いて歩く。その後ろを藍子と燈子がゆっくりと慎重に歩く。衣装が重いのもあるが、二人は衣装の意味と価値と歴史の重みを感じ、思うように歩けないでいる。
そのさらに後ろから、賢一と茜が続く。智枝は最後尾で見守っている。
式場へ着くと、白い斎服の上に白い束帯を纏い、烏帽子を被った武三が巫女装束の女性達と共に待っていた。
侍女の誘導に従い、伊吹を中心として右に藍子、左に燈子の順番で高さのある木の椅子へと座る。
三人の後方に参列者用の椅子が用意されており、そちらに賢一と茜、そして智枝が座る。参列者が少ないが、皇宮内で行われる儀式の為、仕方がない。
「それでは始めさせて頂きます」
武三が式場奥の祭壇に一礼をした後、祭壇の右手にある御簾に向かっても一礼をした。それを不思議に思った伊吹がそちらを見ると、御簾の向こうに誰かが座っているのが見えた。伊吹は武三に倣って祭壇と御簾に一礼をする。
武三が大幣をバサッバサッと振り、伊吹達の穢れを払う。その後、巫女から受け取ったお膳を祭壇へ捧げた。
武三が祝詞を読み上げ、八百万の神々へ伊吹と藍子と燈子の結婚を報告する。
続いて三献の儀。
小の杯に巫女が御神酒を注ぎ、伊吹が口を付け、藍子が口を付け、また伊吹が口を付け、燈子が口を付けるという順番で飲み交わす。
中の杯は藍子が口を付け、伊吹が口を付け、燈子が口を付け、伊吹が口を付けるという順番で飲み交わす。
大の杯は、また小の杯と同じ順番で飲み交わす。
武三から伊吹達へ誓詞が渡される。本文は武三が読み上げるので、誓詞に書かれた通りに名前だけ自分で言うように説明を受ける。
伊吹の両側から藍子と燈子が誓詞に手を添える。
「今日の良き日に、皇国大神宮の大御前において、
『……伊吹』
『宮坂藍子』
『宮坂燈子』
以上、一名の夫と二名の妻が結婚の儀を執り行います。
今後はご神徳のもと、相和し、相敬い、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、子孫繁栄のために勤め、終生変わらぬことをお誓い致します。
何卒、幾久しく始祖たる神々のご守護を賜りますようお願い申し上げます」
誓詞を武三へ返し、結婚指輪の交換へ移る。
巫女が持って来た結婚指輪を伊吹が受け取り、まず藍子の左手薬指へと通す。続いて巫女から燈子の結婚指輪を受け取り、燈子の左手薬指へ通す。
そして藍子が伊吹の結婚指輪を巫女から受け取り、伊吹の左手薬指へ通す。燈子が伊吹の結婚指輪に触れ、指輪交換が終わる。
指輪の交換が終わり、続いて玉串を祭壇へ捧げる玉串奉奠へ移る。
武三が伊吹、藍子、燈子の順番で玉串を手渡し、それぞれが受け取る。祭壇へ歩み寄り、祭壇へお辞儀をしてから目を閉じる。幸せな家庭が築けますように、子宝に恵まれますように、伊吹のような強い男の子をもうける事が出来ますように、などの祈念を玉串に込め、玉串案と呼ばれる台へと捧げる。
一歩下がり、二礼二拍一礼をして、三人は元いた席へと戻った。
続いて親族盃の儀へ移る。
巫女が賢一、茜、智枝に杯を渡し、御神酒を注ぐ。巫女の一人が杯と御神酒を持って式場を出て行く。
武三の合図で参列者が一斉に杯を飲み干す。伊吹は御簾の向こう側の影が動いたのが見えた。
親族盃の儀が終わり、武三が祭壇のお膳を下げて、巫女へ手渡す。
武三が一同に起立するように声を掛けてから祭壇へと向き直り、結婚の儀が滞りなく執り行われた事を報告し、一礼する。そして御簾へと向き直り、もう一度一礼する。
武三の一礼に合わせて、全員が祭壇へと一礼し、御簾へも一礼をする。
「これにて無事、伊吹様、藍子様と燈子様の結婚の儀が執り行われました。始祖たる神々もお慶びの事と存じます。
伊吹様はこちらへどうぞ」
武三が伊吹のみを指名し、祭壇の方へ来るよう呼びかける。先ほど式の途中で式場を退出した巫女の元へ伊吹を誘う。
「皆様は私に続いて退出願います。伊吹様がお戻りになるまで、控え室でお待ち下さい」
(さて、いよいよか……)
式場を出る際、智枝が伊吹の方を振り返り、小さく頷いた。
皇宮内に勤める侍女が、襖の外から声を掛ける。智枝が襖を開けると、そこには煌びやかな十二単で着飾った藍子と燈子が今にも倒れそうな表情で立っていた。
「すごく綺麗だけど、大丈夫?」
伊吹は二人の表情に気付いて声を掛ける。二人とも長い黒髪のカツラを被っており、とても重そうに見える。
「わわわ私のお衣装がこここ皇后陛下のごごごご結婚のぎぎぎ儀」
「わわわ私のお衣装はこここ皇太后陛下のののののの」
「お、落ち着いて二人とも、とりあえず座ったら?」
「いえ、一度お座りになると再び立ち上がられるのが大変です。
すでに式場のご準備が整っているようなので、このままお向かい下さい」
智枝が伊吹へそう伝えると、二人を案内して来た侍女が頷いた。
伊吹が立ち上がり、侍女の案内に続いて歩く。その後ろを藍子と燈子がゆっくりと慎重に歩く。衣装が重いのもあるが、二人は衣装の意味と価値と歴史の重みを感じ、思うように歩けないでいる。
そのさらに後ろから、賢一と茜が続く。智枝は最後尾で見守っている。
式場へ着くと、白い斎服の上に白い束帯を纏い、烏帽子を被った武三が巫女装束の女性達と共に待っていた。
侍女の誘導に従い、伊吹を中心として右に藍子、左に燈子の順番で高さのある木の椅子へと座る。
三人の後方に参列者用の椅子が用意されており、そちらに賢一と茜、そして智枝が座る。参列者が少ないが、皇宮内で行われる儀式の為、仕方がない。
「それでは始めさせて頂きます」
武三が式場奥の祭壇に一礼をした後、祭壇の右手にある御簾に向かっても一礼をした。それを不思議に思った伊吹がそちらを見ると、御簾の向こうに誰かが座っているのが見えた。伊吹は武三に倣って祭壇と御簾に一礼をする。
武三が大幣をバサッバサッと振り、伊吹達の穢れを払う。その後、巫女から受け取ったお膳を祭壇へ捧げた。
武三が祝詞を読み上げ、八百万の神々へ伊吹と藍子と燈子の結婚を報告する。
続いて三献の儀。
小の杯に巫女が御神酒を注ぎ、伊吹が口を付け、藍子が口を付け、また伊吹が口を付け、燈子が口を付けるという順番で飲み交わす。
中の杯は藍子が口を付け、伊吹が口を付け、燈子が口を付け、伊吹が口を付けるという順番で飲み交わす。
大の杯は、また小の杯と同じ順番で飲み交わす。
武三から伊吹達へ誓詞が渡される。本文は武三が読み上げるので、誓詞に書かれた通りに名前だけ自分で言うように説明を受ける。
伊吹の両側から藍子と燈子が誓詞に手を添える。
「今日の良き日に、皇国大神宮の大御前において、
『……伊吹』
『宮坂藍子』
『宮坂燈子』
以上、一名の夫と二名の妻が結婚の儀を執り行います。
今後はご神徳のもと、相和し、相敬い、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、子孫繁栄のために勤め、終生変わらぬことをお誓い致します。
何卒、幾久しく始祖たる神々のご守護を賜りますようお願い申し上げます」
誓詞を武三へ返し、結婚指輪の交換へ移る。
巫女が持って来た結婚指輪を伊吹が受け取り、まず藍子の左手薬指へと通す。続いて巫女から燈子の結婚指輪を受け取り、燈子の左手薬指へ通す。
そして藍子が伊吹の結婚指輪を巫女から受け取り、伊吹の左手薬指へ通す。燈子が伊吹の結婚指輪に触れ、指輪交換が終わる。
指輪の交換が終わり、続いて玉串を祭壇へ捧げる玉串奉奠へ移る。
武三が伊吹、藍子、燈子の順番で玉串を手渡し、それぞれが受け取る。祭壇へ歩み寄り、祭壇へお辞儀をしてから目を閉じる。幸せな家庭が築けますように、子宝に恵まれますように、伊吹のような強い男の子をもうける事が出来ますように、などの祈念を玉串に込め、玉串案と呼ばれる台へと捧げる。
一歩下がり、二礼二拍一礼をして、三人は元いた席へと戻った。
続いて親族盃の儀へ移る。
巫女が賢一、茜、智枝に杯を渡し、御神酒を注ぐ。巫女の一人が杯と御神酒を持って式場を出て行く。
武三の合図で参列者が一斉に杯を飲み干す。伊吹は御簾の向こう側の影が動いたのが見えた。
親族盃の儀が終わり、武三が祭壇のお膳を下げて、巫女へ手渡す。
武三が一同に起立するように声を掛けてから祭壇へと向き直り、結婚の儀が滞りなく執り行われた事を報告し、一礼する。そして御簾へと向き直り、もう一度一礼する。
武三の一礼に合わせて、全員が祭壇へと一礼し、御簾へも一礼をする。
「これにて無事、伊吹様、藍子様と燈子様の結婚の儀が執り行われました。始祖たる神々もお慶びの事と存じます。
伊吹様はこちらへどうぞ」
武三が伊吹のみを指名し、祭壇の方へ来るよう呼びかける。先ほど式の途中で式場を退出した巫女の元へ伊吹を誘う。
「皆様は私に続いて退出願います。伊吹様がお戻りになるまで、控え室でお待ち下さい」
(さて、いよいよか……)
式場を出る際、智枝が伊吹の方を振り返り、小さく頷いた。
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