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X+3回目のループ
秘密会議
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今現在、時恵は心音を次のループに連れて行くつもりはない。ないのだが、実際は時恵にとってまずい状況である。
「ねぇ記代子ちゃん。時恵ちゃんが時間を戻すのって、どうやるの?」
「えっ!? ……っと」
(手を握られて、光に包まれたら時間が戻ってるけど、戻し方なんて分からないから分からないって言えばいいよね)
「教えてもらってないから分かんないかなー」
「へぇー、手を握れば連れて行ってもらえるんだねー」
「あぁ……」
(それも知られちゃまずい事だったかも知れないのか……、私では心音ちゃんに隠し事出来ないよー!)
心音は記代子の心の声を聞き、時恵の超能力の行使の仕方を知ってしまった。心音に隠し事は難しい。
いや、実際は記代子のように記憶を読むのではなく、あくまで心の声を聞くだけなので、心音対策として有効な手段を用いれば隠し事も出来るかも知れないが、そんな今となっては手遅れだ。
時恵がその手段や方法を知っていたとしても、すでにある程度の情報を持っている記代子は心音に捕まってしまっているのだ。
そして何より、時恵自身が心音に近付こうとしない為、対策などないのだと心音に対して白状しているようなものだ。
(記代には次のループから気を付けさせるにしても、今回をどう逃げ切るか……)
時恵としては今の記代子を連れて次のループへ行きたい。渡を失う原因となった記代子。自分に対する負い目を持った状態の記代子が、時恵の明日には必要なのだ。
しかしそれはもう、不可能に近い。
「記代子ちゃんはもう何回も一緒に繰り返してるんだよね?」
「う……ん、3回目だね」
(何を知ろうとしているの!?)
ニコニコと記代子の瞳を見つめながら問い掛ける心音。記代子がどれだけ構えて、どれだけ気を付けて返事をしようとも、心音には伝わってしまう。
「そんなに焦らなくてもいいよ、自然に自然にリラックスぅ~」
「そうやってリラックスさせて私から時恵の情報を抜き取ろうとしてるんでしょう!?」
心音の超能力に対応出来るセキュリティソフトはない。しかし心音自身もこの超能力を得てから10時間も経っていないのだ。まだ使い方に慣れていないだろう。冷静に対応すればまだ隠し通せる事もあるはずだ。
(心音に知られ過ぎたら時恵が困るはず。支えになってくれって言われて一緒にループしてるんだから、私がしっかりしないと!!)
「へぇ、じゃあ時恵ちゃんは絶対に記代子ちゃんを失いたくないはずだね。ボクは常に記代子ちゃんの隣にいるだけで、次のループに連れて行ってもらえるね♪」
「あっ!!?」
焦れば焦るほど墓穴を掘ってしまう記代子。心音が心理戦に強いというよりは、単純に記代子がプレッシャーに弱いだけである。
「いいよ、記代。心音が悪いコじゃないって私は知ってるから。ちゃんと事情を話せば分かってくれるから大丈夫」
「分かってくれる? 時恵ちゃんはボクに何を分かってほしいのかな? 辛い現状? それとも何を求めているか?
まさか、黙って2人が次のループへ向かうのを見送れって事じゃ、ないよね?」
「ひぃっ!?」
記代子が仰け反る。心音の目からハイライトがなくなり、目つきがヤンデレのそれになったからだ。
(冗談にしても怖すぎる……)
「冗談なんかじゃないよ。今の今まで隠してた、バレないように気を付けてた恋心を、その相手が知っているって分かったんだ。もう隠す必要ないんだよ? しかも、その好きな人が窮地に陥ってるんだ。ボクが黙っていられる訳ないよ。何としてでも仲間に入れてもらって、近くで一緒に頑張りたい。力になりたい。共に乗り越えたい!
永遠に終わらないのならそれでもよし、だしね……」
「だからそのストーカーちっくな考え方が怖いんだって!!」
2人のやり取りを眺めながらため息をつく時恵。彼女にとってはこのような光景も、記憶のどこかに存在する。だからこそ懐かしいと感じるし、だからこそ心地良い。
そして、だからこそまた失う事を恐れる。
(連れて行くべきか、否か……)
時恵としては、心音なしでこのループを終わらせる事が出来るのであればそれが一番だ。そのエンディングに、記代子の存在が絶対に必要。
しかし、心音がいては辿り着けないという訳ではない。何故なら、このラストを思い付いたのは今の記代子がきっかけだから。心音に現在の計画、時恵の心づもりを話した事はないからだ。
(いっその事、打ち明けてみようか……)
それはある種の賭け。万が一賭けに負けてしまったら、今の記代子を置いたまま次のループへ行かなければならないかも知れない。
「へぇ~~~!! 時恵ちゃんが2人!? なら1人は渡君のでもう1人はボクのだ、分け分け出来るじゃん!!」
「だから何でそんな事まで分かっちゃうの!?」
時恵が改めて説明する必要もなく、事前情報が心音に伝わって行っている。映画やアニメの話でもなく、時恵の狂言でもなく、真実として受け止めてくれている。
そして、これ以上ないくらいに時恵に対して好意的。強力な仲間である事は時恵の記憶によって裏付けされている。
(あとは私の心づもりを聞いて、心音が協力してくれるかどうか)
こればかりは伝えてみないと分からない。しかしもう、心音を避けて通れなくなってしまった。記代子を人質に取られた形で、時恵の心へと接近しようとしている心音。
「白とピンク! いいなぁいいなぁ、心の声だけじゃなくて視覚も嗅覚も触覚も聴覚も味覚も全部覗けたら良かったのに!!」
「怖い怖い怖いから! ガチじゃん!!」
ガチ百合の心音に対し、自分の心を曝け出し、どこまで耐えられるか。安全を取るか、それとも勝負に出るか。
時恵にとっての救いは、心音が元から友達だったという事。例えその友達が、自分を恋愛対象として見ていたとしても、時恵が寄せる信頼は確かに心音が築いたものだから。
その延長線上にいる、今の心音。その心音を信じるか信じないかは、今の時恵次第なのだ。
(よし……)
一つ深呼吸して、友達の名を呼ぶ。
「心音、今から事情を説明する」
そして立ち上がり、心音の持つ超能力の、その射程範囲内へ踏み込む。
(けど、記代には知られたくない情報があるの。だから黙って私のこの声を聞いていてほしい)
時恵の見つめる先、神妙な面持ちで頷く心音。こうして、2人だけの秘密会議が始まったのだった。
「ねぇ記代子ちゃん。時恵ちゃんが時間を戻すのって、どうやるの?」
「えっ!? ……っと」
(手を握られて、光に包まれたら時間が戻ってるけど、戻し方なんて分からないから分からないって言えばいいよね)
「教えてもらってないから分かんないかなー」
「へぇー、手を握れば連れて行ってもらえるんだねー」
「あぁ……」
(それも知られちゃまずい事だったかも知れないのか……、私では心音ちゃんに隠し事出来ないよー!)
心音は記代子の心の声を聞き、時恵の超能力の行使の仕方を知ってしまった。心音に隠し事は難しい。
いや、実際は記代子のように記憶を読むのではなく、あくまで心の声を聞くだけなので、心音対策として有効な手段を用いれば隠し事も出来るかも知れないが、そんな今となっては手遅れだ。
時恵がその手段や方法を知っていたとしても、すでにある程度の情報を持っている記代子は心音に捕まってしまっているのだ。
そして何より、時恵自身が心音に近付こうとしない為、対策などないのだと心音に対して白状しているようなものだ。
(記代には次のループから気を付けさせるにしても、今回をどう逃げ切るか……)
時恵としては今の記代子を連れて次のループへ行きたい。渡を失う原因となった記代子。自分に対する負い目を持った状態の記代子が、時恵の明日には必要なのだ。
しかしそれはもう、不可能に近い。
「記代子ちゃんはもう何回も一緒に繰り返してるんだよね?」
「う……ん、3回目だね」
(何を知ろうとしているの!?)
ニコニコと記代子の瞳を見つめながら問い掛ける心音。記代子がどれだけ構えて、どれだけ気を付けて返事をしようとも、心音には伝わってしまう。
「そんなに焦らなくてもいいよ、自然に自然にリラックスぅ~」
「そうやってリラックスさせて私から時恵の情報を抜き取ろうとしてるんでしょう!?」
心音の超能力に対応出来るセキュリティソフトはない。しかし心音自身もこの超能力を得てから10時間も経っていないのだ。まだ使い方に慣れていないだろう。冷静に対応すればまだ隠し通せる事もあるはずだ。
(心音に知られ過ぎたら時恵が困るはず。支えになってくれって言われて一緒にループしてるんだから、私がしっかりしないと!!)
「へぇ、じゃあ時恵ちゃんは絶対に記代子ちゃんを失いたくないはずだね。ボクは常に記代子ちゃんの隣にいるだけで、次のループに連れて行ってもらえるね♪」
「あっ!!?」
焦れば焦るほど墓穴を掘ってしまう記代子。心音が心理戦に強いというよりは、単純に記代子がプレッシャーに弱いだけである。
「いいよ、記代。心音が悪いコじゃないって私は知ってるから。ちゃんと事情を話せば分かってくれるから大丈夫」
「分かってくれる? 時恵ちゃんはボクに何を分かってほしいのかな? 辛い現状? それとも何を求めているか?
まさか、黙って2人が次のループへ向かうのを見送れって事じゃ、ないよね?」
「ひぃっ!?」
記代子が仰け反る。心音の目からハイライトがなくなり、目つきがヤンデレのそれになったからだ。
(冗談にしても怖すぎる……)
「冗談なんかじゃないよ。今の今まで隠してた、バレないように気を付けてた恋心を、その相手が知っているって分かったんだ。もう隠す必要ないんだよ? しかも、その好きな人が窮地に陥ってるんだ。ボクが黙っていられる訳ないよ。何としてでも仲間に入れてもらって、近くで一緒に頑張りたい。力になりたい。共に乗り越えたい!
永遠に終わらないのならそれでもよし、だしね……」
「だからそのストーカーちっくな考え方が怖いんだって!!」
2人のやり取りを眺めながらため息をつく時恵。彼女にとってはこのような光景も、記憶のどこかに存在する。だからこそ懐かしいと感じるし、だからこそ心地良い。
そして、だからこそまた失う事を恐れる。
(連れて行くべきか、否か……)
時恵としては、心音なしでこのループを終わらせる事が出来るのであればそれが一番だ。そのエンディングに、記代子の存在が絶対に必要。
しかし、心音がいては辿り着けないという訳ではない。何故なら、このラストを思い付いたのは今の記代子がきっかけだから。心音に現在の計画、時恵の心づもりを話した事はないからだ。
(いっその事、打ち明けてみようか……)
それはある種の賭け。万が一賭けに負けてしまったら、今の記代子を置いたまま次のループへ行かなければならないかも知れない。
「へぇ~~~!! 時恵ちゃんが2人!? なら1人は渡君のでもう1人はボクのだ、分け分け出来るじゃん!!」
「だから何でそんな事まで分かっちゃうの!?」
時恵が改めて説明する必要もなく、事前情報が心音に伝わって行っている。映画やアニメの話でもなく、時恵の狂言でもなく、真実として受け止めてくれている。
そして、これ以上ないくらいに時恵に対して好意的。強力な仲間である事は時恵の記憶によって裏付けされている。
(あとは私の心づもりを聞いて、心音が協力してくれるかどうか)
こればかりは伝えてみないと分からない。しかしもう、心音を避けて通れなくなってしまった。記代子を人質に取られた形で、時恵の心へと接近しようとしている心音。
「白とピンク! いいなぁいいなぁ、心の声だけじゃなくて視覚も嗅覚も触覚も聴覚も味覚も全部覗けたら良かったのに!!」
「怖い怖い怖いから! ガチじゃん!!」
ガチ百合の心音に対し、自分の心を曝け出し、どこまで耐えられるか。安全を取るか、それとも勝負に出るか。
時恵にとっての救いは、心音が元から友達だったという事。例えその友達が、自分を恋愛対象として見ていたとしても、時恵が寄せる信頼は確かに心音が築いたものだから。
その延長線上にいる、今の心音。その心音を信じるか信じないかは、今の時恵次第なのだ。
(よし……)
一つ深呼吸して、友達の名を呼ぶ。
「心音、今から事情を説明する」
そして立ち上がり、心音の持つ超能力の、その射程範囲内へ踏み込む。
(けど、記代には知られたくない情報があるの。だから黙って私のこの声を聞いていてほしい)
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