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第十五章:結婚式
家族写真
「くっくっくっ、心乃夏。野望が潰えたな」
「野望?」
「自分の孫を皇王にしたかったんじゃないか?」
浮かべていた笑顔が消え、心乃夏は無表情になってしまう。
心乃夏は心乃春の一卵性の妹であり、皇宮の侍女をまとめる役職に就いている、と自己紹介をした。
「殿下、有耶無耶になったのではなく、私が皇宮内を統制して三ノ宮の御子への不可侵を認めさせたのです。
殿下と姪と姉のわがままを受け入れたこの私の働きがあればこそ。多少は評価して頂ければと存じますが」
「心乃夏には十分に尽くしてもらっているよ。いつもありがとう」
伊織の感謝を受けてもなお無表情の心乃夏。いつもの二人のやり取りなのだろう、と伊吹は受け取った。
「両陛下のご準備がもう間もなく整いますので、そろそろご移動をお願い致します」
「おや、じゃなくてお父様。両陛下ってもしかして……」
「俺の実の両親であり、お前の父方祖父母だな」
血統は世界で一番由緒正しいとはいえ、中身が一般人である伊吹は、緊張のあまりガタガタと震えだす。
「どうしよ、俺そんな礼儀とか作法とか分からねぇよ!」
「開き直れ、心乃夏の助言通りにやれば何とかなる。
この俺の両親だぞ? 公式の場では別だが、多少の失敗なんざ気にしないさ」
伊織の言葉がどこまで信じられるか分からない為、伊吹はあわあわし続ける。
「さぁ、こちらをお飲みになって落ち着いて下さいませ」
心乃夏が伊吹の口に盃を運び、半ば無理やり飲み込ませる。
「これ酒じゃないか!?
酔っぱらって失態犯したらどうするんですか!?」
「どうしようと思われている間は大丈夫でございます。ささ、参りましょう」
「いや、そもそも何をしに行くの!?
顔を合わせるだけ? 何かしらの儀式?」
取り乱す伊吹をよっこいせと立たせて、心乃夏が腕を引いて伊吹を誘導する。その後ろを楽し気について歩く伊織。
「写真撮影だよ、家族揃ってのな」
皇宮内の庁舎中央玄関上のバルコニー、真ん中に黒の燕尾服で正装をした皇王が立ち、その左に純白のロングドレス姿の皇后が控える。
皇王、皇后の右隣に伊織、藍子、伊吹、燈子の順番で立ち、伊吹達三人は言われた通りに階下参列客や報道陣に向けて手を振っている。
「お、お父様? 僕の皇位継承順位だけでも今すぐに教えてもらえません?」
口を動かさず、笑顔を張り付けたまま小声で伊織へと問いかける伊吹。
伊織も口を動かさないまま答える。
「お前は三位だよ。三ノ宮だからな」
皇位継承順位の一位が皇太子である伊織だとして、自分が三位ならばやはり兄がいるのではないか、いや叔父がいるのか、などと伊吹が考え込んでいる間に、顔見せの時間が終わり、全員がバルコニーから室内へと戻る。
先ほどと同じ並びで立ち、足を引き、背筋を伸ばし、顎を引いて、とカメラマンに言われるがまま伊吹が姿勢を変える。
藍子も燈子も同じように指示を受けて、撮影が終わる。
ソファーへ誘導され、皇王と皇后の真ん前の位置へ座るよう促され、伊吹はまた極度の緊張に襲われる。
「めでたい。今日は良き日だ」
「えぇ、とっても良き日でございますわ」
ニコニコと伊吹、藍子、燈子を眺める祖父母に対し、伊吹が意を決して口を開く。
「皇王陛下、皇后陛下。
お初にお目に掛かります、伊吹と申します。
この度は私達の結婚の儀に際し、お時間を賜りましてありがとうございます」
「うん。心乃春から時々写真が送られて来ていたからね、初めて会ったような気がしないよ」
心乃春は心乃夏経由で伊吹の成長を皇宮へ報告していたのだ。いくら娘である咲弥の遺言とはいえ、最低限必要の連絡はしていたのである。
「皇王陛下。私を見守って下さいまして、ありがとうございます。
お陰様で、このような素晴らしい妻達と出会い、結ばれる事が出来ました」
皇王が伊吹へ頷いてみせる。
「そして皇后陛下。妻達に大変貴重なお衣装をお貸し下さいましてありがとうございます」
「お衣装は着てこそ本当の価値がございます。とてもお似合いで良かったわ」
皇后が藍子と燈子の手を取って微笑み、そう伝える。
二人は恐縮と感動で震え、うるうると目に涙を浮かべている。
「両陛下、そろそろお時間でございます」
心乃夏が声を掛け、皇王と皇后がソファーを立つ。
「またの機会にゆっくりと話そう。
ふふっ、Alphadealとの一件はなかなかに胸がすく思いだったぞ。
さすが伊織と咲弥の子だ、わんぱくで大いに結構!」
皇王が口角を上げ、不敵な笑みを浮かべる。
先ほどまでの朗らかな印象からがらりと変わった事で、伊吹は背中に冷や汗が吹き出る。
「あなた」
「おっと。それでは、また近いうちにね」
伊吹、藍子、燈子が頭を下げて皇王、皇后を見送る。
二人と入れ替わるように、伊吹と同い年ほどの燕尾服姿の青年が室内へ入って来た。
「兄上。ご結婚おめでとうございます」
「野望?」
「自分の孫を皇王にしたかったんじゃないか?」
浮かべていた笑顔が消え、心乃夏は無表情になってしまう。
心乃夏は心乃春の一卵性の妹であり、皇宮の侍女をまとめる役職に就いている、と自己紹介をした。
「殿下、有耶無耶になったのではなく、私が皇宮内を統制して三ノ宮の御子への不可侵を認めさせたのです。
殿下と姪と姉のわがままを受け入れたこの私の働きがあればこそ。多少は評価して頂ければと存じますが」
「心乃夏には十分に尽くしてもらっているよ。いつもありがとう」
伊織の感謝を受けてもなお無表情の心乃夏。いつもの二人のやり取りなのだろう、と伊吹は受け取った。
「両陛下のご準備がもう間もなく整いますので、そろそろご移動をお願い致します」
「おや、じゃなくてお父様。両陛下ってもしかして……」
「俺の実の両親であり、お前の父方祖父母だな」
血統は世界で一番由緒正しいとはいえ、中身が一般人である伊吹は、緊張のあまりガタガタと震えだす。
「どうしよ、俺そんな礼儀とか作法とか分からねぇよ!」
「開き直れ、心乃夏の助言通りにやれば何とかなる。
この俺の両親だぞ? 公式の場では別だが、多少の失敗なんざ気にしないさ」
伊織の言葉がどこまで信じられるか分からない為、伊吹はあわあわし続ける。
「さぁ、こちらをお飲みになって落ち着いて下さいませ」
心乃夏が伊吹の口に盃を運び、半ば無理やり飲み込ませる。
「これ酒じゃないか!?
酔っぱらって失態犯したらどうするんですか!?」
「どうしようと思われている間は大丈夫でございます。ささ、参りましょう」
「いや、そもそも何をしに行くの!?
顔を合わせるだけ? 何かしらの儀式?」
取り乱す伊吹をよっこいせと立たせて、心乃夏が腕を引いて伊吹を誘導する。その後ろを楽し気について歩く伊織。
「写真撮影だよ、家族揃ってのな」
皇宮内の庁舎中央玄関上のバルコニー、真ん中に黒の燕尾服で正装をした皇王が立ち、その左に純白のロングドレス姿の皇后が控える。
皇王、皇后の右隣に伊織、藍子、伊吹、燈子の順番で立ち、伊吹達三人は言われた通りに階下参列客や報道陣に向けて手を振っている。
「お、お父様? 僕の皇位継承順位だけでも今すぐに教えてもらえません?」
口を動かさず、笑顔を張り付けたまま小声で伊織へと問いかける伊吹。
伊織も口を動かさないまま答える。
「お前は三位だよ。三ノ宮だからな」
皇位継承順位の一位が皇太子である伊織だとして、自分が三位ならばやはり兄がいるのではないか、いや叔父がいるのか、などと伊吹が考え込んでいる間に、顔見せの時間が終わり、全員がバルコニーから室内へと戻る。
先ほどと同じ並びで立ち、足を引き、背筋を伸ばし、顎を引いて、とカメラマンに言われるがまま伊吹が姿勢を変える。
藍子も燈子も同じように指示を受けて、撮影が終わる。
ソファーへ誘導され、皇王と皇后の真ん前の位置へ座るよう促され、伊吹はまた極度の緊張に襲われる。
「めでたい。今日は良き日だ」
「えぇ、とっても良き日でございますわ」
ニコニコと伊吹、藍子、燈子を眺める祖父母に対し、伊吹が意を決して口を開く。
「皇王陛下、皇后陛下。
お初にお目に掛かります、伊吹と申します。
この度は私達の結婚の儀に際し、お時間を賜りましてありがとうございます」
「うん。心乃春から時々写真が送られて来ていたからね、初めて会ったような気がしないよ」
心乃春は心乃夏経由で伊吹の成長を皇宮へ報告していたのだ。いくら娘である咲弥の遺言とはいえ、最低限必要の連絡はしていたのである。
「皇王陛下。私を見守って下さいまして、ありがとうございます。
お陰様で、このような素晴らしい妻達と出会い、結ばれる事が出来ました」
皇王が伊吹へ頷いてみせる。
「そして皇后陛下。妻達に大変貴重なお衣装をお貸し下さいましてありがとうございます」
「お衣装は着てこそ本当の価値がございます。とてもお似合いで良かったわ」
皇后が藍子と燈子の手を取って微笑み、そう伝える。
二人は恐縮と感動で震え、うるうると目に涙を浮かべている。
「両陛下、そろそろお時間でございます」
心乃夏が声を掛け、皇王と皇后がソファーを立つ。
「またの機会にゆっくりと話そう。
ふふっ、Alphadealとの一件はなかなかに胸がすく思いだったぞ。
さすが伊織と咲弥の子だ、わんぱくで大いに結構!」
皇王が口角を上げ、不敵な笑みを浮かべる。
先ほどまでの朗らかな印象からがらりと変わった事で、伊吹は背中に冷や汗が吹き出る。
「あなた」
「おっと。それでは、また近いうちにね」
伊吹、藍子、燈子が頭を下げて皇王、皇后を見送る。
二人と入れ替わるように、伊吹と同い年ほどの燕尾服姿の青年が室内へ入って来た。
「兄上。ご結婚おめでとうございます」
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