お坊ちゃまはシャウトしたい ~歌声に魔力を乗せて無双する~

なつのさんち

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お坊ちゃま、月夜の平原へ向かう

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 義兄上の提案で、俺達は現在馬車に乗って移動中だ。
 辺境伯家の人間が全員揃って移動するとなると、例え近場であるとはいえ世話をする者や警備をする者など、かなりの大人数になる。
 両親とエティーが乗る馬車、姉上夫妻が乗る馬車、俺が乗る馬車と分かれての移動。

 エティーは俺と一緒に、と俺の馬車へ乗り込みかけたが、父上が止めに入った。
 年頃の息子と娘をうんぬん言っていたが、俺がエティーに手を出す訳がないだろうに。
 そもそも学院と実家との往復は常に同じ馬車で移動している。
 その際は俺が抱き着かれる側だ。
 移動もちょっと行ってすぐに着くというような短い距離ではない。
 途中で集落や村で休憩し、各代表者との面会を済ませて再び馬車に乗り込んだらすぐに抱き着かれる。
 嫌ではないし慣れてもいるが、これで本当に良いのだろうかと考える事は度々ある。
 エティーのブラコンはいつ治るのだろうかと、心配になる事もある。
 今日みたいに俺から抱き着くなんて本当に稀なんだから、そんなに目くじらを立てないでほしい。

 それにしても、もうすぐ辺りは真っ暗になるのに、何でこの時間帯なのかと思わなくもない。
 満月が綺麗だし、何よりも俺自身すごく歌いたいと思ったから構わないんだけど。
 俺達に付き合わされる形となった兵やメイド達には、後日何かしら埋め合わせをしようかな。

 だいたい午後七時過ぎくらいだろうか。
 今は夏だから、まだ完全には暗くなっていない。
 夏と冬で一日の長さが違うから、この世界も地球と同じように太陽を公転している惑星なのだろうと思っているが、詳しい事は分からない。
 分からないからと言って特に困った事はないから良しとしている。
 月は満ち欠けを繰り返しているので、少なくともあの衛星がこの世界を周回しているのは確かなはずだ。
 この世界の月は地球の月よりも少し大きいと思う。
 二回り分くらいかな。

 膝の上に乗っているミィチェが月を見上げて、羽をパタパタと動かしている。可愛い。
 屋敷を出る際、みんなで出掛ける事を察したのだろう。
 玄関を出る前にミィチェが俺の足下へ縋り付いて来たので連れて来てしまった。
 
「仲間外れは良くないもんなー」

「にゃ~~~♪」

 不思議だな、猫の鳴き声は地球と変わらない。
 鳴き声は一緒なのに背中には翼が生えている。
 それでも空を羽ばたけないのは同じ。

「お前の翼は何の為にあるんだろうな?」

「にゃー」

 ん? いつもよりも平坦な声色で鳴いたような気がする。
 気のせいか?

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