仔羊が狼になって帰って来た

なつのさんち

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獲物を追い詰める狼

裾上げ

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 洋太は真智子からズボンを2本受け取り、すぐにカーテンを閉めてしまった。
 マナーとして試着済みのズボンをすぐにでも棚に戻したい性分の真智子。洋太に声を掛けてズボンを受け取るべきか迷っていると、不意にカーテンが開いた。

「……どうっスか?」

 顔が赤らんだまま、しかし努めて無表情を装っている洋太。先ほどの出来事などなかったと言いたげな雰囲気。

「うーん、いいんじゃない? しゃがんでみて」

 洋太がそのつもりならば、と真智子も何事もなかったかのように試着したズボンの着心地を確かめさせる。

「……しゃがむのは、ちょっと」

「あっ……、じゃあ膝曲げればいいんじゃない?」

 なかった事には出来なかった。まだ洋太のそれは存在感を示しているのだろう。
 その状態でしゃがむのが困難であるという認識が、真智子の中にはなかった。
 洋太はまた顔を真っ赤にさせて、左右の膝を折り曲げてみる。曲げては伸ばし、曲げては伸ばしを繰り返す。
 血流を促して溜まっている血を逃がそうとしているのだが、効果があるかどうかについては不明である。
 真智子も洋太も言葉を発せずにいると、女性の店員が2人に声を掛けて来た。

「もしお決まりでしたら裾上げさせて頂きますがいかがでしょうか?」

「あっ、そうですね。洋太、どう?」

「……お願いします」

「かしこまりました。失礼致しますねー」

 真智子が店員へ場所を譲り、洋太が後ろに向き直る。店員がその場でしゃがみ込み、裾を折って長さを調節する。

「裾の長さはこの程度でよろしいでしょうか?」

「っス」

 洋太の返事を受けて、店員が裾を仮留めする。もう1本はどうするかと尋ね、洋太がそちらもお願いしたいと返事をした。
 一度カーテンを閉め、洋太が仮留めしたズボンを脱いで裾上げをしてもらうべくもう1本のズボンに履き替えている最中。

「彼氏さん、足長いですねぇ。他の方ならもっと裾を上げないとダメなんですよ」

「えぇっ!? あ……、そうなんですか」

 店員から彼氏、というワードが出て来た事に驚いて声を上げる真智子。しかしここで否定しても何の意味もなく、勘違いされたままでも何の問題もないのでスルーする事にした。
 再びカーテンを開けて出て来た洋太の顔は、先ほど以上に真っ赤に染まっていた。
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