王太子妃に興味はないのに

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「アン嬢、どうにかうまくやっているようで安心したよ。メアリー妃の元で苦労していないか心配していたんだ」
「ご心配いただきありがとうございます、レオさま。あの子はしっかり者ですので……」
「さすが、君が推薦しただけのことはあるね。ああそうだ、今晩はこれから父上に呼ばれていて……すまないが、先に休んでいてくれ」
「あら、かしこまりました。あ……――そうだわ、少しお待ちになって」

 私は棚の引き出しを開けて、取り寄せていた紅茶の葉の入った缶を取り出した。

「これは?」
「先日取り寄せたものですが、香りも味も素晴らしくて。せっかくですから、陛下とレオさまにも楽しんでいただこうかと。それに紅茶を飲むと気持ちが落ち着きますし、頭の痛みにも効くそうですから…….近頃、陛下はよくこめかみを押さえていらっしゃるでしょう? 先ほども珍しくワインではなくお水ばかり飲んでいらっしゃったし……」
「えっ、そうだったかい? 気がつかなかったな……気遣いありがとう、さっそく父上にも薦めてみるよ」
「ええ、そうなさって。厨房にお湯の用意を頼んで参りますわ」

 ――レオさまが陛下に呼び出されるとは、一体何のお話だろう。

「――……あら?」

 厨房を出て部屋に戻る途中で、慌てた様子の人影とすれ違った。

「アン……? 何をしているの、こんなところで」

 メアリーさまのお部屋やアンの部屋があるのは別の棟だ。
 アンが来た方向にあるのは……――。

「えっ、あっ……アイリスお姉さま……お姉さまこそどうなさったの? こんな遅くに」
「レオさまが陛下にお呼ばれなので、紅茶と軽食の用意を頼んできたところよ」
「ああ、そうだったの……びっくりした」
「近頃はゆっくり話せていないけれど、ここでの生活は慣れた? 辛くはないかしら」

 問いかける私に、アンは誇らしげに言った。大きな瞳には自信が満ちている。

「辛いことなんてないわ! 私、このお城で働くことができて本当に幸運よ。でも、今に見ていてお姉さま。私は侍女なんかで終わりたくはないの」

 そしてアンは意味ありげに笑みを浮かべると、そのまま足早に去っていった。
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