お坊ちゃまはシャウトしたい ~歌声に魔力を乗せて無双する~

なつのさんち

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元日本人であるお坊ちゃまにこの世界の魔法は通用しない

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 心配そうに見つめるカーニャに向かって、笑い掛ける。

「俺にとっては大抵の魔法、痛くも痒くもならん」

 おっと、馬鹿息子が指を差して怒っている。
 俺とカーニャが仲良く喋っているのが気に食わないようだ。
 
「私の物、私の物だったのだ!
 よくもよくもよくもーーー!!
 殺す殺す殺す殺―――す、甚振って辱めて女共に与えて壊れるまで弄ばれてから死ねーーー!!!」

「うぐっ……!!」

 俺への呪詛なのに何でカーニャの傷が開くかねぇ。
 止血していたのにまた出血し始めたようだ。
 俺はわざと馬鹿息子へ見えるようカーニャの頭を撫でてやり、そして顎に手をやって瞳を覗き込む。

「気を確かに持て。
 こんな魔法、どうという事はないだろ」

「しかしっ……!!」

「ちょっと肩に触れるぞ?」

 カーニャの肩に手を当てて、『痛いの痛いの飛んで行けぇ~♪』と歌う。
 するとどうだ、ほらもう傷が治っている。

「い、痛みがなくなった……?」

 まぁ包帯の下だから実際に治ってんのかどうなのか見てみないと分からんが。
 カーニャが三角巾から腕を出し、ぐるぐると肩を回しているのでほぼ治ったと見て間違いないだろう。

「あいつと決着を付ける。
 お前は下に降りておけ、これは命令だ」

 素直に聞いてくれなさそうだったので、抱き締めて耳元で囁いてカーニャへ命令する。
 はい……、と小さく返事をしたカーニャを櫓から降りるよう手を引いてやる。
 俺が背中を向けたのがよほど気に入らなかったのか、さらに声を上げて魔法を放って来る馬鹿息子。

「きーーさーーーまーーーーー!!!」

 ハイハイなぁに、っと。
 お前が何を言おうがどんな感情を乗せて魔法を放とうが、元日本人である俺にとっては効果がないんだよーだ。
 少し幼稚になってしまっているな、頭に血が上っている証拠だ。
 気を付けないとな。
 怒っている時ほど冷静に。
 さて、望み通り馬鹿息子の相手をしてやりますかね。

「若様もお降り下さいませっ!!」

 辛そうな表情の武官が俺へ櫓から降りて前線から後退しろと叫ぶ。

「必要ない」

 何故なら馬鹿息子の叫び声なんて、俺の耳には何かのキャラクターの鳴き声にしか聞こえないのだから。

「死ね死ね死ね殺す殺す殺す死なす死なす殺して死なす死んでも殺すぅぅぅ!!!」

 この世界の言語ではそう叫んでいるこの声も、俺の日本語フィルターを通す事によりこのように聞こえている。

『ぽーちゃぽちゃぽちゃぴっかーぴぃぷぷるっぽっぺーももももるすぁーーー!!!』

 こんな鳴き声を聞いて、身の危険を感じるほどの恐怖に陥る事などあるだろうかいやない。
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