みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第6部 俺が『最強』になった理由《ワケ》

第17話 困ったら下ネタに走るのは、男子中学生の特権ですよね?

 寅美先輩の兄貴が、出雲愚連隊の総長だと判明して3日。

 そろそろ夏休みも中盤も8月の上旬。

 俺は元気と姉ちゃんを自宅のリビングに召集させつつ、本日の議題を口にしていた。



「寅美先輩がおかしい」
「……小娘がおかしいのは、いつもの事やんけ?」



 酷い言われようだった。



「いや、そうなんだけどさ! なんというか、ここ最近、特に輪をかけておかしいっていうか……。なっ、姉ちゃん?」

「う~ん。確かに最近の寅美は、ボーとしてたかと思ったら、急にサンバを踊り出したり、情緒不安定な所が多いな」

「そうなんだよっ! 今日だってホラ!」



 俺が我が家の庭の方へと視線を動かすと、そこにはスコップ片手に延々と穴を掘っている寅美先輩の姿があった。



「家に来たかと思ったら、ずっとセミのお墓を作ってるし!」
「かれこれ5時間くらいは作り続けてるよな?」
「何しに来たんや、あの小娘は? 嫌がらせか?」
「声をかけても『ピ●チュー、カ●リュー、ヤ●ラン、ピジ●ン』って初代ポ●モン151匹の名前を口ずさむだけで、なんのリアクションも返ってこないんだよ!?」



 そう、ここ最近の寅美先輩は異常だった。

 我が家に来ては何もない虚空を眺めたかと思ったら、急に笑い出したり。

 かと思えば突然、泣きながらブレイクダンスを踊りはじめたりと、正直に言って俺の手に余るのだ。



「どうしよう? このままじゃ寅美先輩、ジャリボーイより先にポ●モンマスターになっちゃうよ」
「なんで小娘は、そんな急に壊れたんや? ……って、理由は1つか」
「やっぱり、そう思うか?」
「……寅美のヤツ。兄貴との再会が、余程ショックだったんだろうなぁ」



 黙々とセミのお墓を作っている寅美先輩を眺めながら、俺たちは小さくため息を溢した。

 そりゃ、兄と慕っていた男に、あんなにハッキリと拒絶されたら、いくらポジティブ・バカな先輩でも、落ち込むわなぁ……。



「ちなみに愚弟、花丸INポイントノートは終わったのかよ?」
「あと1つ残ってる。けど、寅美先輩が『アレ』じゃあ……なぁ?」



 花丸INポイントノートの最後のお題『おつかいに行く』

 コレをクリアすれば、寅美先輩は大手を振って龍見の兄貴に会いに行くことが出来る!

 ――のだが……。



「なぁ、相棒? ぶっちゃけ、もうお題をクリアする意味なんか無くないか? 相棒やって見たやろ? 小娘の兄貴の態度を」
「それはまぁ……なぁ」



 正直、寅美先輩がコレ以上傷つくなら、兄貴には会わせたくない! というのが、俺の本音だ。

 けど、もうコレは寅美先輩と兄貴だけの問題じゃないという気持ちも、俺の中にはあった。

 なんというか……花丸INポイントノートは、もう俺たちの絆そのモノになっていて……。



「――仲直りさせるぞ」



 思考の迷路に迷い込もうとしていた俺の意識を、相変わらず家の中だとパンツ1丁の姉ちゃんの声が、現実世界へと引き戻した。



「気は進まんが、可愛い妹のためだ。寅美とあのクソアニキを仲直りさせるぞ。手伝え、カスども」
「流石は俺の姉ちゃんだ! そうこなくっちゃ!」
「ハァ……。まぁ、しょうがないわのぅ。了解や、姉御!」



 何やかんやで面倒見のいい姉ちゃんを筆頭に、『寅美先輩をお兄ちゃんと仲直りさせ隊!』を結成する俺たち。

 ふふっ♪ 俺たちの鋼の絆、寅美先輩に見せてやるぜ!



「よし。じゃあ、アタシが作戦を考えている間に、おまえら、寅美を笑顔にして来い。3分以内にな」

「「……えっ?」」

「ちなみに、出来なかったら、超有名なハッテン場の1つである上野駅13番ホームのトイレのキングとして、男を喰い散らかしてもらう」

「「えぇっ!?」」



 む、ムチャクチャ過ぎる!?

 どれくらいムチャクチャなのかと言えば、童貞が百戦錬磨のキャバ嬢を落とすくらいムチャクチャである。……無理ゲーなんだよなぁ、ソレ。



「ちょっ、姉ちゃん!? いきなりそんなコトを言われても!?」
「わ、ワイらは、どうすればいいんや!?」
「いーち、にぃ~、さ~ん」



 イカン!?

 姉ちゃんの口元が明らかにカウントを刻んでいる!?

 このままじゃ、上野駅13番ホームのトイレのキングとして君臨してしまう!?

 瞬間、元気が間髪入れずに寅美先輩のもとへと駆け出した。

 あっ!?

 あの野郎、抜け駆けする気だな!?



「なぁ、小娘? ちょっとええか?」
「あっ、マ●キー……」
「猿野やで?」



 元気は不自然なくらいニッコリ♪ と頬に笑みをたたえて。



「今から1発ゲイ……ごほんっ。1発芸をやるで? さぁ、ワイの股間に注目や」



 そう言って、元気は――ズボンを脱いだ。



「ほぅら、見てごらん? ……おっきくなっちゃ――ブルァァァッ!?」
「困ったら下ネタに走る男は、あたしは嫌いだ」



 元気がこの世における最底辺の1発ギャグを披露するよりも先に、姉ちゃんの拳が我が友の頬を捉えた。

 そのままフィギュアスケーターも真っ青の4回転ジャンプを決めると、勢いよく地面に激突し、動かなくなった。

 なるほど、もうすぐ俺も『あぁ』なるのか。



「元気ぃぃぃぃぃ~~~~~っ!?(笑)」
「なんで笑ってんだよ?」
「くっ! 元気、おまえの雄姿、ムダにはせんぞ!(爆)」
「いや、なんで爆笑してんだよ?」



 姉ちゃんが「次はおまえだ」と、俺に期待の眼差しを向けてくる。

 俺はそんな姉ちゃんの期待に応えるように、小さく笑みを溢した。



「安心してくれ、姉ちゃん。俺は知っている。人の心を開くときは、まずは己の心を裸にし、ぶつかっていかねばならぬ事を」
「ほぅ? 半人前のクセに、一丁前の事を言うじゃねぇか」
「見ていてくれ、姉ちゃん。これがアンタの弟の……生き様だあぁぁぁぁっっ!」



 俺はスコップを握り締めている寅美先輩のもとへと駆け出しながら――衣服を全て脱ぎ捨てた。



「あれれ~? もしかして、寅美か? 久しぶりぃ~っ! 元気だった? ……あれ、覚えてない? 俺だよ、俺! 小学校のとき同じ美化委員会だった!」



 俺は寅美先輩に向かって、大きく股を開き。



「ほら、覚えてないか? この大きなスコップ――」



 瞬間、姉ちゃんの右足が、俺のスコップ(自前)を蹴り上げていた。
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