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「初めまして、イザベラ・リリーと申します」
愛する息子のテオが連れてきた婚約者を、私は一目見た時から気に入らなかった。
まず目は大きすぎるし、身体は細すぎる。あの娘が私の隣に立つと、まるで私が太っているように見えるのだ。
それに年齢も気に食わない。テオより六つも年上なんて。いくら見た目は若くても、わざわざ年上の女を選ばなくたっていいものを。
そして何より、出自が悪すぎる。聞けば娘は天涯孤独で、どこぞで下働きをしているらしい。みっともないったらない。
「テオ……あの娘と結婚するだなんて、本当に言っているの?」
「もちろんだよ母さん。すてきな子だろう?」
「あなたの選ぶ相手なら文句を言わないと、たしかにそうは言ったけれど……――」
まさかあんな娘を連れてくるとは思わなかったのだ。テオには懇意にしている立派な肩書きの令嬢たちがたくさんいたから、そのうちの誰かだろうと思っていたのに。
「ねえ、あなたはどう思いまして? さっきの娘」
「そうだなあ……」
夫は腕を組んだまま難しい顔をしている。そんな風に言葉を濁さずに、あんな娘との結婚は認めないとはっきり言えばいいものを。
「ちょっと、年が離れすぎてるんじゃないか? たしかに美人ではあったが……――」
「何言ってるんだよ父さん。父さんと母さんだって、母さんのほうがいくつか年上でしょう? 愛に年齢差なんて関係ないじゃないか」
「いや……それにほら、家格の釣り合いというものがあって……」
「説明しただろう? たしかに彼女は今でこそ身寄りがないが、出自はたしかだ。ご両親に不幸があっただけで由緒正しい生まれであるし、高貴な血が流れているんだから」
「だが……下働きの娘というのは外聞が……」
「下働きなんかじゃないったら。彼女は身寄りをなくした後、商家に引き取られたんだ。とても優秀で、今では店の切り盛りを任されているんだから」
「ううむ……」
夫は相変わらず煮え切らない。ただでさえ優柔不断だというのに、テオのことになるといつもこうだ。いくら息子を溺愛しているとはいえ、もう少し毅然とした態度をとって欲しい。
見た目が良くてお金もまあまあ持っていたから結婚したけれど、夫にはいつもイライラさせられる。
夫との結婚生活で良かったことと言えば、この可愛い息子を産めたことくらいだ。
「――とにかく、母さんは反対よ! あんな娘との結婚は認めないわ」
私がそう言うと、テオは勢いよく椅子から立ち上がって宣言した。
「彼女との結婚を認めてくれないのなら、僕は家を出たって構わない! 彼女と二人でなら、家名も財産もなくたってやっていけるさ!」
ああなんてこと……テオはすっかりあの女にたぶらかされてしまっている。
愛する息子のテオが連れてきた婚約者を、私は一目見た時から気に入らなかった。
まず目は大きすぎるし、身体は細すぎる。あの娘が私の隣に立つと、まるで私が太っているように見えるのだ。
それに年齢も気に食わない。テオより六つも年上なんて。いくら見た目は若くても、わざわざ年上の女を選ばなくたっていいものを。
そして何より、出自が悪すぎる。聞けば娘は天涯孤独で、どこぞで下働きをしているらしい。みっともないったらない。
「テオ……あの娘と結婚するだなんて、本当に言っているの?」
「もちろんだよ母さん。すてきな子だろう?」
「あなたの選ぶ相手なら文句を言わないと、たしかにそうは言ったけれど……――」
まさかあんな娘を連れてくるとは思わなかったのだ。テオには懇意にしている立派な肩書きの令嬢たちがたくさんいたから、そのうちの誰かだろうと思っていたのに。
「ねえ、あなたはどう思いまして? さっきの娘」
「そうだなあ……」
夫は腕を組んだまま難しい顔をしている。そんな風に言葉を濁さずに、あんな娘との結婚は認めないとはっきり言えばいいものを。
「ちょっと、年が離れすぎてるんじゃないか? たしかに美人ではあったが……――」
「何言ってるんだよ父さん。父さんと母さんだって、母さんのほうがいくつか年上でしょう? 愛に年齢差なんて関係ないじゃないか」
「いや……それにほら、家格の釣り合いというものがあって……」
「説明しただろう? たしかに彼女は今でこそ身寄りがないが、出自はたしかだ。ご両親に不幸があっただけで由緒正しい生まれであるし、高貴な血が流れているんだから」
「だが……下働きの娘というのは外聞が……」
「下働きなんかじゃないったら。彼女は身寄りをなくした後、商家に引き取られたんだ。とても優秀で、今では店の切り盛りを任されているんだから」
「ううむ……」
夫は相変わらず煮え切らない。ただでさえ優柔不断だというのに、テオのことになるといつもこうだ。いくら息子を溺愛しているとはいえ、もう少し毅然とした態度をとって欲しい。
見た目が良くてお金もまあまあ持っていたから結婚したけれど、夫にはいつもイライラさせられる。
夫との結婚生活で良かったことと言えば、この可愛い息子を産めたことくらいだ。
「――とにかく、母さんは反対よ! あんな娘との結婚は認めないわ」
私がそう言うと、テオは勢いよく椅子から立ち上がって宣言した。
「彼女との結婚を認めてくれないのなら、僕は家を出たって構わない! 彼女と二人でなら、家名も財産もなくたってやっていけるさ!」
ああなんてこと……テオはすっかりあの女にたぶらかされてしまっている。
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