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第十六章:なぎなみ動画始動
一年の振り返り
『それでは、今年起こった男性にまつわる出来事をおさらいしてみましょう』
皇紀二七〇二年(西暦2042年)十二月三十一日、大晦日の夜。
VividColors新社屋、治ノ塔の食堂フロア。
襖で仕切られた十二畳ほどの個室。畳が敷かれ、こたつが設置されている。
大型のテレビには年末の報道特番が映されており、伊吹と妻の八人が寛ぎながらそれを眺めている。
『そして今年一番の大事件と言っても過言ではないでしょう。
今年七月、某県某所にて男性様の自宅が何者かに襲撃されるという事件が発生。
男性様に危害が及ばなかったものの、事件発生の責任を取って男性保護大臣と警察庁長官が辞任するという結果になりました。
襲撃犯は逮捕され、現在も裏に組織や団体が関与しているのではないかと捜査が続けられています』
こたつに入っているのは、伊吹から見て左手に美哉、その奥に智枝。対面に藍子と燈子。右手に橘香、その奥に琥珀。
そして伊吹の両隣に紫乃と翠が座っている。この二人はじゃんけんで勝ったのだ。
『そして同じく、今年一番の良い意味での大事件が起こりました。
そう、VividColorsから男性Vtunerとして安藤家の四兄弟がデビューされたのです!』
「アナウンサーがこんなに興奮して良いのかな、これ報道番組でしょ?
苦情とか来ない?」
「淡々と伝える方が苦情が来そうですけど。
はい、あーん」
翠が伊吹の疑問に答えつつ、箸で掴んだ数の子を食べさせる。すでに夕食自体は済ませているが、年末年始の雰囲気を味わうべく、こうして早めのお節を摘まんでいるのだ。
伊吹は飲酒を好まない為、お酒は出ていない。伊吹は飲んでも怒らないが、妻達もそれほど飲みたい訳ではない。
ちなみに美子と京香は遠慮して、宛がわれた部屋に引っ込んでいる。
『この安藤家四兄弟の人気もすごいですが、同じくらいに人々を魅了するのはVC副社長です。この方こそが安藤家の四兄弟の中の人。今や知らない国民はいないと言っても過言ではないでしょう。
VividColorsの社長に声を掛けられたと話しておられる副社長ですが、経歴は謎に包まれています。それがまた世の女性を惹き付ける魅力なのではないでしょうか』
テレビにはドット絵のお面を付けた狩衣姿の伊吹と、安藤家四兄弟が映し出されている。テレビ局に協力を依頼され、写真の提供をしているのだ。
今や、生配信も新しい動画も「なぎなみ動画」でしか見れない為、写真がテレビで使われるだけで宣伝になるという理由だ。
伊吹が面倒なのでマスコミを極力敵に回したくないと発言したのも理由の一つだ。
「画面越しではお館様の魅力が十分に伝わらないのが残念でなりません。
はい、どうぞ」
紫乃が里芋を伊吹の口元へ運ぶ。
「……さっきから数の子と里芋ばっかりだな。
子孫繁栄は僕だけの力では何とも出来ないよ?」
その言葉を聞いて、ようやく翠と紫乃が伊吹に食べさせて自分でもパクパク食べていた理由に気付いたのか、美哉と橘香を除く五人が急いで数の子と里芋に箸を伸ばす。
『VividColorsの躍進効果もあり、近年鈍化していた日本の経済成長率が今年度の下半期から急速に上昇していると専門家が分析しております。
また、VividColorsとの関係構築で失態を演じたGoolGoalを抱えるAlphadealは、たった三ヶ月で株価が三割も低下しました。
このGoolGoalショックと呼ばれる出来事に起因して、欧米諸国では全面的な株安を記録。
一方、VividColorsとの関係が深い宮坂財閥系列企業の株価上昇に起因して、全世界で日本関連株が軒並み上昇しております。
経済学者はこの好景気を天照景気と名付け、副社長の影響力は世界を動かす光となり得ると話しています。
ただ、天照大神は女神であり、副社長は男性様なのだから素戔嗚尊景気と名付けるべきだと主張する民俗学者と対立が深まり……』
「年明けって誰が来るんだろうねぇ」
藍子が数の子を食べ終わり、お腹をゆっくりと撫でながらそう呟く。
「何か警備の都合上誰が来るとか言えないらしい、ってメアリーさんから聞いたけど」
メアリーとその娘であるマチルダは、ジニーとキャリーとイリヤを自宅に招いて日本の年末年始を楽しんでいる。
マチルダはこちらへ来たがったが、メアリーがそれを許さなかった。マチルダは中身が大人であるとしても、実の母親には強く出れない為、素直に従っている。
「……その時点で誰かしら男が来るって言ってるようなもんじゃない?」
「そうなんだよねぇ。だから多分、Alphadealで一番権限持ってる人物とかかな」
燈子の疑問に伊吹が答える。
こういう仕事関係の場合、意見を求められない限りは美哉も橘香も口を出さないようにしている。疑問に思ったり違和感があったりした際は積極的に口を出してくれ、と伊吹からお願いされているが、今は特に何もないようだ。
「歓迎の用意とかしといた方が良いのかな。
琥珀、どう思う?」
外部からの来客がある場合は、琥珀がもてなしなどを担当する事になっている。
「この場合、事前にはっきりと男性様の来客があると言われた訳ではないので、難しいですね。
こちらが正式に招待した訳でもないので、宿泊の手配も本来であれば必要ないのですが」
米国からわざわざ日本に来る訳だから、普通であれば事前に宿を取っているはずだ。
こちらから招待したのであれば泊まる部屋は用意しているから気にするな、と来客に対して言えるのだが、今回は当てはまらない。
「まぁ、臨機応変に対応するって事でいいかな。
別にAlphadealと関係が悪くなっても問題ないし」
落ち目のYourTunesに対し、飛ぶ鳥を落とす勢いの「なぎなみ動画」。すでに「なぎなみ動画」へ投じられている経費の採算が合う目処が立っているので、こちらが気を遣う必要なないだろと伊吹は判断した。
皇紀二七〇二年(西暦2042年)十二月三十一日、大晦日の夜。
VividColors新社屋、治ノ塔の食堂フロア。
襖で仕切られた十二畳ほどの個室。畳が敷かれ、こたつが設置されている。
大型のテレビには年末の報道特番が映されており、伊吹と妻の八人が寛ぎながらそれを眺めている。
『そして今年一番の大事件と言っても過言ではないでしょう。
今年七月、某県某所にて男性様の自宅が何者かに襲撃されるという事件が発生。
男性様に危害が及ばなかったものの、事件発生の責任を取って男性保護大臣と警察庁長官が辞任するという結果になりました。
襲撃犯は逮捕され、現在も裏に組織や団体が関与しているのではないかと捜査が続けられています』
こたつに入っているのは、伊吹から見て左手に美哉、その奥に智枝。対面に藍子と燈子。右手に橘香、その奥に琥珀。
そして伊吹の両隣に紫乃と翠が座っている。この二人はじゃんけんで勝ったのだ。
『そして同じく、今年一番の良い意味での大事件が起こりました。
そう、VividColorsから男性Vtunerとして安藤家の四兄弟がデビューされたのです!』
「アナウンサーがこんなに興奮して良いのかな、これ報道番組でしょ?
苦情とか来ない?」
「淡々と伝える方が苦情が来そうですけど。
はい、あーん」
翠が伊吹の疑問に答えつつ、箸で掴んだ数の子を食べさせる。すでに夕食自体は済ませているが、年末年始の雰囲気を味わうべく、こうして早めのお節を摘まんでいるのだ。
伊吹は飲酒を好まない為、お酒は出ていない。伊吹は飲んでも怒らないが、妻達もそれほど飲みたい訳ではない。
ちなみに美子と京香は遠慮して、宛がわれた部屋に引っ込んでいる。
『この安藤家四兄弟の人気もすごいですが、同じくらいに人々を魅了するのはVC副社長です。この方こそが安藤家の四兄弟の中の人。今や知らない国民はいないと言っても過言ではないでしょう。
VividColorsの社長に声を掛けられたと話しておられる副社長ですが、経歴は謎に包まれています。それがまた世の女性を惹き付ける魅力なのではないでしょうか』
テレビにはドット絵のお面を付けた狩衣姿の伊吹と、安藤家四兄弟が映し出されている。テレビ局に協力を依頼され、写真の提供をしているのだ。
今や、生配信も新しい動画も「なぎなみ動画」でしか見れない為、写真がテレビで使われるだけで宣伝になるという理由だ。
伊吹が面倒なのでマスコミを極力敵に回したくないと発言したのも理由の一つだ。
「画面越しではお館様の魅力が十分に伝わらないのが残念でなりません。
はい、どうぞ」
紫乃が里芋を伊吹の口元へ運ぶ。
「……さっきから数の子と里芋ばっかりだな。
子孫繁栄は僕だけの力では何とも出来ないよ?」
その言葉を聞いて、ようやく翠と紫乃が伊吹に食べさせて自分でもパクパク食べていた理由に気付いたのか、美哉と橘香を除く五人が急いで数の子と里芋に箸を伸ばす。
『VividColorsの躍進効果もあり、近年鈍化していた日本の経済成長率が今年度の下半期から急速に上昇していると専門家が分析しております。
また、VividColorsとの関係構築で失態を演じたGoolGoalを抱えるAlphadealは、たった三ヶ月で株価が三割も低下しました。
このGoolGoalショックと呼ばれる出来事に起因して、欧米諸国では全面的な株安を記録。
一方、VividColorsとの関係が深い宮坂財閥系列企業の株価上昇に起因して、全世界で日本関連株が軒並み上昇しております。
経済学者はこの好景気を天照景気と名付け、副社長の影響力は世界を動かす光となり得ると話しています。
ただ、天照大神は女神であり、副社長は男性様なのだから素戔嗚尊景気と名付けるべきだと主張する民俗学者と対立が深まり……』
「年明けって誰が来るんだろうねぇ」
藍子が数の子を食べ終わり、お腹をゆっくりと撫でながらそう呟く。
「何か警備の都合上誰が来るとか言えないらしい、ってメアリーさんから聞いたけど」
メアリーとその娘であるマチルダは、ジニーとキャリーとイリヤを自宅に招いて日本の年末年始を楽しんでいる。
マチルダはこちらへ来たがったが、メアリーがそれを許さなかった。マチルダは中身が大人であるとしても、実の母親には強く出れない為、素直に従っている。
「……その時点で誰かしら男が来るって言ってるようなもんじゃない?」
「そうなんだよねぇ。だから多分、Alphadealで一番権限持ってる人物とかかな」
燈子の疑問に伊吹が答える。
こういう仕事関係の場合、意見を求められない限りは美哉も橘香も口を出さないようにしている。疑問に思ったり違和感があったりした際は積極的に口を出してくれ、と伊吹からお願いされているが、今は特に何もないようだ。
「歓迎の用意とかしといた方が良いのかな。
琥珀、どう思う?」
外部からの来客がある場合は、琥珀がもてなしなどを担当する事になっている。
「この場合、事前にはっきりと男性様の来客があると言われた訳ではないので、難しいですね。
こちらが正式に招待した訳でもないので、宿泊の手配も本来であれば必要ないのですが」
米国からわざわざ日本に来る訳だから、普通であれば事前に宿を取っているはずだ。
こちらから招待したのであれば泊まる部屋は用意しているから気にするな、と来客に対して言えるのだが、今回は当てはまらない。
「まぁ、臨機応変に対応するって事でいいかな。
別にAlphadealと関係が悪くなっても問題ないし」
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