みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第8部 ぽんこつMy.HERO

第11話 大バカ野郎と淫乱ピンク

 大和田ちゃんに二重ダブルスパイを任命された、その日の放課後。

 俺の優雅な放課後ティータイムは、彼女からのラインという名の呼び出しによって、儚く崩壊した。



のぶな『今すぐ1階の空き教室に集☆合!』



 テロンッ♪ と、可愛らしいクマのスタンプと共に送られてきたソレを、マジマジ見つめながら、ふと天井を見上げた。

 なんで彼女が俺のラインを知っているんだろう?

 なんて、この際どうでもいい!

 長年の経験から、俺はすでに直感していた。

 きっとコレは、さらなるトラブルが舞い込んでくる前兆に違いない!

 違いないのだが……残念なことに、分かっていても行かなきゃいけない。

 別にコレが『後輩からのお願い』だからとか、『元気やアマゾンからのラインなら、絶対に行ってねぇな』とか『もしかしたら、大和田ちゃんといい雰囲気になって、あまつさえキスできるんじゃないか?』とか、打算的なことを考えたから行くわけでもない。

 そう、俺は彼女に弱味を握られているから行くんだ。

 あっ! あと芽衣にも『協力するフリして妨害してこい!』ってお願いされてるしね!

 チッ……しょうがねぇからダッシュで行くよ!



「――おまたぁ? みんなのアイドル、シロウ・オオカミ、ただいま参上だよぉ☆」

「おそいっ! 何分待ったと思ってるし!」



 ガララッ! と、意気揚々と空き教室の扉を開けた俺を出迎えてくれたのは、『ピンクは淫乱!』でお馴染みの、大和田信菜ちゃんであった。

 適当に空いていた椅子に腰をかけ、大胆にも足を組み、不満気たっぷりな瞳で俺を射抜くその姿は、まさに現役SM嬢がプレイルームからテレポートしてきたかのようだ。

 おいおい?

 スカートのまま足を組むとか、パンツ見えちゃいますよ? 

 心の中で親指を立てながら、彼女のスカートの向こう側に広がるワンダーランドに想いを馳せていると、大和田ちゃんが不機嫌さを隠す事なく、



「ウチが呼びだしたら、3分以内に来ることが原則っしょ!」

「ご、ごめん? お詫びにキスしてあげるから、それで勘弁して?」

「あ、頭いてんのか!? どういう思考回路したら、そんなアンタッチャブルな結論になるし!? ちょっ、にじり寄ってくんな!」



 それ以上近づいたらグーパンだし! と、拳を俺の方に掲げながら、威嚇するようにシャーッ!? と唸る、我が後輩。

 あれれ?

 今のは『おっそ~い!? ウサギさんは、寂しいと死んじゃうんだゾ☆』って意味なんじゃねぇの?

 はっは~ん? なるほどな。

 これがツンデレか。

 おいおい、デレはどこいったよ?



「ハァ……お兄ちゃんが『喧嘩狼は頭がおかしいから、気をつけなさい』って言ってた意味が、ようやく分かったし」

「おやおや? タマキン兄さんと、俺の話をすることがあるわけ? 光栄だなぁ」

「誰がタマキン兄さんだし!? それもうタマキンが兄さんじゃない! って、女の子に何言わせるし!? このスケベ! ドスケベ! ド変態!」



 大和田ちゃんは、その切れ長の瞳でジロリッ! と俺を睨みつけると、今にも噛みつかんばかりの勢いで、



「言っとくけど、これ以上お兄ちゃんをバカにしたら、本気で許さないし!」

「1ミリもバカにした覚えがないんですが?」

「なんでそんなキョトンとした顔ができるワケ? あぁもう!? パイセンと話してたら、頭がおかしくなりそうで、嫌!」



 ムキーッ! と、突然発狂する大和田ちゃん。



「どうしたの、大和田ちゃん? そんな怒り狂って? あの日?」

「レディーに向かって何てことを言う、キサマッ!? はっ倒すぞ!?」

「それにしても、お兄ちゃんの事を大切にしているんだね。今のは士狼ポイントが高かったぞ☆」

「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇっ!?」



 超銀河系アイドルのようなシャウトが、鼓膜を震わせる。

 くぅ~っ!? いい声♪ 

 流石は俺の未来の妹なだけあるぜ!

 将来はアイドル、もしくは俺のお嫁さんかな?



「ところで、なんで俺は呼び出されたわけ? そんなに俺に会いたかったの?」

「ハァ、ハァ……!? きゅ、急に真面目な話をすんなし。あと、寝言は寝て言え」

「うわぁ、すげぇ辛辣じゃん……。俺がドMなら、今頃お礼を言ってるところだよ?」

「きっしょ」



 シンプルな罵倒が俺を襲う!

 それにしても、もう敬語で話してくれないあたり、俺のことを格下だと認識したのだろうか?

 それはそれで興奮……もとい、ちょっと寂しい。



「パイセンを呼んだ理由は2つ。1つはあの女、古羊芽衣の弱味に繋がる情報は入手できた?」

「おう、バッチリだ! アイツ、ゴキブリが苦手だってよ」

「……そんなの乙女は全員苦手に決まってるっしょ。弱味でも何でもないし」



 ガックリ! と、あからさまに肩を落とす大和田ちゃん。

 期待にえられずスマン、大和田ちゃん。

 今日はこの情報を言っておけって、芽衣に命令されてるんだわ。

 ちなみに芽衣がゴキブリ苦手というのも、ヤツの虚乳と同じく、真っ赤なウソである。

 アイツならゴキブリを見つけた瞬間、熟練の内野手のような動きで、キャッチ&お外へリリースする。

 そしてソレを近くで悲鳴をあげながら、よこたんと俺が見守る。

 まさに完璧なチームワークだ。

 いや、今はそんなこと別にいいか。



「まぁいいし。初日はこんなもんっしょ。それよりも、次の案件の方が大事だし。とりあえず、コレ見てよ、パイセン」

「ん? なになに、この紙切れ? 俺へのラブレター?」

「【死ね】という言葉しか思いつかないし……」



 純粋にキッショいなぁ、と侮蔑ごほうびの眼差しを向けてくる、大和田ちゃん。

 俺の未来のお嫁さんは、なんてサービス精神旺盛なんだろうか。惚れる!



「ラブレターワケないっしょ。コレはついさっき、ゲリラ新聞部が発行した、今年の生徒会長選挙の下馬評だし」



 とりあえず黙って読め!

 と、俺に無理やりその紙切れを持たせる、大和田ちゃん。

 可愛い後輩のおねだりだ、もちろん読ませていただくさ!

 俺は目を皿のようにして、舐めるように渡された紙切れに視線を這わせ「おぉ……」と、感嘆の吐息をはいた。



「ダントツで芽衣が1位じゃん」

「そっ。その次がウチ。……なんだけど、あの女との差が、2倍どころか4倍くらいあるワケ。腹立つことにね」



 チッ! と、苛ついたように軽く舌打ちをしてみせる、キュート☆ガール。

 いやはや、それにしても、分かっていたつもりではあったが、やっぱり芽衣って人気あるんだなぁ。

 さすがは学校1の美人姉妹の姉君だ。



「それで、ここからが本題なんだけど。どうすれば、この女の持っている票をウチが喰えると思う? 正直もう藁にもすがる気持ちだから、忌憚きたんない意見を言ってほしい。というか言え」

「う~ん? 忌憚ない意見ねぇ……」



 後輩に、しかも可愛い美少女に命令されるのは、どうしてこう胸が高鳴ってしまうのだろうか?

 別に俺はドMじゃないハズなのになぁ。

 なんてことを考えていると、ピコーン! と俺の頭の上で豆電球が光り輝いた。



「1つ、俺にいい案があるんだけどさ……聞く?」

「前置きはいいし。それで?」

「ぶっちゃけ、芽衣の票を奪う方法は思いつかない。けど、こっちの票を増やす方法なら思いついた」

「だから前置きが長いし。それで? その方法は何だし?」



 早く言え! と、急かす我が後輩に、俺は自信満々の笑みを深めて言ってやった。



「簡単なことよ。こっちの仲間を増やせばいいんだよ!」
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